多数の「金属屋根の暴露試験解体調査」に触れて、初めて気付いた驚きの共通点!(ガルバリウム鋼板でも)

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こんにちは~。

屋根・雨漏りの調査員、神谷昭範です。

ある住宅関係の研究会において、「金属屋根軒先の劣化」について発表があり、大変興味深く拝聴しました。

その中で、暴露試験体の解体調査についても発表がありました。

 金属屋根暴露試験解体調査とは?

暴露試験体はつくばにおいて、38年間暴露されたものです。

詳しい内容は2015年9月に行われた日本建築学会大会学術講演梗概集「木造住宅の耐久性向上に関わる建築外皮の構造・仕様とその評価に関する研究 長期間経年した勾配屋根暴露試験体の解体調査報告」をご覧ください。

この解体調査では7つの標準的な金属屋根の試験体がありました。

金属屋根材の材料(塗装溶融亜鉛メッキ鋼板、アルミニウム合金板)、工法(心木無瓦棒、心木有瓦棒、折板屋根)、屋根方角(北向き、南向き)、下葺き材(3種類)、下地材(パーティクルボード、合板12㎜)などの違いがありました。

このように多岐にわたる比較実験であり、また、かなり昔に行われた実験であるため、考察がなかなか進まない状態のようです。

驚きの共通点とは?

そんな中、私がこの解体調査に立ち会うことで初めて気付いた驚きの共通点をご紹介いたします。

それは、軒先野地板が腐朽していることです。

(上の写真は解体前、下は解体後の下地材の状態で、赤丸部分が腐朽部です)

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この原因としては、雨水が浸入して軒先野地板が高含水となり、腐朽菌による劣化が進行したためです。

ある特定の工法が腐朽しているのではなく、代表的な3つの工法(心木無瓦棒、心木有瓦棒、折板)のすべてにおいて腐朽しているため、金属屋根の共通な大きな問題点と言えます。

さらに、アルミ製金属屋根では屋根材はほとんど劣化していないのに、その下に隠れている野地板がボロボロになっています。

現在、多く採用されているガルバリウム鋼板屋根でも同様の劣化が予想されます。

気付かない野地板の劣化により、金属屋根材の耐風性能が低下し、飛散するリスクが高まります。

軒先野地板の腐朽メカニズム

金属屋根は瓦・スレートなどの他の屋根材に比べて、屋根材同士の気密性が高い構造となっています。

そのため、強風雨でも雨水浸入しにくいと言われています。

しかし、実際の屋根では軒先部、けらば部、棟部などの役物部があり、その部分からの雨水浸入は比較的容易に発生します。

一度、浸入した雨水は下葺き材上を軒先部へ流れます。

しかし、気密性が高い構造のため、かえって軒先部から排出されません。

軒先部で滞留した雨水が釘・ビスなどに伝わって、野地板へ浸水します。(赤丸の部分が滞留水の痕)

雨漏りするほどの浸水量ではないのですが、長時間に渡って野地板を高含水率にすることで、野地板の腐朽が進行します。

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金属屋根の採用をご検討の方へ

現在、新築住宅で多く採用されている金属(ガルバリウム)屋根(立て平葺、横葺)においても、同様の構造となっています。

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そのため、経年で軒先野地板が腐朽するリスクを抱えています。

金属屋根の採用を考えている方は、このリスクをご承知ください。

つまり、20~30年で、大規模な屋根の葺き替え工事費用が必要となります。

長寿命な金属屋根構法

20~30年での大規模な屋根メンテナンスを回避したい方には、野地面通気構法があります。

金属屋根と下葺き材の間に縦桟木などを入れて、空間を設ける構法です。

この場合、軒先での雨水の滞留防止、通気・換気することができます。

詳しくは、日経ホームビルダーの連載記事として掲載されたホールレス通気構法  http://www.kamisei.co.jp/ykawara/kaimg/Kawaraban_9.pdf  その4

をご参照ください。

今回、7つの試験体すべてで軒先野地板劣化を確認しました。

台風などの強風後、テレビなどで良く映し出される電線に引っ掛かったり、くしゃくしゃに丸まった紙のように見えているものが金属(ガルバリウム?)屋根です。

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軒先野地板劣化は耐風性能を著しく低下させます。

大事故を防ぐためにも、しっかりと定期的な再塗装と葺き替え等の維持管理をすることが大切です。

 

 

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