「三州の雀は羽が黒い」といわれた時代がありました。そう遠い昔の話ではありません。
三州の至る所にある瓦焼き窯からは黒い煙がもくもくと吐き出されていたのです。
しかし、公害に対する意識が高まり公害規制も厳しくなってきました。燃料をガスに転換すれば煙は出ませんが、それではコストがかかりすぎて、事業が成り立たなくなります。何とか煙を出さずに重油で瓦が焼けないか。その思いは切実でした。そんな中、3年間研究を続け、昭和48年(1973)、ついに低コスト無公害の塩焼き瓦の窯を開発した人物がいます。戦前に内燃機の仕事をしていて、戦時中は海軍の整備兵としてエンジンに関わってきた岩間玉数さんです。
この窯の基本的な考えは、ロータリーバーナーで空気と重油を混合した霧をふりまき、それをガスの炎で包んで燃やすものです。燃焼の方法はつかんだものの、次には従来の石炭窯からこの混焼の窯へどうやって費用をかけずに改良するかという課題も待っていました。
こうした研究が完成したとき、周囲からは特許を申請するようにすすめられましたが、岩間さんは「業界全体の発展のために」といって、技術を解放しました。三州だけでなく、頼まれれば、快く他の瓦産地にも出かけていって指導しました。
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