天井断熱仕様の住宅での木部腐朽
こんにちは~。
屋根・雨漏りの調査員、神谷昭範です。
今日は、住宅の天井断熱仕様での不具合事例をご紹介いたします。
天井断熱におけるリスクついても簡単に検討しました。
上の写真は天井断熱仕様において、北面の野地ボードが劣化した事例です。
屋根材は化粧スレートでした。
寄棟の北面の野地ボードだけが劣化していて、人が載るとボードが踏みぬけてしまいました。
これでは、屋根材を留め付けている釘の保持力も全く期待できません。
次の事例は北面の野地合板の室内側(内表面)が結露で濡れているものです。
棟側から軒先へ結露水が垂れている状態を観察できます。
白っぽいカビも裏面に発生していました。
屋根材は化粧スレートで、この物件も寄棟の北面だけ結露していました。
これら天井断熱仕様において、小屋裏換気回数と野地合板の含水率を計算した内容をご紹介いたします。
小屋裏換気について、上のモデルをもとに
a:南面の野地合板外表面 b:南面の野地合板内表面
c:北面の野地合板外表面 d:北面の野地合板内表面
の計4か所について、含水率を検討しました。
小屋裏換気回数と南面野地合板の含水率のグラフです。
縦軸に野地合板含水率、横軸に小屋裏換気回数となっています。
濃い赤:天井部の防湿シートの透湿抵抗が低い(5㎡hmmHg/g) 施工ミス・欠損多い場合
ピンク:天井部の防湿シートの透湿抵抗が高い(25㎡hmmHg/g)
濃い青:天井部の防湿シートの透湿抵抗が低い(5㎡hmmHg/g) 施工ミス・欠損多い場合
水色:天井部の防湿シートの透湿抵抗が高い(25㎡hmmHg/g)
グラフを見ると換気がない場合、合板外表面は含水率30%、合板内表面は含水率25%とあまり高くありません。
0.1回/h程度の換気があれば、28%以下となり劣化リスクは低い状態となっています。
小屋裏換気回数と北面野地合板の含水率のグラフです。
換気がない場合は、北面合板外表面は55%、合板内表面は含水率35%とともに高い状態です。
内表面は0.3回/h程度以上あれば、劣化リスクは低くなります。
しかし、外表面は0.5回/h以上にしても低下せず、含水率30%弱と、劣化リスクが残ったままです。
防湿シートの透湿抵抗値の大小にあまり関係ないという結果にもなっています。
このシミュレーションの条件として、宇都宮市の標準気象データをあてはめています。
また、雨が降るとアスファルトルーフィングから2〜3g/㎡hの雨水が野地合板に入ると仮定しています。これは、雨漏りまでにはならない、わずかな雨水浸入があるという条件です。
小屋裏換気回転数は、金融支援機構の基準通りの小屋裏換気を設置すれば、0.5回/h程度となります。
★天井断熱仕様の野地合板について★
①南面では合板外・内に関係なく、小屋裏換気がわずかでも行われれば含水率は28%以下となり、劣化リスクは低い。
②北面の合板内表面は換気回数が0.3回/h以上あればよく、基準通りの小屋裏換気を設置すれば、劣化リスクは低い。
③北面の合板外表面は基準通りの小屋裏換気を設置しても、含水率が30%弱と高めで、劣化リスクがある。(防湿シートの施工状況にはあまり左右されない。)
今回の検討で、天井断熱における野地合板の劣化リスクは北面野地合板外表面にあることがわかりました。
また、今までは、小屋裏結露=防湿シートの欠損でかたずけられていましたが、そうではなく、雨水浸入が大きく影響していることもわかりました。
屋根材を留めるために、ルーフィングに釘穴を開ける工法である以上、長期に渡って、雨水浸入をゼロにすることは困難です。
北面野地合板外表面の劣化リスクを低減するには、雨水浸入による
湿気を排出することが重要です。
野地合板上の湿気を排出するには、通気+透湿ルーフィングが大変有効です。
ご自宅の屋根を検討する場合には、リスク回避のためにも、通気+透湿ルーフィングは重要な選択肢の1つですね。 (#⌒∇⌒#)ゞ
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