目次
動画でも解説しています⏬
片流れ屋根のメリット・デメリット。心配な雨漏り対策もご紹介します!
最近、片流れ屋根(かたながれやね)がホントに増えていますね。
片流れ屋根はこんな感じ!
でも、屋根を中心に考えると、屋根の形状としては、現状ではあまりおすすめできませんね・・・
でも、工務店がデザインするからには、もちろん、メリットもあります。
そのメリットと屋根としてのデメリットを理解した上で、選択してみてはいかがでしょうか?
片流れ屋根における問題はなにか?その対策は?
じつは、ちょっと、気にしてもらうだけで大幅にリスクは軽減できるんです!
屋根を決めるとき、工務店さんに伝えてみてくださいね・・・
新築を建てる上で、お施主さまの要望はかなり聞いてもらえますから・・・
自分の家なので、積極的に関わりましょう~!
知れば知るほど、愛着もわいてきます!
人気の片流れ屋根!そのメリットはこれ!!
片流れ屋根が急増しているその理由、メリットはいくつかあります。
建築コストを下げることができる!
●屋根の傾斜をゆるくして、屋根裏(小屋裏)空間を小さくすることで、建築コストを下げることができる。
太陽光発電をたくさん取り付けることができる!
●住宅でも大容量の太陽光発電が設置できる。
⇒少しでもたくさん太陽光発電量を得るには、南面片流れ屋根とすることが合理的です。
北面の屋根は作らず、太陽光にすべてを捧げるという作戦です。
なかなかデザインが格好いい!
●軒の出をゼロにすることで、箱型デザインとなる!
●箱型の住宅は、片流れ屋根にすることで、シンプル感が増す!そこが人気!
●金属屋根・立平葺きとの相性がいい!
若い方を中心に、デザイン面で大人気の片流れ屋根ですが、実は、大きな落とし穴もあります。
片流れ屋根のデメリットはこれ!
ものごと、良いことばかりではありません!
デメリットもいくつかあります!
ぜひ、下の項目をチェックしてみてください!
片流れ屋根は雨漏りしやすい?
片流れ屋根の最大のデメリットとは、雨漏り事例がとても多いということです。
瑕疵保険会社の調査では、新築雨漏り事故の75%以上が片流れ屋根だったと公表しています。
また、金属屋根材の棟部で事故が多いそうです。
雨漏りしている新築の4棟中、3棟は片流れ屋根ということです。
ショックですが、現実です!
片流れ屋根の雨漏り場所としては、
50%が棟部(頂上部)、
27%がけらば部(サイド)、
23%が軒先となっています。
雨漏り事故全体の
40%近くが片流れ屋根・棟部(頂上部)、
20%が片流れ屋根・けらば部(サイド)
ということになります。
まずは、もっとも雨漏りが多い金属屋根材の棟部(頂上部)をイメージしてみてください。
片流れ屋根の棟部(頂上部)・けらば部(サイド)に雨漏りが集中しているのはなぜでしょうか?
棟部(頂上部)からの雨漏りは、こんな感じで発生します!
片流れ屋根の棟断面図は以下の通りです。
片流れ屋根のルーフィング(下葺き材)の棟端部は図のように野地板上端部でカットされています。
(この作業は、屋根工事業者の責任範囲です。)
野地板より下面の作業は、他業者(大工・壁業者など)の責任範囲です。
片流れ屋根の棟の端が工事業者の境界線となってます。
業者間の連絡や協力がうまくいっていないと、
そのしわ寄せを受ける部分になるわけです。
図は雨水の浸入ルートを示しています。
野地板と破風板の境から雨水が野地板の裏面を伝わり、
伝い水となって、建物内側へ浸入する構造となっています。
屋根材が施工されても、強風雨時では、この浸入ルートから入り込みやすいので、しっかりとした防水対策が必要です。
また、少しリアルな図となりますが、屋根(軒天)と壁(外壁)の取り合い部も棟部のウィークポイントです。
棟部では、2つの赤〇部分から雨漏りする可能性があり、もっとも危険なんです!
けらば部(サイド)からの雨漏りは、こんな感じで発生します!
同じ大きさの建物で、片流れ屋根と切妻屋根のけらば(サイド)長さを比較すると片流れ屋根は2倍の長さになります。
長さが2倍となれば、軒先部に流れる雨水量は2倍となります。
雨水量が2倍となれば、単純に雨漏りリスクも2倍なんです。
また、少し話がずれますが、下写真の化粧スレート屋根では、けらば部(サイド)からの漏水事例が多く報告されています。(片流れ屋根に限りません)
ここで、化粧スレート屋根・けらば部(サイド)からの漏水メカニズムを簡単にご紹介します!
①けらば水切り部分に数年で土ほこり・樹種等が堆積します。
②風雨時、水切り内に浸入した雨水は土ほこりで排水が妨げられ、ルーフィング上にオーバーフローします。(矢印側へ)
③オーバーフローした雨水はスレートの留め付け釘を伝わって、野地合板に浸入します。
④野地合板へ頻繁に雨水浸入することで、野地合板の腐朽劣化が発生します。
この現象は、棟から軒まで長さが短い、流れ長さの短い切妻屋根でも数多く報告されています。
片流れ屋根・けらば部(サイド)では、単純に2倍の雨水量が押し寄せるので、さらに大量の水がオーバーフローすると推測できます。
雨漏りや野地合板の腐朽劣化リスクが、2倍に高まることになります。
けらば部(サイド)からの雨漏りに関しては、仮に雨水量が2倍となっても、経年に関係なく、排水できる充分な雨水対策が必要となります。
片流れ屋根・日射取得不足による結露(屋根面の向きが影響)=日当たり不足による結露を説明します!
いきなり、日射取得と専門用語ですいません。
簡単にいうと「屋根面の日当たりについて」。
片流れ屋根の住宅は、都市部の狭小地において北側斜線による高さ制限から、北面片流れ屋根となるように設計されることが多くあります。
この北面片流れ屋根には、「屋根面の日当たり」不足から不具合が発生することも指摘されています。
「屋根面の日当たり」って聞いたことないですよね・・・
でも、結構重要なんです。
上写真は北面片流れ屋根の住宅で、屋根勾配(こうばい)は
6寸勾配(屋根の傾きが約30°)となっているものを撮影したものです。
ちょうど、冬至(とうじ)12月23日に撮影しました。(もっとも日照時間が短い日)
冬至の南中の太陽高度は31°で屋根の傾き(30°)とほとんど同じため、6寸勾配の屋根面は1日中、日陰となっています・・・(日陰だと問題あるの?)
1日中・日陰となると北面の野地合板(のじごうはん)は日射による温度上昇が起きません。
一方、壁や小屋裏(こやうら)などにある木の部材(柱・合板など)は日射により暖められて温度上昇します。
温度が高くなると木から湿気が放出されます。
放出された湿気は温度の低い北面野地合板へ移動・吸着されて、野地合板は高湿化します。
この北面片流れ屋根への湿気の移動は、冬の太陽高度の低い期間中、何度も繰り返されます。
どんどん野地合板は湿気を蓄積することになり、野地合板の含水率が上昇して、野地合板の腐朽劣化(ふきゅうれっか:木がくさること)につながります。
北面片流れ屋根に関しては、小屋裏の湿気を排出する対策は不可欠となります。
片流れ屋根・換気不足による結露を説明します!
屋根の劣化を防ぐ方法として、小屋裏(屋根裏)を換気する方法があります。(小屋裏換気)
しかし、そもそも片流れ屋根は、小屋裏換気の効果を減退させるとも言えます。
簡単に小屋裏換気を説明いたします。
まず、 小屋裏換気は2つの原動力によって機能します。
A:風力により換気する場合(風力換気)
B:温度差により換気する場合(温度差換気)
A:風力換気の流れはこれ!
切妻屋根(きりづま)における風力換気は下図のように起きます。
風向きが左からの場合、風上側にあたる建物左側の軒天換気入口・外壁通気層入口・棟換気入口から小屋裏へ外気が侵入・吸気します。
逆に、風下側にあたる右側から、軒天換気出口・外壁通気層出口・棟換気出口から排気されます。
切妻屋根の場合、入口(左)と出口(右)があり、風力による小屋裏換気がスムーズに促進されます。
一方、片流れ屋根の風力換気は??
片流れ屋根は単純にいうと切妻屋根の右側がないことになりますね・・・
風向きが左からの場合、切妻屋根と同様、風上側にあたる左側が入口となりますが、肝心な出口が右側にありません。
そうなると、左側の入口からも外気が侵入しようとしても入ることができないのです。
結果、片流れ屋根では、風力による小屋裏換気は機能しないといえます。
B:温度差換気の流れはこれ!
温度差換気は建物の内外温度差により、換気を促進させるものです。
一般に、温度差が大きいほど、また、建物の高低差の大きいほど、換気することになります。
片流れ屋根は緩勾配屋根(ゆるい傾きの屋根)も多くなっています。
この緩勾配屋根の場合、建物の高さが低く、建物および小屋裏空間の高低差がなく、温度差が発生しないため、温度差による小屋裏換気は機能しないといえます。
片流れ屋根の小屋裏換気不足は小屋裏を高湿化させ、野地合板の腐朽劣化を助長させることになります。
小屋裏換気不足による屋根の腐朽劣化事例はこちらをご覧ください!
ここまで片流れ屋根のデメリットについて説明しました。(ちょっと、難しい話なので、流してもいいですよ~)
デメリットの3つの解決方法は、ここにあります!
ここから、片流れ屋根のメリットを生かしつつ、デメリット・問題点を解決する方法についてご紹介します!
片流れ屋根の雨漏り対策は、これが正解!
比較的簡単にできる解決方法をご紹介します!(解決方法はいろいろありますので、一例です。)
片流れ屋根・棟部は、こうするのが正解!
片流れ屋根・棟端部の伝い水の浸入を防ぐ方法としては、透湿ルーフィングを巻くことで簡単に対処できます。
屋根工事業者に通常の下葺き材の上に、透湿ルーフィングを巻いておくようにお願いするだけで改善されます。
同様に、屋根(軒天)と壁(外壁)の取り合い部も透湿ルーフィングを増張りすることで室内への浸入口を簡単にふさげます。(2つの赤丸部分の対策は透湿ルーフィングの増張り)
軒天と外壁の取り合い部はシーリングをしっかりするから大丈夫と言われる方もいますが、それは、シーリングが信用できる10年間ぐらいの話。
その後は、お客さまの費用負担によるメンテナンスが必要となりますので、シーリング頼みはおススメしません。
実際の施工写真です。
屋根工事のときに棟部を透湿ルーフィングで覆って、破風に垂らしておきます。
(余分となれば後工程でカットしてもらいます。)
透湿ルーフィングは通常の下葺き材よりも柔らかく、かつ、強度があるので破れることなく、端部を覆うことができます。
さらに、湿気を排出する機能もあり、棟部の防水には最適です!
また、壁用の透湿防水シートに比べて、止水性と強度が高いので安心です!
「透湿ルーフィングを棟に巻いてください。」と呪文のように、唱えるだけで大幅に雨漏りリスクが軽減します!
透湿ルーフィングについては下記をご参照ください。
片流れ屋根・けらば部は、こうするのが正解!
瓦屋根の場合、排水用の水切りが大きいので比較的安心です。
一方、化粧スレートやアスファルトシングル、金属屋根材のけらば部は、経年での問題もあり、対策が必要です。
その一例としては、比較的簡単に改善方法があります。
けらば水切りを改良した「シール材付きけらば水切り」が効果的です。
シール材(クッション性のある止水材)が屋根材と密着して、土ほこりや雨水のオーバーフローを防ぎます。
大量の雨量でも、このちょっとした工夫で大丈夫。
「けらばはシール材付きけらば水切りを使ってください」と呪文を唱えるだけで、大幅に雨漏りリスクが軽減します!
こういった対策をお願いすることが大切な家を守ることになります。
これら雨漏り対策をお願いしても、コストアップは、大きくありません。
片流れ屋根・日射取得不足による結露対策は、これが正解!
北面片流れ屋根の野地板結露・劣化防止には、野地面通気(屋根材と野地板の間の通気)+透湿ルーフィングが有効です。
これについては、工夫というよりは仕様変更の範囲となってしまいます。
残念ながら簡単な呪文はありません。
屋根の仕様変更となりますが、野地面通気+透湿ルーフィングをお勧めいたします。
ちなみに、南面片流れ屋根に太陽光パネルを設置する場合も、パネル下の屋根部分は一年中、日陰となります。
北面片流れ屋根と同じ劣化リスクがありますので、野地面通気+透湿ルーフィングがお勧めです。
しかし、太陽光メーカーの指定で、透湿ルーフィングを使用できないことも多いので、その場合は片流れ屋根よりは、切妻屋根(北面が短い切妻)にされることをお勧めいたします。
この写真は南面は大量の太陽光パネルが設置してありますが、片流れ屋根ではなく、切妻屋根となっています。
南面屋根は大きく、北面屋根は小さい変則の切妻屋根ですが、片流れ屋根よりは大幅に劣化リスクの少ないデザインと言えます。
片流れ屋根・換気不足による結露対策は、これが正解!
換気不足については、「小屋裏換気を多くしてください」と要望してください。
小屋裏換気量を多くする工夫はいろいろとあります。
●換気棟を多く設置する。
●軒の出を持たせて、軒天換気を全周に設置する。
●妻壁での妻換気との併用する。
など、いろいろあります。
その中で片流れ屋根・棟換気の一例を示します。
軒の出がある場合
軒の出がある場合、軒天換気を設置することでもいいのですが、雨漏りのリスクが低いのは、棟換気部材を設置することです。
この場合は、外壁通気層も棟換気部材から排気することになります。
軒の出がない場合
軒の出がない場合、棟板金と外装材の間から換気をとる事例です。
棟の一点で、防水(隙間をなくしたい)と通気(隙間をあけたい)という相反する形を実現しないといけないです。
これに屋根断熱の通気層の排気まで加わるとホントに大丈夫?って感じです!おススメはできないですよ!
小屋裏換気の増量は大幅なコストアップとはなりませんので、呪文と思ってください!
片流れ屋根の雨漏りが急増中?正しい対策をしましょう!
若い方を中心に、デザイン面で大人気の片流れ屋根!
しかし、新築の片流れ屋根は雨漏り事故が急増しています。
その雨漏り対策などをいくつかご紹介いたしました。
屋根業者で改善できること、設計変更が必要なものなどいろいろあります。
少しの工夫や予算で、雨漏りリスクや将来の劣化リスクを軽減することができます。
お施主さまが呪文のように唱えるだけ対策できるものもありますので、是非、ご参考にしていただければと思います。
長く愛着を感じながら住まう大切な我が家です。
雨漏りが発生すると愛着が薄まっていく方が多いので、建てる前に是非、チェックして、その対策をしてくださいね~!!
最後に、(片流れ屋根+軒の出がない)住宅はさらに雨漏りリスクが上昇します!
屋根屋から言うと雨漏りを覚悟して住む家とも言えるでしょう!
軒ゼロ(軒の出がない)のリスクは、こちらに詳しく記載していますので、ご覧ください!
【新築を建てる前に】屋根のデザイン一つで125万円も損するかも。知っておきたい屋根デザインの知識(軒の出がない~軒ゼロ住宅)
専門用語もあり、わかりにくいところもあったかと思います。
できる限り、やさしくご説明いたしますので、担当:神谷あきのりまで、お気軽にお問い合わせください!(お電話でも大丈夫ですよ!)
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