目次
屋根換気の必要性をわかりやすくまとめました!
みなさま。こんにちは。
一般の方には、全く知られていないことですが、屋根の性能を決める3つ部材があります。
えー!?
屋根は屋根材で決まる!と思われている方がほとんどではないでしょうか?
もちろん、①屋根材は重要なのですが、その他に、②ルーフィングと③換気・通気部材も同じくらい重要なんです!
先日、お施主さまから「屋根換気は必要ないのでは?外気の湿気が入ってくるので、かえってマイナスだと思うけど。」とご質問をいただいたことがありました。
湿気については目に見えず理解しにくいものなので、誤解をされている方も多いと思います。
屋根換気・通気はとても必要なものなので、なぜ?必要なのかを一般の方でもなんとなくわかってもらえるようにわかりやすくご紹介します!
(換気と聞くと、ほとんどの方は室内の24時間換気を想像されていると思います。しかし、屋根換気は室内の24時間換気とは、全く異なるものですので、頭を切り替えて読んでくださいね。)
屋根換気がないとどうなるの?
屋根換気・通気は屋根の木材の腐朽劣化を防ぎます!
と言われても、ピーンと来ない方がほとんどですね。
そんな方へ目が覚めるような不具合事例をお見せします!
屋根の換気(小屋裏換気)がなく、野地合板の室内側に著しい結露水が発生した現場。
屋根の通気(屋根通気層)がなく、結露水が室内へ。解体してみると野地合板・垂木が腐朽していた現場。
この2つの現場は、屋根の野地合板が腐朽劣化し、屋根材が風で飛散しやすい状態・建物の耐震性能低下につながる大事故と言えます。
屋根換気・通気がないと短期間(築数年)でこのような悲惨な住宅になってしまいます!
屋根換気・通気に少しは興味を持っていただけましたか?
それでは、どんな種類があるのか?簡単にご紹介します!
屋根換気・通気は建物の断熱とセットで考える必要があり、わかりにくい所が出てくると思いますが、飛ばしていただいていいので、なんとなくイメージしてください。
天井断熱 or 屋根断熱
屋根の断熱材がどこに入っているのか?で、換気・通気のルールが大きく異なります。
順番に説明します!
無断熱
屋根に断熱材が入っていない築年数が経過した住宅は、換気・通気がなくても大丈夫です。
家全体が隙間が多くスカスカとなっているので、結露の心配はしなくてもいいです。
天井断熱
略図を見てください。(フラット35解説資料より)
図の左側は、屋根の断熱材が水平な天井の上に入っています。
このタイプを天井断熱といい、この天井断熱と傾斜(勾配)屋根面との間を小屋裏と呼びます。
天井断熱の場合、小屋裏換気が必須だと思ってください!
屋根断熱
図の右側は、屋根の断熱材が傾斜(勾配)屋根面の下に入っています。
このタイプを屋根断熱といい、この屋根断熱と傾斜(勾配)屋根面との間に屋根通気層が必要です!
屋根断熱の場合、屋根通気が必須だと思ってください!
なぜ?小屋裏換気・屋根通気が必須なの?
ズバリ!屋根(小屋裏・屋根通気層)に入った水分を抜くためです!
その水分は主に3つの経路で屋根の中に入ってきます。
①屋根からの雨水浸入
②室内からの湿気(生活して発生するもの)
③建設当初の木材が含水している水分
①~③はどれも完全に浸入を防ぐことはできません。
これらの浸入した水分を乾燥させるためには、小屋裏換気・屋根通気が必須となってくるのです。
屋根を乾燥させることで、木材の含水率は30%以下となり、木材の腐朽を防ぐことができ、長期にわたって、安心な屋根が実現できます!
木材の腐朽について、詳しくはこちらをご覧ください。
はじめに、小屋裏換気について。(天井断熱の屋根)
小屋裏換気の種類
住宅金融支援機構の木造住宅工事仕様書(家造りの教科書みたいなもの)には小屋裏換気について、下記説明図が記載されています。
小屋裏換気孔の設置例として、イ~ホまでの6つの方式について、それぞれ換気するための孔の開口面積を定めています。
開口面積は建物の天井面積との対比で規定しています。(「大きな屋根には、換気するための大きな孔が必要」とルールを決めています。)
下のグラフは住宅金融支援機構のフラット35解説に掲載されていたデータです。
平成24年度を見ると、天井断熱が約7割、屋根断熱が約3割(平成19年度の2倍)と屋根断熱が増加していることが目立ちます。
また、天井断熱の換気孔の設置方式としては、ロ(43%)、ホ(16%)となっています。
写真を見て、ご自宅のイメージを浮かべてください。
イ:妻換気(壁吸排気)
切妻屋根・片流れ屋根の壁に設置され、ガラリとも言われていました。(開口面積1/300以上)
壁に大きな孔を開けて設置するので、壁内への雨水浸入のリスクがあり、減少傾向(約4%)と言えます!
ロ:軒天換気(軒裏吸排気)
切妻屋根・寄棟屋根・片流れ屋根などほとんどの住宅で設置されています。(開口面積1/250以上)
設置費が安価なため、もっとも多く採用されています。
屋外で吹く風の力を利用して、小屋裏の換気を図る方式です。
軒の出が短いと雨水が浸入しやすくなるので、防水性の高い換気部材を選ぶ必要があります!
しかし、小屋裏空間の中で、換気が滞る部分もあり、若干、減少傾向と言えます!
ホ:軒天吸気・換気棟排気(軒裏吸気・棟排気)
切妻屋根・寄棟屋根・片流れ屋根などほとんどの住宅で設置されています。(軒天吸気開口面積1/900以上、換気棟排気開口面積1/1600以上)
唯一、採用が増えている方式です。
屋根工事業者が設置するため、若干高価となります。(新築時¥25,000~/1カ所)
屋根に孔を開けるため、防水性の高い部材が必要です!
換気棟をご購入したい方はこちらからどうぞ!
風力による換気だけでなく、温度差による換気も期待できるため、効率のいい換気方式と言えるのでお勧めですよ!
小屋裏換気の注意点
結露・腐朽などからご自宅を守るため、以下のポイントに注意してください。
ⅰ)小屋裏換気孔は、独立した小屋裏ごとに2か所以上
具体例
①2階屋根、下屋がそれぞれ1つあった場合
(2階屋根で2か所以上)+(下屋で2か所以上)の設置が必要となります。
まだ、このルールを理解していない工務店さんもいるようです。
下屋で換気が設置されず、屋根が結露していた事例。
1カ所に軒天換気孔は設置されていたのですが、実際に換気は促進されず、野地合板に結露が発生していました。
赤丸の部分を踏んでみると野地合板がブカブカしていました。
下屋の換気孔を2カ所以上設置するための部材として、軒天換気以外に、野地面換気や雨押え換気があります。
野地面換気の事例はこちらをご覧ください。
②2階屋根の一部にロフトなどがあり小屋裏が区切られている場合
2階屋根のそれぞれの小屋裏空間に2か所以上が必要となります。
以前、2階屋根の真ん中が屋根断熱、左右が天井断熱だった物件があり、真ん中と右側には棟部に換気孔があったのですが、左側に換気孔がなく、結露事故が発生した現場を見たことがありました。
必ず、それぞれで換気が促進されるように配慮が必要です!
ⅱ)換気に有効な位置に設置
小屋裏全体が換気できるように換気孔の位置を分散して設置します。
施工性がいいからと言って、換気孔を集めてしまうと換気できない部分ができてしまいます。
ⅲ)小屋裏換気孔には、雨、雪、虫等の浸入を防ぐためにスクリーン等を取り付けます。
換気孔からの雨水浸入には、配慮が必要です!
ⅳ)小屋裏換気孔においては、その換気経路の中でもっとも狭い部分を開口面積とします。
間違った小屋裏換気措置が思わぬ屋根の腐朽劣化を引き起こします。
かと言って、プロではないでの詳しいことは全くわからないと思います。
工務店さんに「屋根換気をルール通りに設置してくださいね!」とお願いするだけでも、慎重な設計・施工につながるので、有効だと思いますよ~!
続いて、屋根通気について。(屋根断熱の場合)
屋根通気
住宅金融支援機構の木造住宅工事仕様書に屋根断熱での注意事項は以下の通り記載されています。
★断熱材の外側には通気層(厚さ30㎜程度)を設け、必要に応じ断熱材と通気層の間に防風層を設ける。
断熱材の外側に通気層を設けなければならない!ことはなんとなくわかりました。
★天井面ではなく屋根面に断熱材を施工する(=屋根断熱)場合には、小屋裏換気孔は要さないが、屋根内部に結露が生じる可能性があるので、通気の措置を講じておくことが望まれる。
しかし、こちらが読み取りにくいのですが、もう一つ必要だと言っているのです。
それは、(通気の措置を講じる)=(通気層には、吸気孔と排気孔を連通させる)ことが必要と言っています。
残念ながら、フラット35の解説図では、この屋根断熱のポイントもあまり反映されていません。
そこで、英国住宅建築協会による屋根換気・通気の規格の説明図がわかりやすいのでご紹介します。
屋根断熱部分には屋根通気層がはっきり描かれています。(通気層は50㎜となっている)
また、その屋根通気層は入口(軒天吸気)と出口(棟排気)に連通していることもわかりやすくなっています。
ちょっと、脱線しますが、フラットルーフ(陸屋根)も入っていて、通気層が50㎜必要となっていて、入口・出口の連通も記載されています。
このフラットルーフはルーフバルコニーやパラペットにも通じる考え方です。
ルーフバルコニーの笠木部分や床下で通気・換気を確保してくださいね!
さらにイメージをしてもらうために、屋根断熱の通気層に排気孔がない場合の劣化事例をご説明いたします。
屋根通気・排気孔の有無の違い事例
屋根断熱の切妻屋根の現場でした。
棟頂部において桁行き方向の中央にだけ通気層の排気孔が設置されていました。
棟部に通気層の排気孔が開口している写真です。
この部分では、野地合板の劣化は発生していません。
一方、棟頂部で排気孔となる開口がない部分の野地合板を確認したところ、腐朽劣化が見られました。
この建物では屋根断熱材の外側に通気層は設けてありました。
しかし、通気層の出口となる排気孔が一部分にしか設けていなかったために、発生した不具合事例です。
排気孔を棟頂部の端から端まで設けてあれば劣化を防ぐことができました。
仕様書の通り、屋根断熱の場合、小屋裏がないため棟頂部に小屋裏換気孔と呼ばれる孔はありません。
しかし、棟頂部には通気層の排気孔と呼ばれる孔が必要となります。
名前は変わりますが、野地板を開口しなければならないことは同じなのです。
屋根通気の注意点
屋根断熱での結露による腐朽劣化事例は数多く報告されています。
ちなみに、先程の野地合板が腐朽した物件の室内側は結露水痕が少し目立つ程度した。
この勾配天井の上で、あのような腐朽劣化が進行しているのです。
屋根断熱の場合、短期間で劣化することが多いので、必ず以下の5点を注意してください。
ⅰ)屋根全面に通気層を設ける
ⅱ)通気層の軒先側に入口(吸気孔)、通気層の棟側に出口(排気孔)を設け、外気へ排湿可能とする
ⅲ)断熱材の室内側には、防湿層を設け、室内側の湿気が屋根内部へ侵入しないようにする
ⅳ)屋根材側から野地合板に雨水浸入しないように特に注意を払う
ⅴ)ルーフィングを透湿性のあるものとして、野地合板の表面側からも乾燥させる
屋根断熱は小屋裏がないため、一度施工しますと点検することができません。
特にⅳ)の雨水浸入の点検は屋根材を剥がして野地合板を確認するしかないため、大がかりとなります。
そこで、ⅴ)入っても乾くという透湿ルーフィングが安全側の仕様となります。
まとめ:屋根換気・通気は屋根の劣化を防ぎます!
昔の隙間の多い住宅と違い、高断熱・高気密の住宅となっている現在では、屋根換気・通気は必須と言えます!
屋根に浸入する湿気を完全に防ぐことはできませんので、入った湿気を排湿することが重要です。
屋根換気棟の設置費用は安価(¥25,000~/1カ所)ですので、設置することをお勧めします!
かなりむずかしい内容となってしまいましたが、お伝えしたいのでは以下のことです。
自宅の屋根を結露から守るもっとも有効な手段は工務店さんへ要望することです。
天井断熱の場合・・・「屋根換気のルールをしっかり守ってほしい!」と伝える!
屋根断熱の場合・・・「屋根通気の入口・出口をしっかり確保してほしい!」と伝える!
専門用語もあり、わかりにくい所もあったかと思います。
お気軽にお問い合わせください。(お電話でも大丈夫ですよ!)
神清からのお願い
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