瓦屋根の耐風診断を実施
築30年を経過した日本瓦屋根の耐風診断のご依頼がありました。
「最近の巨大台風でも被害が発生しないようにしたい」、「地震での被害も考えて、葺き替えを検討している」とのご要望でした。
早速、瓦屋根の耐風診断を実施しました。
以下、簡単にご紹介します。
瓦屋根の耐風診断内容
切妻(きりつま)屋根の耐風診断内容は以下のポイントです。
- 平部(ひらぶ/屋根の平面部分)
- 軒先部(のきさきぶ/屋根の先端部分)
- けらば部(けらばぶ/屋根の端部)
- 棟部(むねぶ/屋根の頂上部分)
以下で、簡単に解説します。
平部
青色の日本瓦屋根は築30年以上経過しているものがほとんどです。
平部は瓦をめくって、施工状態を確認します。
瓦の下に黄色の葺き土が入っていて、土葺き(どぶき)工法となっていました。
土葺き工法は全ての瓦をくぎ留めしていないので、瓦屋根を施工している人なら、簡単にめくることができます。逆に、耐風性能は乏しいです。
(ただし、瓦専門ではない方はもどせなくなり、雨漏りの原因となりますので、瓦屋根専門家に診断してもらいましょう。)
日本瓦は防災瓦ではなく、昔の瓦でした。
土葺き工法の場合、瓦桟木はなく、防水シートも杉皮の場合が多いです。
観察ポイント
・土葺き工法で、くぎ留めしていない
・防災瓦ではない
・防水シート・瓦桟木もない
軒先部
軒先部は補強の留め付けを確認します。
2枚に1枚、軒瓦の表面を銅線緊結され、補強が行われていました。鉄線で連結してありますが、強度不足です。
土葺き工法のため、軒瓦の尻部はくぎ留めされていなく、強度不足です。
観察ポイント
・土葺き工法(軒瓦の尻部のくぎ留めなし)
・2枚に1枚、軒瓦は銅線緊結してある
けらば部
けらば部は補強の留め付けを確認します。
すべてのけらば瓦は表面で銅線緊結され、補強が行われていました。鉄線で連結してありました。
土葺き工法のため、けらば瓦の尻部はくぎ留めされていなく、強度不足です。
観察ポイント
・土葺き工法(けらば瓦の尻部のくぎ留めなし)
・すべての瓦は銅線緊結してある
棟部
棟部は棟の仕様と留め付け具を確認します。
棟部はのし積みとなっていて、旧工法(大回し工法)仕様となっていました。
旧工法の葺き土の固着力だけで棟部の形状を保持しているだけなので、耐風性能・耐震性能が乏しい仕様です。
観察ポイント
・のし積み・旧工法仕様
・留め付けは葺き土の固着力と銅線の一回しのみ
瓦屋根の耐風診断結果
耐風診断結果:巨大台風が近くを通過した場合、被害が発生する可能性が高い瓦屋根でした。
詳細は以下の通りです。
・平部は土葺き工法となっていて、この地域の基準風速の耐風性能を満たす施工ではありませんでした。
・軒先部は現在の標準仕様である軒瓦3点留めを満たす施工ではありませんでした。
・けらば部は現在の標準仕様である軒瓦3点留めを満たす施工ではありませんでした。
・棟部は現在の標準仕様であるガイドライン工法で施工されていませんでした。
瓦屋根の耐風改修提案
お客様のご要望に沿った瓦屋根の葺き替え・耐風改修提案を提示いたしました。
・既存の瓦をめくり、新しいF形防災瓦を使用したガイドライン仕様で葺き替え
お客様にご検討していただき、耐風改修工事を行うことになりました。
瓦屋根の耐風改修工事
F形防災瓦で葺き替えした耐風改修工事をご紹介します。
既存瓦屋根の解体
瓦屋根の解体は分別解体を行います。
①既存瓦をめくります。
立地がいい場合は、クレーン車を使用して効率的にめくります。
②葺き土をめくります。
葺き土をめくると防水シートの役目をしていたトントン葺き(薄い木の貼り合わせたシート)と野地板が現れました。
新しい屋根下地の設置
既存の葺き土をキレイに取り除いて、新しい屋根下地となる野地合板を垂木(たるき)に留め付けします。
野地合板の上に、新しく防水シート(改質アスファルトルーフィング)を設置します。
F形防災瓦で葺き替え
縦桟・瓦桟木を設置して、新しくF形防災瓦で葺き替えしました。
F形防災瓦の施工要領書通りに施工することで、ガイドライン工法を満たすことができます。
軒先は尻部にくぎ留め2本・アンダーラップに7形くぎを設置しました。(軒瓦1枚につき3本留め)
この地域の基準風速の風圧力では全く問題ありません。
けらば部
けらば部は、けらば瓦の側面に2本、上面に1本の計3本のパッキン付きビスで留め付けしました。(瓦1枚につき計3点留め)
軒先部3点留は標準仕様となっています。
棟部
棟部は、棟瓦を使用した1本伏せのガイドライン仕様で葺き直ししました。
すべての棟瓦をパッキン付きビスで下地となる芯木に留め付けます。
棟瓦は芯木・棟補強金物を通して、建物に固定されるため、巨大な台風にも飛散することがありません。
瓦自体が長期間持つことから、劣化しやすい芯木は透湿ルーフィングをかぶせるなどして、より長期間持つ仕様とすることで、巨大台風にも長期にわたって飛散を防ぐことができます。
まとめ:瓦屋根の耐風診断・葺き替えの耐風改修をご紹介しました。
築30年を経過した瓦屋根の耐風診断・耐風改修した事例をご紹介しました。
切妻屋根の場合、平部・軒先部・けらば部・棟部の4か所が耐風診断するポイントとなります。
屋根下地から全面葺き替えすることで、屋根の状態は、ほぼ新築と同じようになります。これから、30年以上は点検だけのメンテナンスでほどんど問題ないと思います。
その分、屋根にかかるトータル費用を抑えることにもつながります。
お客様のご要望・ご相談に対応できる業者を選ぶことが重要です。
また、屋根全体の耐久性のバランスを考慮できる業者を選ぶことも費用を抑えるポイントだと言えます。
屋根に関して、お悩みの方はお気軽にお問い合わせください。
神清からのお願い
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