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屋根のしっくい工事費用の相場は?不要不急な提案が多いので要注意!
瓦屋根において、「しっくい工事」のご相談を多くいただきます。
しっくいとは、屋根の棟部(一番高い部分)で、ほとんど見えない場所に使用されています。
訪問リフォーム業者さんや外壁塗装屋さんから、急に、「しっくいがはがれているので、雨漏りするよ。」と心配事を言われて、ビックリされてのご相談がほとんどです。
屋根のしっくい工事は必要なの?
しっくい工事費用の相場は?
塗装屋さんから屋根のしっくいをやらないと雨漏りするって言われたけどホントなの?
などのお悩みに関して、少しでもお役立ちできればと思います。
この記事では、屋根しっくい工事の費用相場と、しっくい工事の内容について、写真を使ってわかりやすくご紹介します。
屋根のしっくいって何?
屋根のしっくいとは、「棟部(屋根の頂部)や軒先(屋根の先端部)で使用されている保護材」のことです。
屋根の平部(屋根の水平面)と棟部の間の隙間に使用されている白い部分のものです。
しっくいの役割は2つです。
①しっくいの奥にある葺き土を強風雨から守る保護材
②瓦屋根の美観を整える化粧材
そのため、雨漏りや耐震性には、直接関係しない材料です。
業者さんに、「雨漏りする」「地震で崩れる」とあおられても、慌てずに、無視していただければ大丈夫です。
しっくい工事は何をするの?
屋根のしっくい工事は、「しっくいがはがれた落ちた部分の葺き土の表面にしっくいを塗り直す」というものです。
ここで、注意してほしいことがあります。
すべてのしっくいがはがれ落ちていない場合、残っているしっくいに対して、2つの
2つの作業があります。
「塗り直し」・・・残っているしっくいをはがして、新しく塗る。
「重ね塗り」・・・残っているしっくいの上から重ねて塗る。
※「重ね塗り」は、経年で雨漏りの原因となりますので、NGです!
以下、順番に詳しく説明していきます。
屋根のしっくい工事費用の相場は?
屋根のしっくい工事費用の相場は、3,500~4,500円/mです。
ここでの注意ポイントがあります。
しっくいを塗る長さ1m当たりとなります。
例えば、棟の長さ10mの場合、棟の左右両面を塗るため、しっくいを塗る長さは、20mとなります。
棟の長さ10m×両面2×単価(3,500~4,500)円=70,000~90,000円です。
これに足場代などが加わります。
家1軒当たりの参考例としては、総2階の標準的な屋根、100㎡の寄棟屋根で計算します。
棟の長さ30m×両面2×単価(3,500~4,500)円=210,000~270,000円となります。
これに足場費用が、250,000円かかるとしますと、約45~55万円です。
どの程度はがれたら、しっくい工事が必要なのか?
上の写真は、しっくいが1か所はがれています。
塗装屋さんなどは、この程度の状態でも、「しっくいがはがれているので、雨漏りするからしっくい工事を行いましょう。」と提案されます。
お客様に予算があれば、有だと思います。
しかし、私だったら、まだ勿体ないと考えます。
しっくいがはがれて雨漏りするメカニズム
下の写真は、日本瓦屋根の棟部を葺き直し(耐震補強)するために、棟部を解体したところです。
しっくいは、最下部のし瓦の下に位置しています。
しっくいの厚みは約10mmで、葺き土の表面に塗られています。
役割としては、瓦とのし瓦の間に入り込む強風雨で、葺き土が浸食されることをふせぐための保護材です。
葺き土は棟の中心から片側に10㎝以上ずつあります。
雨漏りするには、しっくいがはがれた後、10㎝以上ある葺き土が強風雨で浸食され、雨が棟の中心に届く必要があります。
風を伴わない雨は、のし瓦で排水されるので、葺き土は浸食されません。
強風雨だけですと年に数回程度ですので、10㎝浸食されるには、数年以上はかかります。
しっくいがはがれたために雨漏りした現場はほとんどありません。
業者に「雨漏りするとあおられても、慌てて契約することはやめましょう!」
それでは、どこまでしっくいがはがれたら、しっくい工事を行うタイミングなのか、事例を紹介します。
①穴が開いてしまった時。
下の写真は、葺き土が浸食され、貫通穴が開き、反対側からの光が漏れているところです。
ここまで浸食されると強風雨で、雨は棟の中心から瓦の下へ浸入します。
雨漏りリスクとなるので、棟部の葺き直しをします。
現在では、葺き土はほとんど使用せず、(葺き土+しっくい)の役割を果たす、なんばんしっくいを使用して葺き直しします。(⇒がなんばんしっくい:デザインもしっくいとほとんど変わりません。)
なんばんしっくいは一体化するので、表面がはがれることはありません。
次回からしっくい工事をする必要がなくなるので、おススメです。
②しっくいがすべてはがれおちてしまった時。
下の写真では、しっくいはすべてはがれ落ちて、葺き土が丸見えです。
築40年以上経過した屋根で、一度もメンテナンスされていなかった屋根です。
この屋根でも雨漏りはしていません。
しっくいがすべてはがれも、雨漏りしていないのです。
立地にもよりますが、いつかは棟の中心部まで浸食されてしまうので、いつかはメンテナンスが必要となります。
この棟は大回し工法という耐震性のない仕様なので、耐震性のある棟に葺き直しすることをおススメします。
しかし、長く住まず、予算の限りがある場合は、しっくい工事も可だと思います。
③しっくいが半分以上はがれてしまった時。
この場合は、すぐに雨漏りするリスクはまだ低いと思います。
しかし、その他の工事で足場などを設置した場合は、併せて、しっくい工事を行うこともありだと思います。
予算の関係もあると思いますが、棟の耐震補強と併せて検討されることをおススメします。
屋根しっくい工事の注意点
しっくいの重ね塗りはNGです。
しっくい工事において、しっくいの重ね塗りはNGです!
上の写真は、棟の葺き直し(耐震補強化)を行うために、大回し工法を解体したところです。
しっくいを見ると新築時に施工したしっくいの外側に、一段低くしっくいが重ね塗りしてありました。
新築時に施工したしっくいが厚く残っているのに、全く、無駄なしっくいの重ね塗りだと言えます。
さらに、注意喚起したいのは、重ね塗りしたために、かえって、雨漏りするようになる現場も多くあります。
上の写真は、棟の積み直し(耐震補強化)を行うために、大回し工法を解体したときの写真です。
この現場は、雨漏りしていませんでした。
しっくいの位置が下から2段目ののし瓦より若干内側のラインとなっています。
このラインからしっくいが外側のはみ出ると一番下ののし瓦とのし瓦の間から流れ落ちる雨水が外に出ず、しっくいの内側へ流れ込みます。
葺き土を浸食するようになり、雨漏りの原因となります。
この屋根で、しっくいを重ね塗りした場合は、雨水は排出されず、雨漏りすることになります。
よって、しっくいの重ね塗りはNGです。
しっくいでは、耐震性・耐風性は向上しません。
上の写真は東日本大震災で被害のあった棟です。
しっくいをのし幅まで、広げて設置されていても、崩れています。
棟部の耐震性は、葺き土+しっくいの幅ではなく、耐震金具の有無が重要です。
しっくいの幅を厚くしても、耐震性は向上しません。
しっくい工事以外の選択肢もあります。
日本瓦の場合
日本瓦屋根の場合は、既存の棟は耐震・耐風性能が低い棟となっています。
しっくい工事費用・・・棟長さでは、約10,000円/mとなります。
10mの棟だとすると、約35万円です。(足場込み)
冠一本伏せ工事費用・・・棟長さでは、約25,000円/mとなります。
10mの棟だとすると、約50万円です。(足場込み)
耐震・耐風仕様の冠一本伏せに葺き替えると棟10m当たり、約15万円差となります。
約15万円差で、耐震・耐風仕様することもありだと思います。
S形・F形瓦の場合
S形・F形瓦の場合は、既存棟の耐風性能が低い仕様となっています。
葺き直しの場合は、棟の長さでは、約18,000円/mとなります。
10mの棟だとすると、約43万円です。(足場込み)
耐震性能を向上させる葺き直しの場合、棟10m当たり、棟8万円差となります。
屋根のしっくい工事は不要不急が多いので、慌てずに検討しましょう!
屋根のしっくい工事は、不要不急の提案が多いです。
塗装屋さんや訪問リフォーム業者さんからの急ぎの契約は、やめておきましょう!
数枚のしっくいはがれでは、まだ、数年雨漏りするまで時間はあります。
しっくい工事だけではなく、併せて、耐震・耐風・耐久性を向上させるリフォームも併せて、検討されることをおススメいたします。
愛知県で、訪問リフォーム業者に屋根の問題を指摘された方は、弊社にお問合せください。電話でアドバイスできると思います。
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