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屋根の漆喰(しっくい)工事費用の相場は?不要不急な提案が多いので要注意!
瓦屋根において、「しっくい工事」のご相談を多くいただきます。
しっくいとは、屋根の棟部(一番高い部分)で、ほとんど見えない場所に使用されています。
訪問リフォーム業者さんや外壁塗装屋さんから、急に、「しっくいがはがれているので、雨漏りするよ。」と心配事を言われて、ビックリされてのご相談がほとんどです。
屋根のしっくい工事は必要なの?
しっくい工事費用の相場は?
塗装屋さんから屋根のしっくいをやらないと雨漏りするって言われたけどホントなの?
などのお悩みに関して、少しでもお役立ちできればと思います。
この記事では、屋根しっくい工事の費用相場と、しっくい工事の内容について、写真を使ってわかりやすくご紹介します。
屋根の漆喰(しっくい)って何?
屋根の漆喰(しっくい)とは、「棟部(屋根の頂部)や軒先(屋根の先端部)で使用されている保護材」のことです。
屋根の平部(屋根の水平面)と棟部の間の隙間に使用されている白い部分のものです。
しっくいの役割は2つです。
- しっくいの奥にある葺き土を強風雨から守る保護材
- 瓦屋根の美観を整える化粧材
つまり、雨漏りや瓦の耐震性には、直接関係しない材料です。
業者さんからしっくい工事を行わないと、「雨漏りする」「地震で崩れる」と不安をあおられても、慌てることなく無視していただければ大丈夫です。
屋根の漆喰(しっくい)工事は何をするの?
屋根のしっくい工事とは、「しっくいがはがれた落ちた部分の葺き土の表面にしっくいを塗り直す」というものです。
しかし、しっくい工事を検討される上で、知っていてほしい重要な注意点があります。
すべてのしっくいがはがれ落ちていない場合、しっくい工事と言っても2つの作業方法があるという点です。
- 漆喰の塗り直し・・・残っているしっくいをはがして、新しく塗る。
- 漆喰の重ね塗り・・・残っているしっくいの上から重ねて塗る。
「塗り直し」と「重ね塗り」では、工事後の見た目は大きく違わないのですが、その後の耐久性や不具合が発生するリスクが異なります。
基本的には、しっくい工事と言えば「塗り直し」です。
「重ね塗り」は雨漏りリスクが高まるのでやめておきましょう。
重ね塗りの方が既存のしっくいをはがさなくて済む分だけ工事費は安価となるようですがNGです。
また、見積書には「塗り直し」と記載しているのに、「重ね塗り」する業者が多いので工事中の確認も必要です。
屋根の漆喰(しっくい)工事費用の相場は?
屋根のしっくい工事費用の相場は、3,500~4,500円/mです。
※しっくいを塗る長さ1m当たりの費用
簡単な事例で紹介します。
●棟の長さ10mの目安
棟の長さ10mだと棟の左右両面にしっくいを塗るため、しっくいを塗る長さは合計20mとなります。
棟の長さ10m×両面2×単価(3,500~4,500)円=70,000~90,000円です。
これに足場代・経費などが加わります。
●家1軒の目安
家1軒の参考事例として、総2階の標準的な屋根、100㎡の寄棟屋根でのしっくい工事費用です。(棟の長さ:30mとする)
棟の長さ30m×両面2×単価(3,500~4,500)円=210,000~270,000円です。
これに足場費用が250,000円かかるとしますと、約45~55万円となります。
屋根の漆喰(しっくい)がはがれて雨漏りする仕組みとは?
しっくいがはがれて雨漏りする仕組みについて紹介します。
下の写真は、日本瓦屋根の棟部を葺き直し(耐震補強)するために、棟部を解体しているところです。
しっくいは、最下部のし瓦の下に位置しています。
しっくいの厚みは約10mmで、葺き土の表面に塗られています。
役割としては、瓦とのし瓦の間に入り込む強風雨で、葺き土が浸食されることをふせぐための保護材です。
葺き土は棟の中心から片側に幅10㎝以上あります。
雨漏りが発生する仕組みは以下となります。
- しっくいがはがれる
- 強風雨で葺き土が流し出される
- 10㎝程度葺き土が浸食され、中央の葺き土部で下方向に孔があく
- 葺き土の孔から強風雨が建物側へ伝わり、雨漏りが発生する
風を伴わない雨は、のし瓦で排水されるので、葺き土は浸食されません。
強風雨だけですと年に数回程度ですので、葺き土が10㎝浸食されるには、数年以上はかかります。
そのため、実際にしっくいがはがれたことが原因で雨漏りした現場には、ほとんど出会うことがないのです。
業者から「すぐに雨漏りする」とあおられても、慌てて契約することはやめましょう!
どの程度はがれたら、屋根の漆喰(しっくい)工事が必要なの?
それでは、どの程度しっくいがはがれたら、しっくい工事が必要なのでしょうか?
具体的な事例写真を元に紹介します。
⓪しっくいが1枚はがれた時。
上の写真は、しっくいが1か所はがれています。
塗装屋さんなどは、この程度の状態でも、「しっくいがはがれているので、雨漏りするからしっくい工事を行いましょう。」と親切に提案されます。
お客様に予算があれば、有だと思います。
しかし、私の家だったら、まだ勿体ないと考えます。
それでは、どこまでしっくいがはがれたら、しっくい工事を行うタイミングなのか、事例を紹介します。
①穴が開いてしまった時。
下の写真は、葺き土が浸食され、貫通穴が開き、反対側からの光が漏れているところです。
ここまで浸食されると強風雨で、雨は棟の中心から瓦の下へ浸入します。
雨漏りリスクが高い状態なので、メンテナンスが必要です。
ただし、この場合は、しっくい工事ではなく、メンテナンスとしては棟部の葺き直しが必要です。
棟部の葺き直しとは、棟瓦を一旦めくり、葺き土の代わりに南蛮漆喰(なんばんしっくい)を使用して、再度、棟瓦を全数留め付けしながら設置することです。
※現在では、葺き土はほとんど使用せず、(葺き土+しっくい)の役割を果たす、南蛮漆喰(なんばんしっくい)を使用しています。
南蛮漆喰(なんばんしっくい)は一体化するので、表面のしっくいがはがれることはありません。
次回からしっくい工事をする必要がなくなるので省メンテナンス・耐震仕様となり、安心でおススメです。
②しっくいがすべてはがれおちてしまった時。
下の写真では、しっくいはすべてはがれ落ちて、葺き土が丸見えです。
築40年以上経過した屋根で、一度もメンテナンスされていなかった屋根です。
この屋根でも雨漏りはしていません。
しっくいがすべてはがれも、雨漏りしていないのです。
立地にもよりますが、いつかは棟の中心部まで浸食されてしまうので、メンテナンスが必要となります。
メンテナンス予算がない場合は、しっくい工事を行いましょう。
また、この棟は大回し工法という耐震性のない旧仕様なので、耐震性のある棟に葺き直しすることがおススメです。
③しっくいが半分はがれてしまった時。
下の写真では、しっくいが半分程度、はがれてしまっています。
この場合は、すぐに雨漏りするリスクはまだ低いと思います。
そのため、外壁塗装など、その他の工事で足場などを設置した場合は、併せて、しっくい工事を行うことはありだと思います。
さらに、すべての棟瓦を留め付ける棟の葺き直しがおススメです。
屋根の漆喰(しっくい)の重ね塗りはNGです!
先ほど少しふれましたが、しっくい工事において、しっくいの重ね塗りはNGです!
しっくいの重ね塗りは既存のしっくいをはがさなくていい分だけ、費用は安くなります。
費用は安価になっても意味がなければ、やはりNGです。
無駄なしっくい工事
上の写真は、棟の葺き直し(耐震補強化)を行うために、旧工法の棟を解体したところです。
しっくいを見ると新築時に施工したしっくいの外側に、一段低くしっくいが重ね塗りしてありました。
新築時に施工したしっくいが厚く残っているので、全く無駄なしっくいの重ね塗りだと言えます。
無駄なしっくい工事でお金を払わされてしまったとも言えます。
かえって雨漏りするようになる!
さらに、注意喚起したいのは、重ね塗りしたために、かえって、雨漏りするようになる現場も多くあります。
上の写真は、棟の積み直し(耐震補強化)を行うために、旧工法の棟を解体したときの写真です。
この現場は、雨漏りしていませんでした。
しっくいの位置が下から2段目ののし瓦より若干内側のラインとなっています。
このラインからしっくいが外側のはみ出ると一番下ののし瓦とのし瓦の間から流れ落ちる雨水が外に出ず、しっくいの内側へ流れ込みます。
葺き土を浸食するようになり、雨漏りの原因となります。
この屋根でしっくいを重ね塗りした場合は、雨水は排出されず、雨漏りすることになります。
よって、しっくいの重ね塗りはNGです。
棟のしっくい重ね塗りによる雨漏り事例についてこちらの動画で紹介しています。
屋根の漆喰(しっくい)工事では、耐震性・耐風性は向上しない!
上の写真は東日本大震災で被害のあった棟です。
しっくいをのし幅まで、広げて設置されていても、崩れています。
棟部の耐震性は、葺き土+しっくいの幅ではなく、耐震金具の有無が重要です。
重ね塗りして、しっくいの幅を厚くしても、耐震性は向上しません。
棟部の耐震改修の事例を紹介します。
●日本瓦の場合
日本瓦屋根の場合は、既存の棟は耐震・耐風性能が低い棟となっています。
しっくい工事費用・・・棟長さでは、約10,000円/mとなります。
10mの棟だとすると、約35万円です。(足場込み)
冠一本伏せ工事費用・・・棟長さでは、約25,000円/mとなります。
10mの棟だとすると、約50万円です。(足場込み)
耐震・耐風仕様の冠一本伏せに葺き替えると棟10m当たり、約15万円差となります。
約15万円差で、耐震・耐風仕様することもありだと思います。
●S形・F形瓦の場合
S形・F形瓦の場合は、既存棟の耐風性能が低い仕様となっています。
葺き直しの場合は、棟の長さでは、約18,000円/mとなります。
10mの棟だとすると、約43万円です。(足場込み)
耐震性能を向上させる葺き直しの場合、棟10m当たり、棟8万円差となります。
屋根のしっくい工事は不要不急が多いので、慌てずに検討しましょう!
屋根のしっくい工事は、不要不急の提案が多いです。
塗装屋さんや訪問リフォーム業者さんからの急ぎの契約は、やめておきましょう!
数枚のしっくいはがれでは、まだ、数年雨漏りするまで時間はあります。
しっくい工事だけではなく、併せて、耐震・耐風・耐久性を向上させるリフォームも併せて、検討されることをおススメいたします。
愛知県で、訪問リフォーム業者に屋根の問題を指摘された方は、弊社にお問合せください。電話でアドバイスできると思います。
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