目次
パミールとは?
パミールとは、スレート屋根の一種で、ニチハ(株)が製造販売した屋根材です。
まだ、石綿スレート屋根が主流であったときに、いち早く無石綿スレートとして販売された商品です。
スレートの靭性を発揮させるセメントのつなぎ材となる繊維として、石綿の代わりにパルプを使用していたようです。
パルプは軽量化・踏み割れ防止には効果があるのですが、水分を吸いやすい特徴があり、パミールの不具合の要因の1つです。
図面などには、カラーベスト・コロニアル葺きと書いてあっても、同等品でパミールが施工されていた事例もあるので、屋根の現物で判断することが必要です。
図面に不燃番号NM-9269と書いてある場合、この番号はパミールの番号であり、パミールである可能性が高いです。
パミールの見分け方を紹介
パミールには、2種類の形状、3種類のグレードがあります。
2種類の形状は以下となります。
●岩調・木肌調
●和瓦調
3種類のグレードでは、パミールS・M・Aがありました。
パミールSは厚み6mm、パミールM・Aは厚み5mm、パミールS・Mは4層塗装、パミールAは3層塗装という特徴がありました。
パミールと他のスレートの違いについて紹介します。
和瓦調は下端の3つの円弧が特徴的なので、すぐに見分けがつきます。
一方で、コロニアルと区別がつきにくい、岩調・木肌調のパミール屋根を見分ける方法として、以下があります。
①屋根材先端の切り込みの間隔がほぼ同じだとパミールです。
②切り込み付近に縦ラインが入っていたらパミールです。
実際の経年したパミール屋根でも確認できます。
③重なりの奥ですが、1枚めくって名前(ニチハ・パミール)があると確実にパミールです。
実際にくぎのサビでズレ落ちたパミール屋根でも「ニチハ」「パミール」が確認できます。
残念ながら自宅の屋根がパミールの特徴に近いと思われた方は、住宅の販売会社/建設会社・もしくはお近くの屋根工事店にご相談ください。
パミールかどうかでその後の屋根メンテナンスが大きく変わってくるので、早めに確定させることをオススメします。
パミールの不具合とは?
パミールの不具合としては2つありますのでご紹介します。
- パミールのくぎがサビてパミールがずれる・落ちる
- パミールの本体に剥離・欠損が発生している
不具合の事象について簡単に解説します。
パミールのくぎがサビてパミールがずれる・落ちる
上記写真はパミール屋根がずれ落ちた現場で、パミールをはがしたところです。
上段のパミールで隠れていたパミール留め付けくぎがサビており、くぎ頭は粉々になっています。
くぎの胴部までサビが進行するとくぎが折れ、パミールの自重を支えられなくなりパミールが落下します。
パミールの本体に剝離・欠損が発生している
パミールの表面が剥離して、白い本体部分が暴露しています。
パミール本体の剥離がさらに進むとその部分が欠損し、2枚重ねの下のパミールが暴露するようになります。
この症状の屋根において、塗装業者さんが「高圧洗浄するとパミールがさらに欠損するので塗装できない」と言われて、はじめて、パミールだと知ることになります。
ニチハの対応について
ニチハに相談をされると以下の対応が多いようです。
- 「販売先である住宅会社へしか保証しない」というスタンス
- くぎのサビについては、築後10年以内であれば対応する
- パミールの本体の剥離・欠損については、経年劣化である
- パミールの剥離は5年点検をしっかり行わなかった住まい手側の問題
- 保証は代替製品である「アルマ」(アスファルトシングル)を無償提供
- 保証としてパミールの落下を防ぐために表面からビス打ちを行うケースもある
- 住まい手が納得できない場合、「訴訟に発展しても構わない」というスタンス
パミールは生産中止になったのが2009年のため、築後15年以上経過しており、くぎのサビに関しても保証は難しくなってきています。
訴訟しても、住まい手にはパミールの欠陥を証明することはほとんど不可能であり、勝つことは難しいようです。
住宅会社が倒産した場合は、対応してもらえず泣き寝入りとなってしまいます。
パミールの不具合の原因とは?
パミールの不具合の原因とは、他のスレート・他の屋根材に比べて水を吸いやすいことです。
アスベスト繊維の代わりにパルプ繊維等を使用しており、このパルプに水を吸う特性があるためだと言われています。
他のスレート(コロニアル)の2倍程度、パミールは水を吸う能力が高くなっており、これがくぎをサビさせた要因1つです。
また、もう1つの要因はパミールの製造方法に起因します。
本体を数層に重ねて成形しており、その層間に水が入りこみやすい性質があり、パミールが層状剥離する原因となります。(ミルフィーユ状)
結果、くぎのサビ・本体の剥離ともパミールの高い吸水性が原因です。
この高い吸水性はメンテナンスする上でも注意が必要となります。
スレートのメンテナンス方法は?
スレート屋根のメンテナンス方法としては以下の3つが一般的です。
- 塗装メンテナンス
- カバー工法
- 葺き替え
塗装メンテナンスを10年ごと、カバー工法・葺き替えの大規模リフォームを25~30年で行うメンテナンススケージュールとなっています。
一方で、パミールのメンテナンスは異なりますので、次の章から詳しく解説していきます。
パミールは塗装メンテナンス可能?
パミールは塗装メンテナンスできません。
パミールは塗装不可と知っている塗装業者さんは、現場調査の時点で「高圧洗浄できない」と伝えてくれます。
しかし、パミールを認識していない塗装業者さんもいるようで、パミールを塗装してしまった屋根もたまに見かけます。
パミールを塗装するとどうなるか、ご紹介します。
●塗装したら層状剥離が加速する
パミールの周辺部・断面部は塗装できないので、吸水した雨水が塗膜によって乾燥しずらくなります。
表面剥離は塗装によって一旦、進行はストップしますが、周辺部の層状剥離は加速します。
●塗装したらあなが開く
やがて、雨水を吸水しやすい部分の剥離が加速して、パミールにあなが開いてしまいます。
緑色の防水シートが見えており、直接、雨水が防水シートへ入り込むので、雨漏りリスクが高まります。
パミールに塗装すると不具合が加速するので、絶対にやめておきましょう。
パミールを塗装してしまった屋根を動画で紹介しています。
パミールをカバー工法でリフォームは可能?
パミールをカバー工法でリフォームすることについて紹介します。
パミールはすでに水分を含んだ屋根となっています。
一般的な住宅屋根の100㎡で計算すると、200㎏程度の水がパミールに吸われていることになります。
下の写真は、しばらく雨が降っていない状態でパミールをはがしたものです。
パミールの重なり部分や防水シート表面に水滴が付着しています。
パミールが吸水している水分が日射で放湿され、裏面で結露し水滴ができているのです。
カバー工法では、粘着ルーフィングを使用するので、パミールの水分が新旧のルーフィング内で閉じ込められてしまいます。
このパミールの水分によって新しいカバー工法で使用する留め付けビスが経年で腐食するという最悪のケースもありえます。
カバー工法する場合は、単純に粘着ルーフィングを使用するのではなく、パミールの水分を考慮した部材(ステンレス製ビス)・屋根構成(透湿ルーフィング・2重野地)での施工をご検討ください。
パミールに詳しい屋根工事店に相談されることをオススメします。
パミールを葺き替えでリフォームは可能?
パミールを葺き替えでリフォームすることについて紹介します。
パミールは葺き替えでリフォームすることがオススメです。
負の遺産となるパミールを屋根に残すかたちとなるカバー工法ではなく、屋根から取り除いてしまう葺き替えを行えば、その後の30年間、屋根には大きな不安はなくなります。
パミールの葺き替えは築年数が比較的浅いので、野地板が劣化しているケースはほとんどありません。
野地合板は既存のものを使用し、防水シートと屋根材を新しく葺き替えることになります。
葺き替える屋根材としては、コロニアルグラッサ・アスファルトシングル・ガルバリウム鋼板屋根などの軽い屋根材の中からお選びください。
パミールではなくコロニアルだった場合は、築15~20年ではカバー工法・葺き替えなどの大規模リフォームをする必要はありません。
早めに大規模リフォームすることで、メンテナンスコストが増加していますので、次の30年は塗装メンテナンスしないものを選ぶこともオススメとなります。
まとめ パミールのメンテナンスは葺き替えが安心です!
パミールの不具合の原因とは、他のスレート・他の屋根材に比べて水を吸いやすいことです。
この高い吸水性はメンテナンスする上でも注意が必要となります。
塗装メンテナンスはNGです。
カバー工法はパミールの水分に配慮した施工の検討が必要です。
パミールは葺き替えでリフォームすることがオススメであり、水分を含んだパミールを屋根からめくるので、負の遺産がなくなり安心です。
築15年を超えたパミールのメンテナンスはパミールについて詳しい屋根工事店に相談されることをオススメします。
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