瓦屋根の耐風診断を実施
築20年を経過した日本瓦屋根の耐風診断のご依頼がありました。
「最近の巨大台風でも被害が発生しないようにしたい」、「予算もあるので、相見積で提案してもらった中で選びたい」とのご要望でした。
早速、瓦屋根の耐風診断を実施しました。
以下、簡単にご紹介します。
瓦屋根の耐風診断内容
寄棟(よせむね)屋根の耐風診断内容は以下のポイントです。
- 平部(ひらぶ/屋根の平面部分)
- 軒先部(のきさきぶ/屋根の先端部分)
- 棟部(むねぶ/屋根の頂上部分)
以下で、簡単に解説します。
平部
平部は瓦をめくって、施工状態を確認します。
瓦の下に葺き土が入っている土葺き(どぶき)工法ではありませんでした。
瓦は簡単にめくれたので、全ての瓦をくぎ留めしてありません。
3枚に1枚の割合で、くぎ留めされていました。
日本瓦は防災瓦ではなく、昔の瓦でした。
防水シート・瓦桟木はほぼ問題ありませんでした。
ポイントまとめ
・3枚に1枚のくぎ留め(土葺きではない)
・防災瓦ではない
・防水シート・瓦桟木にほぼ問題はない
軒先部
軒先部は補強の留め付けを確認します。
2枚に1枚、軒瓦の表面からパッキン付きのくぎが留め付けしてありました。
ポイントまとめ
・土葺きではない
・2枚に1枚、軒瓦はパッキン付きくぎで留め付け
棟部
棟部は棟の仕様と留め付け具を確認します。
棟部はのし積みではなく、冠1本伏せ仕様となっていました。
棟瓦の留め付け具は、パッキンなしの溶融亜鉛メッキくぎでした。
ポイントまとめ
・冠1本伏せ仕様
・留め付けはパッキンなしの溶融亜鉛メッキくぎ
瓦屋根の耐風診断結果
耐風診断結果:巨大台風が近くを通過した場合、被害が発生する可能性が高い瓦屋根でした。
詳細は以下の通りです。
・平部はこの地域の基準風速の耐風性能を満たす施工ではありませんでした。
・軒先部は現在の標準仕様である軒瓦3点留めを満たす施工ではありませんでした。
・棟部は現在の標準仕様であるパッキン付きビス留めを満たす施工ではありませんでした。
瓦屋根の耐風改修提案
瓦屋根の耐風改修提案を3つ、お客様に御見積と併せて、ご説明の上、提示いたしました。
①棟部を解体して、耐風・耐震仕様で葺き直し
②既存の瓦を使用して、平部・軒部・棟部を耐風・耐震仕様で葺き直し
③既存の瓦をめくり、新しい防災瓦でガイドライン仕様で葺き替え
お客様にご検討していただき、弊社に②の工事内容でご依頼いただきました。
瓦屋根の耐風改修工事
既存の瓦を使用した耐風改修工事をご紹介します。
平部
日本瓦は縦葺きと言って、縦に1列ずつ施工していきます。
防水シート・瓦桟木の状況を考慮して、くぎではなく、全ての瓦をビス留めしました。
古いくぎ留めしてある瓦もくぎを抜いて、ビスで留め直ししました。
1列縦に留めては、つぎの列に移行する方式で、確実に全ての瓦を留め付けました。
ビス留めはくぎ留めよりも耐風性能が高くなります。
さらに、防災瓦に葺き替えるのと近い耐風性能を実現するために、全ての瓦を接着剤補強しました。
問題のあるラバーロック工法とは異なり、くぎ・ビスで留め付けされた瓦同士を接着剤で留め付けるので、耐風性能は向上する接着剤補強工法です。
ラバーロック工法の問題点について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
【実験したよ】価格の安さでラバーロックを勧めてくる業者には注意して!
軒先部
軒先部は、軒瓦の尻に平部を留めたビスを2本留め、補強されていない軒瓦の表面には、パッキン付きビスで補強しました。(計3点留め)
軒先部3点留めはガイドライン仕様となっているため、葺き直しでは必要になります。
棟部
棟部は古い棟を解体して、棟瓦は再利用し、ガイドライン仕様で葺き直ししました。
棟部には、新たに棟補強金物を野地板・たるきに留め付けします。
棟瓦の下地となる防腐処理済の芯木を棟補強金物に留め付けます。
このとき、最上段の瓦はしっかりと留め付けすることが必要です。
芯木と最上段の瓦の隙間はなんばんしっくいで埋めて、防水処置を行いました。
なんばんしっくいは昔の(葺き土+しっくい)の役割を1つで済ます材料で、一体化しているため、表層のしっくいがはがれるというメンテナンスを省くことができ、実績もある耐久性の高い仕様です。
さらに、芯木の上には、透湿性のある防水シート(透湿ルーフィング)でカバーすることで、芯木の湿気による腐朽を防ぎ、高耐久仕様の棟となります。
既存のすべての棟瓦をパッキン付きビスで下地となる芯木に留め付けます。
棟瓦は芯木・棟補強金物を通して、建物に固定されるため、巨大な台風にも飛散することがありません。
瓦自体が長期間持つことから、劣化しやすい芯木は透湿ルーフィングをかぶせるなどして、より長期間持つ仕様とすることで、巨大台風にも長期にわたって飛散を防ぐことができます。
その他
その他として、谷部は銅製の谷板金が25~30年で腐食し孔が開くことがあります。
併せて、高耐久仕様のステンレス製の谷板金に交換することもオススメします。
まとめ:瓦屋根の耐風診断・耐風改修をご紹介しました。
築20年を経過した瓦屋根の耐風診断・耐風改修した事例をご紹介しました。
寄棟屋根の場合、平部・軒先部・棟部の3か所が耐風診断するポイントとなります。
全面葺き替えすることは理想ですが、屋根の状態によっては、葺き直しなどでも耐風性能を向上させることができます。
その分、費用を抑えることにもつながります。
お客様のご要望・ご相談に対応できる業者を選ぶことが重要となります。
また、屋根全体の耐久性のバランスを考慮できる業者を選ぶことも費用を抑えるポイントだと言えます。
屋根に関して、お悩みの方はお気軽にお問い合わせください。
神清からのお願い
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