最近は、新築の4割近くが屋根断熱仕様と急増しています。
屋根断熱とは最上階の部屋に水平の天井がなく、屋根の傾斜なりに天井があり、その傾斜天井上に断熱材がある仕様のことです。
2階、3階の屋根空間を室内・ロフトとして使用できるメリットがあります。
屋根断熱仕様の木部腐朽とは?これです!
しかし、屋根断熱のデメリットは、設計・施工を間違えると木部の腐朽が著しく進行することです。
野地合板(屋根の外側)に白色腐朽菌が発生していて、合板の強度が低下しています。
野地合板(室内側)もビチョビチョに濡れて、断熱材も含水しています。
これらは、傾斜天井に染みができて、はじめて発覚しました。
雨漏りかと思い、屋根材を剥がし、アスファルトルーフィングを剥がしてみると野地合板が腐朽していました。
実際は、雨漏りではなく、結露が発生していました。
屋根断熱において結露が発生しますと、通常の雨漏りでは考えられないような著しい木部の腐朽劣化が進行している事例が数多くあります。
なぜ?屋根断熱の腐朽の進行がはやいのか?計算してみました!
南面は通気があれば、大丈夫!
そこで、上記図のように、屋根断熱仕様における合板表面の含水率を計算した結果をご紹介いたします。
A:南面の野地合板外表面 B:南面の野地合板内表面
C:北面の野地合板外表面 D:北面の野地合板内表面
の計4か所について、含水率を検討しました。
上の図は、南面のA(野地合板外表面)とB(野地合板内表面)の通気速度と含水率のグラフです。
縦軸は野地合板の含水率、横軸は合板表面の通気速度となっています。
木材の腐朽と含水率の関係は、含水率が30%以上の状態が長く続きますと(2か月以上)、木材・合板は腐朽劣化すると言われています。
断熱材と野地合板の間の通気がない仕様では、Aの外表面は含水率が30%超えて危険な状態です。
一方で、1cm/s(1秒あたり1cm)でも通気があれば、30%を下回ります。
北面は問題あり!
上の図は、北面のC(野地合板外表面)とD(野地合板内表面)の通気速度と含水率のグラフになっています。
通気がなければ、Dの内表面は50%、Cの外表面は40%となっています。
つまり、通気がなければ、30%以上となり、合板は腐朽劣化します。
先ほどの不具合の写真は、通気が行われていなかったと思われます。
通気が1cm/s程度、起きればDの内表面は含水率が低下して問題はありませんが、Cの外表面は10cm/sという大きな通気が起きても含水率が低下しません。
大変危険な状態となります。(北面の野地合板外表面)
計算の条件とは?
このシミュレーションの条件として、宇都宮市の標準気象データをあてはめ、室内側の防湿シートは少し隙間のある5㎡hmmhg/gとなっています。
これは、防湿シートに若干の施工ミスがある想定です。
また、雨が降るとアスファルトルーフィングから2〜3g/㎡hの雨水が野地合板に入ると仮定しています。
これは、雨漏りまでにはならない、屋根からのわずかな雨水浸入があるという条件です。
屋根断熱仕様の野地合板をまとめる!
①合板の外・内で通気がなければ、合板は高含水率のなるため、腐朽劣化するリスクが高い。
②合板の外・内で1cm/sとわずかな通気があれば、南面の外・内と北面の内は含水率が上昇せず、劣化リスクは減少する。
③北面の野地合板外表面は高含水になるので、雨水浸入を防ぐか湿気の排出が重要となる。
今回の検討で、屋根断熱における野地合板の劣化リスクがかなり高いことがわかりました。
長期に渡って、雨水浸入をゼロにすることはルーフィングに釘穴を開けている以上、むずかしいため、湿気の排出が重要となります。
野地合板上の湿気を排出するには、透湿ルーフィングを使用することが大変有効です。
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