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長期優良住宅にするなら、絶対、屋根はホールレス工法にしないと損ですよ!
これから住宅を建てようと検討されている皆様へ。
住宅の購入は初めての方も多いと思います。
土地を探す、資金を確保する、宅建業者を探す、工務店を探す、・・・などなど。
よくわからないことだらけで嫌になりますね。
結局、どんな家にしたいのか?あまりわからないまま建ててしまうことも。
昔から住宅は3回建てると自分の満足する住宅ができると言われています。
そこで、住宅の次に高額で比較的何回か購入する車を例にとって考えてみましょう。
- どれぐらいの予算とするのか?
- どのタイプの車にするのか? 軽自動車、ワンボックス、乗用車、・・・
- どちらにするのか? 新車or中古、ガソリン車orハイブリッド車or電気自動車、国産or外車
- 燃費はどれくらい?
- 耐久性は何年?何年乗るのか? 5年で買い替え、10年で買い替え、乗り潰す、・・・
それでは住宅に置き換えてみると、
- 予算的にどれぐらい
- どのタイプの家にするのか? 平屋、2階建、3階建、・・・
- どちらにするのか? 新築or中古物件、オール電化or電気、ガスor太陽光発電、木造or軽量鉄骨
- 断熱性能はどれくらいにするのか?
- 耐久性は何年?何年住むのか? 20年で買い替え、30年で建て替え、住み続ける、・・・
1.2.3.は何となく住宅の知識がなくても住宅を検討する上でイメージができます。
4.は省エネ基準とわかりにくい表現ではありますが、調べればグレードの良し悪しはなんとなく・・・
しかし、5.はカタログとか見てもイメージできないですよね~。
そこで、前半で住宅の耐久性について考えてみます。
後半では、もっとも劣化が発生し、メンテナンス費に大きな差がつく屋根について考えてみました。驚きの価格差が発生します!!
戸建住宅の寿命について
戦前の伝統建築(現在でいう古民家)の住宅
⇒長寿命である・・・大きな軒の出の屋根
太い木材の躯体
夏通風/冬火鉢
スカスカの家
木製建具
戦後の供給量を優先する住宅
⇒30年寿命である・・・小さな軒の出の屋根
細い柱
エアコン(初期は石油ストーブ)
断熱材の家
アルミサッシ
住宅設備の進歩・ライフスタイルに合わせた30年での建て替えという考え方
日本の取り壊された住宅の平均築年数は27年となっています。
この年数は米国67年、イギリス81年に比べて半分以下・・・
「なぜ短命なのか?」さまざまな議論がありますが、住まい手が住宅の耐久性に自信がなく、手入れをして長期に利用する選択をしなかったこともそのひとつといえます。
やがて、供給過多となり、空き家問題が発生。
2006年 住宅供給量から質の時代へ。(住生活基本法の制定)
長期優良住宅認定の住宅
⇒75年~100年寿命である・・・小さな軒の出の屋根??
耐震性の高い柱・壁(耐震金具)
エアコン・全館冷暖房
高断熱高気密
高性能サッシ
住宅は社会インフラ/中古住宅流通/住宅の資産価値設定という考え方
このように時代によって、住宅の寿命の考え方が変わっています。
住宅の寿命(30年vs.100年)
つまり、現在は2種類あると言えます。
・標準住宅の平均寿命は30年。
・長期優良住宅を認定された住宅の寿命は100年。
これだけ違うと戸建住宅を購入する前に、自分のライフプランにはどちらが適しているのか?検討する必要がありますね。
現在の具体的な選択は?
そこで、もう少し概算金額を入れて考えてみます。
実際には、立地や土地取得費用などが大きな選択要因となりますが、わかりやすくするために、ここでは除外します。(検討する建物は30坪とします)
1.建売住宅を購入
新築時・・・1,500万円(50万円/坪)で購入
30年後・・・150万円(5万円/坪)解体費用
建て替え・・・2,100万円(70万円/坪)で子供が建て替え
子供世代までの合計・・・3,750万円
2.長期優良住宅を購入
新築時・・・2,100万円(70万円/坪)で購入
30年後リフォーム・・・600万円(20万円/坪)で子供がリフォーム
子供世代までの合計・・・2,700万円
子供世代まで考えると950万円の差となります。
どちらがお得?
何を重視するのか?により異なります。
①初期費用重視
初期費用を重視すれば、1.建売住宅となります。
②30年後の子供までの費用重視
30年後の子供までの費用を重視すれば、2.長期優良住宅となります。
③住宅を資産として考えてみる
ここで、もう一つ別の見方/住宅を資産として考えてみます。
1.建売住宅の場合
建売住宅は30年間ローンを支払い終えて、やっと自分の持ち物になったと思ったら、その建物の資産価値はゼロ、将来の解体費を考慮するとマイナス150万円です。
住宅ローンも考えると消えた資産3,000万円となります。
2.長期優良住宅の場合
長期優良住宅では30年後も、建物の資産価値はある程度残ります。(まだ、どの程度の資産価値となるかは?不明)
例えば、評価額600万円とするとその後の生活プランもゆとりができます。
資産として考えてみると、2.長期優良住宅となりますね。
さらに、概算比較で抜けている大事なポイントを補足します。
それは、維持管理費です。
30年後に評価額600万円となるには、それなりの維持管理が必要になります。
単純比較にそれぞれの維持管理費を加えて検討することになります。
お金の話ですので、もう少し詳しい説明を・・・
長期優良住宅とは?
そもそも長期優良住宅とは?
「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」(2009年施行)は、住宅を長期にわたり使用することにより、住宅の解体や除却に伴う廃棄物の排出を抑制し、環境への負荷を低減するとともに、建て替えに係る費用の削減によって国民の住宅に対する負担を軽減し、より豊かで、より優しい暮らしへの転換を図ることを目的としている。
⇒目的:住宅ストックの活用
・環境問題に貢献
・消費者の住宅取得費の軽減
・中古市場の活性化・・・選択肢の増加
・ストックビジネスの育成
方法:長寿命住宅の認定制度
わかりにくいのですが、簡単に言い換えますと
・中古住宅市場を立ち上げることで、築後30年の建物に価値をつける。
・「30年間ローンを払った住宅の価値がゼロ」という悲しい仕組みをチェンジさせる。
・建物に資産価値が残るので、消費者の実質の住宅取得費(取得費-資産価値)を軽減させる。
・ただし、どの建物でも価値があるわけではなく、価値がある建物とは、築後経過した建物を購入しても安全に住める性能を有していることが担保されているものとなる。
⇒その担保は築後の非破壊住宅調査だけでは不安もあるので、建築時にちゃんとした性能の住宅ですよと認定された住宅が長期優良住宅となる。
(長期優良住宅認定住宅)と(長期優良住宅と同等の性能がある住宅)では、将来、その価値に大きな差が生まれる可能性もありますので、費用がかかっても認定を受けるべきです。
長期優良住宅の認定に必要な条件
・耐久性・・・構造や骨組みが劣化しにくい長く住める家(劣化対策等級3)
・耐震性・・・地震に強く、倒壊しにくい安心の家(耐震等級2)
・維持管理・更新の容易性・・・メンテナンスが容易な家
・省エネルギー性・・・地球環境にも家計にもやさしい家(省エネルギー対策等級4)
・住戸面積・・・必要な広さが確保された、暮らしやすい家(75㎡以上)
・居住環境・・・地域のまちなみと調和した家
・維持保全・・・維持保全管理(少なくとも10年ごとの点検)、住宅履歴情報の整備された家
⇒当たり前ですが、長期にわたる安全性を担保する項目が多くなっています。(耐久性、耐震性、維持管理・更新の容易、維持保全)
耐久性
特に重要な項目である耐久性は、「数世代にわたり住宅の構造躯体(柱、壁、屋根、基礎等)が使用できること」となっており、具体的には100年程度のイメージです。
その細かい規定は以下のものとなります。
・劣化対策等級3
・小屋裏点検口
・床下点検口+床下の高さを点検するのに必要な高さ
最初の劣化対策等級3には、外壁の条件として、通気構造と規定されています。
通気層を設けた構造(壁体内に通気経路を設けた構造で、外壁仕上げと軸組等の間に中空層を設けるなど、軸組等が雨水に接触することを防止するための有効な措置が行われているもの)
⇒構造耐力上主要な部分(軸組等)に雨水が接触しない措置として、通気構造を求めています。
屋根の条件は?
壁よりも雨水浸入、温度変化がきびしい屋根はどうなっているのか?
⇒実は、なにもないのです。
しいて言えば、天井断熱仕様で小屋裏がある場合に、点検口を設置することになっています。
ロフトや屋根裏利用で最近増えている、屋根断熱仕様の場合は、なにもありません。(100年持つのかな~?心配です。)
そこで、現在の標準30年住宅の屋根をチェック!してみます。
現在の標準30年住宅の屋根実態
屋根の種類
30年住宅の屋根葺き構造を大まかに分けると2つの種類になります。
直葺き構法
直葺き構法・・・屋根材と野地合板・ルーフィングが密着する構法。
主な屋根材は、化粧スレート、金属屋根、アスファルトシングルです。
上図のように、野地板・下葺材(ルーフィング)に屋根材が施工されている屋根構法です。
この直葺き構法での新築におけるシェアは70%程度です。
施工が簡単で、価格が安価なため、採用率が増えています。
空気層構法
空気層構法・・・屋根材と野地合板・ルーフィングの間に空気層がある構法。
主な屋根材は、粘土瓦、厚形スレートです。
上図のように、野地板・下葺材(ルーフィング)と瓦(屋根材)の間に空気層ある屋根構法です。
この空気層構法の新築におけるシェアは30%程度です。
屋根の不具合劣化事例
直葺き構法(化粧スレート)での野地劣化
野地合板が結露により、ボロボロに腐朽している。(築10年未満)
野地合板とルーフィングの間で結露が発生している。
直葺き構法(化粧スレート)での雨水浸入事例
赤丸に囲われた部分は野地合板へ釘孔から雨水浸入した痕である。
化粧スレートを留め付けている釘の25%から雨水浸入痕が見られた。
赤△が雨水浸入痕、黒〇が雨水浸入なし となっている。
(100㎡ではなんと、660本の釘孔から雨水浸入していることになる。)
⇒現状、直葺き構法では野地合板の劣化事例、雨水浸入事例が多く報告されています。
メンテナンス費用
現在の標準30年住宅屋根のメンテナンス費用をまとめました。
直葺き構法(化粧スレート、金属屋根)は塗装製品であるため、10年毎の再塗装、30年間で葺き替えとメンテナンス計画が作成されています。
空気層構法(粘土瓦)は塗装製品ではありませんので、10年毎のメンテナンスは必要なく、30年間で葺き替えとなっています。
直葺き構法の屋根だけで、30年間で400万円のメンテナンス費が必要となります。
これは新築費用:1,500万円の26%にもあたります。
外壁のメンテナンス費も加えると50%程度にもなってしまいます。
これでは、30年で建て替えしたくなるのもわかります。
これが、住宅の寿命が27年となる一因とも言えます。
長期優良住宅の屋根の条件とは
先程の表で、耐久性の高い瓦にしても30年で葺き替えを行うとなると240万円のメンテナンス費が必要となります。(新築費用の16%)
これでは、費用が掛かりすぎて、住宅のその他のメンテナンスが行えません。
つまり、長期優良住宅の屋根の条件はメンテナンスが極力少なくなければなりません。
そこで、屋根材は再塗装の必要がない粘土瓦が適しています。
さらに、30年での葺き替えを行わないようにホールレス工法とします。
先程の表で、瓦が30年で葺き替えるのは、ルーフィングの耐久性に問題があるからです。
瓦自体の耐久性は60年以上と言われています。
そこで、ホールレス工法にすることで、ルーフィングの耐久性をあげ、30年葺き替えを60年葺き替えにすることが可能と考えているからです。
ホールレス工法とは?
①屋根材を留め付ける釘・ビス等が下葺材(ルーフィング・防水シート)を貫通しない。(⇒孔がないので、ホールレス)
上写真のように、ビスが下葺材(下方:グレー色)に届いていない。
下葺材に孔が明いていない。
②屋根材施工前の段階で目視出来る範囲の下葺材(ルーフィング・防水シート)に釘・ビス・ステープル等で孔を明けない。
⇒屋根材施工前、降雨があっても下葺材を流れる雨水は浸入しない。さらに、屋根材施工後も同様である。
雨水はルーフィング上の薄い水色の矢印部分を流れる。
その下葺材(ルーフィング)には、孔が明いていない。
孔がないので、長期にわたって雨漏りする心配が全くない。
下葺材の性能をどんなに向上させるよりも下葺材に孔を明けない方がはるかに安全です。
フラットルーフ(陸屋根)の業界では、防水材に孔を明けることは当然、厳禁となっています。
それが勾配屋根となると同じ防水材メーカーでも、防水材に孔を明けてもいいというのは不思議な話だと思います。
長期にわたる安全・安心を考えれば、孔がないホールレス工法がお勧めです。
国総研の取り組み
話は少し飛びますが、ホールレス工法は国も後押ししています。
国土交通省の唯一の研究機関である国土技術政策総合研究所(国総研)において、5年間の共同研究「木造住宅の耐久性向上に関わる建物外皮の構造・仕様とその評価に関する研究」が継続されました。
その中で、屋根の耐久性向上を目指して、屋根関係等12団体の参加のもと、通気下地屋根構法タスクグループが開催され、ホールレス構法がベースとなっている通気下地屋根構法設計施工要領書が取りまとめられました。
端的に言うと日本において、木造住宅の屋根で100%近いシェアとなる4つの屋根材(瓦屋根、化粧スレート屋根、金属屋根、アスファルトシングル屋根)の全てで通気屋根構法が確立されました。
ホールレス構法による長寿命住宅用の屋根が様々な仕様書等に反映され、メンテナンス費がかからなくなり、長期優良住宅が消費者の実質の住宅取得費を軽減させることに繋がることが期待されています。
ホールレス工法のメリット
ホールレス工法のメリットは簡単に以下の通りです。
①排水性
②通気性
③長期にわたる高防水性
④透湿ルーフィングとの併用で排湿性
⑤遮熱性
瓦屋根との組み合わせにより安全・安心な屋根が実現できます。
特に、透湿ルーフィングは耐久性試験において、釘孔が明いていても50年相当の耐久性を有しています。
そのため、瓦、ホールレス工法との組み合わせにより60年のメンテナンス計画が実現可能です。
費用対効果
長期優良住宅屋根の屋根材別メンテナンススケジュールおよび費用比較をまとめました。
上図のメンテナンス計画表から長期優良住宅の屋根を化粧スレート・金属屋根で施工した場合、100年間で、1,300万円となります。
一方、瓦屋根+ホールレス工法であれば、250万円となります。
なんと1,000万円以上の差となります。
壁においても、同様に新築時の壁材の使用を耐久性の高いものにすることで、メンテナンス費を抑えるという考え方が必要です。
メンテナンス費を抑えることで、長期優良住宅のメリットである住宅取得費を削減することにつながります。
まとめ
これから新築をご検討される方は長期優良住宅がコストパフォーマンスが高いと言えます。(長期優良住宅がお勧め)
その長期優良住宅の屋根は瓦屋根+ホールレス工法とすることで、安全、安心、長寿命な屋根となり、なんと約1,000万円も削減できる圧倒的なコストパフォーマンスを実現できます。
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