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パミール屋根のメンテナンス方法とは?今度こそ、正しい選択を!!
お施主さまから、
『太陽光パネルを設置しようと業者さんに頼んだら、
「お宅はパミール屋根だから設置できないよ」と言われました。
よく見たら、屋根の色が白くまだらになっています。
パミール屋根はどうしたらいいですか?・・・』
パミール屋根のメンテナンスについてご相談がありました。
遅くなりましたが、みなさま、こんにちは。
屋根から人の笑顔を作りたい!!!
神清(かみせい)のDr.神谷です。
パミール屋根については、他にもいろいろ話があります。
・隣の化粧スレート屋根とパミール屋根は何が違うの・・・
・10年も経たない内に屋根から何か落ちてくる・・・
・釘に問題があって錆びるので、屋根材が落下するらしい・・・
・塗装業者から再塗装できないと言われた・・・
・太陽光パネルが設置できない・・・
・築5年目にメンテナンスしていないので、補償できない・・・
(こんな話が許されるのでしょうか?)
お施主さまにとって、大切なご自宅を守る屋根です。
とっても不安だと思います。
そこで、~パミール屋根のお勧めメンテナンス方法~をご紹介いたします。
パミール屋根に関しては、何年にもわたって、実態調査、実験棟での比較実験・測定・研究を行ったことがあります。
詳しくは、こちらの記事をご覧ください!
また、はっきりとはご自宅の屋根がパミール屋根かどうかわからない?という方には、ドローン屋根点検がおススメです!
↑パミール屋根は端部が膨らんだり、はがれたりしています。
一方、同じスレート屋根でもコロニアルはこんな感じ。
屋根材の端部の膨らみ・はがれはありません。
屋根に上がることもなく、15分もあれば、簡単にパミール屋根か確認できますよ!
また、「パミール」の見分け方をわかりやすく紹介しているこちらの記事をご覧ください。ポイントは、⇒の縦線の有無です。
調べてほしい方は、お気軽に弊社まで屋根の写真をお送りください。
確認して、ご返事差し上げます。
そもそもパミール屋根とは?
パミール屋根材は化粧スレート系無石綿屋根材(厚さ約5㎜)です。
図面などには、カラーベスト・コロニアル葺きと書いてあることもありますが、実はパミールが施工されていたということも多いです。
屋根の現物で確認してください。
因みに、図面に不燃番号NM-9269と書いてある場合は、その番号はパミールの番号です。
製造販売元は窯業系サイディングのトップメーカーであるニチハ(株)です。
パミールの歴史
・1996年に本格販売開始(約25,000棟/年)
・2009年に販売中止
13年間で撤退した屋根材です。(約300,000棟(推定)のパミール屋根が存在する)
販売エリアは関東・中部・関西・中国・四国まで。
当時はアスベストが入っていない化粧スレートということで、
大手ハウスメーカーさんも含め、数多くの工務店さんが採用した屋根材です。
上は当時の建築雑誌に掲載されていた、パミールの広告です。
パミール屋根の特徴は?
パミール屋根のメンテナンス方法を考える上で、パミール屋根材の特徴を理解しておかなければ、2次被害の可能性もあります。
とにかく、パミール屋根は他の屋根材にはない、特殊な材質となっていますので、要注意です。
無石綿
特徴はなんと言ってもアスベストが入っていないことです。
これはメンテナンスする上では、アスベスト対策を行わなくてもいいので、助かります。
販売当初、発がん性物質のアスベストが入っていないスレート屋根は画期的だったのです!
アスベストは繊維状の物質で、セメントのつなぎ材料としてスレートの踏み割れ防止に貢献していました。
しかし、発がん性物質で社会的課題となっていたため、アスベストの代わりにどんな繊維を使用するのか?各社、研究していたようです。
パミールはアスベスト繊維の代わりにパルプ繊維等を使用しました。
パルプは軽量化、踏み割れ防止には効果があるのですが、水分を吸いやすい特徴があります。
この高い吸水性(きゅうすい)がパミール劣化を引き起こす要因です。
メンテナンスする上でも要注意!!
パミールの「パ」はパルプの「パ」から由来しているらしい・・・
湿式製法
同じ化粧スレートであるカラーベスト・コロニアルとの大きな違いは製造方法です。
カラーベストは乾式製法。
一方、パミールは湿式製法(抄造法)、この違いが2つ目の問題点。
抄造法(しょうぞうほう)・・・和紙を造るように、紙すきの製法で数層に重ね上げて成形。
その後、プレス成形されていますが、この層は素材の中に残存します。
この層に沿って、パミールが層状にはがれることになります。(6層あります。)
昔は、化粧スレート屋根材は数社生産していましたが、現在はKMEW(ケイミュー)1社だけです。
KMEW以外はすべて湿式製法だったので、化粧スレートの湿式製法は無理があったと言われています。
パミールの劣化の要因をまとめました。
★吸水率が高い(わかりやすく言うとスポンジ)
・屋根での施工状態では10%程度。
・24時間吸水試験では24%程度。
吸水率とは、水分の含みやすさを表します。
JIS規格では、28%以下となっていますので、規格内ですが、これが劣化の最大原因です。
カラーベスト・コロニアルと比較すると、2倍以上の高い吸水性を示しています。
★層状構造(6層のミルフィーユ構造)
劣化が進むと、層状間に水分を吸い込むため、加速的に劣化が進んでしまいます。
パミールの端部から水分を吸い込みます。
★塗装が弱い
・表面塗装の紫外線劣化が早いです。
・裏面処理が行われているカラーベストに比べて、パミールは裏面が吸水しやすいです。施工時に、パミール同士の重なり部分の裏面から水分を吸い込みます。
★★パミール屋根はスポンジのように水分を含んでいるのでご注意ください★★
パミール屋根の劣化状況!
代表的な築10年経過したパミール屋根の劣化状況は以下の通りです。
初期はどうだったのか?
同じ物件の玄関上はほとんど劣化していませんでした。
パミールの新築当初は、こんな感じです。(カラーベストみたい。)
なぜ、この部分が劣化していないかというと、玄関の上には2階の外壁があり、日射と放射冷却(ほうしゃれいきゃく)を受けにくい場所だったからです。
一方、大屋根を見てみると驚きます。
層状剥離(そうじょうはくり)が進行しています。
大屋根(2階屋根)を見てみると著しくパミール屋根が劣化していました。
屋根の方角(日射、放射冷却の影響)によって、はがれ具合が異なっています。
★東・南・西面・・・表面が小さくはがれている。
★北面・・・基材自体がなくなるほど、はがれが進んでいる。
さわるとかさぶたのように、ポロポロめくれる。
同じ物件で、同じパミール屋根で、こんなに違っています。
他の物件でのパミール屋根の劣化状況の動画を見たい方はこちらをどうぞ。
メンテナンスするときには、この現象を理解しておく必要があります。
メンテナンス方法は?
化粧スレート屋根(カラーベスト)の10年目のメンテナンス方法としては、メンテナンス費の安価な再塗装が主流です。
それでは、パミール屋根ではどうか?
パミール屋根の経年での劣化も考慮しますと・・・
再塗装・・・✖ NG
再塗装はできません。
再塗装の品質としては、屋根材表面との密着性が重要です。
パミール屋根表面を高圧洗浄できれいする必要があります。
しかし、動画「スレート屋根の実態」でも出てくるように、指で触るだけでボロボロとはがれてしまう強度しかなく、高圧洗浄すると崩壊してしまうので、洗浄ができないのです。
洗浄せずに再塗装しても1,2年も持ちません。
結果、再塗装はNGです!!
つづいて、再塗装の次に安価な補修方法として、カバー工法があります。
よくネットでも出ていると思いますが、果たして大丈夫なのか・・・
カバー工法・・・アスファルトシングル葺き ▲お勧めできない
まず、カバー工法のアスファルトシングル葺きについて。 (▲お勧めできない)
現状のパミール屋根は水分が含んだ状態となっているからです。
屋根の大きさが100㎡の場合(普通の住宅イメージ)、どれぐらいパミール屋根材が水分を吸っているか・・・
答・・・約200kgにもなります。
カバー工法では、パミール屋根にルーフィング(防水紙)をかぶせて、その上にアスファルトシングルを葺きます。
つまり、水分を含んだスポンジを防水紙で覆って、その上にアスファルトシングルでカバーすることになります。
結果、パミール屋根は乾燥せず、水分は残ったままとなります。
そのパミール屋根の中をアスファルトシングルを留めるビスが貫通するので、2次被害の危険もあります。
屋根材は違いますが、アスファルトシングル葺きにカバー工法をした現場での屋根の結露現象が観察されました。
詳しくはこちらの記事をご覧ください!
パミール屋根でも、同様な結露現象が間違いなく発生します!
その残っている水分がビスで結露するため、ビスの錆発生リスクやビスを伝わり野地合板を高含水にするリスクがあります。
(パミール釘はこの水分で著しい錆が発生しているので、同じリスクとなります。)
パミール釘が錆びて、釘が効いておらず、パミール屋根材を手で簡単に剥がせる動画はこちら。
安価だからと言っても、正直、お勧めはできません。
さらに、カバーしたアスファルトシングルのメンテナンスも検討しておく必要があります。
次回メンテナンス時期・・・10~15年後にどうするの?
カバー工法・・・金属横葺 ▲お勧めできない
カバー工法の金属横葺について。 (▲お勧めできない)
しくみはアスファルトシングルと同じで、パミール屋根が乾燥しないからです。
金属屋根を留め付けるビスがステンレスとは言え・・・。
それでも、心配は残ります。
さらに、カバーした金属横葺きのメンテナンスも検討しておく必要があります。
次回メンテナンス時期・・・10~15年後 に塗装が必要です。
それでは、どうやってメンテナンスするの?
まだ、後、20~30年はお住まいになると思います。
その間、屋根にこれ以上、お金を使いたくないですよね。
お得なメンテナンスは、葺き替えです!
葺き替え・・・コロニアルグラッサ 〇 OK
パミール屋根をはがしての葺き替えについて。(〇お勧め)
既存パミール屋根をはがして、新品の化粧スレート・コロニアルグラッサに葺き替えます。
費用、デザイン、性能的にはバランスがいいです。
通常のコロニアルクァッドは安価ですが、再塗装が10年後に必要となるので、お勧めできません。(もう、屋根メンテナンスにお金を掛けたくないですよね・・・)
次回メンテナンス時期・・・20~30年後となります。
葺き替え・・・高耐久の金属横葺 〇 OK
パミール屋根をはがしての葺き替えについて。(〇お勧め)
既存パミール屋根をはがして、新品の金属横葺に葺き替えします。
できれば、グレードの高い塗膜がお勧めです。(フッ素塗膜など)
これ以上、屋根にメンテナンス費を掛けたくないですよね!
次回メンテナンス時期・・・20~30年後 となります。
葺き替え・・・瓦 △ 微妙
重量が重くなるので、躯体の確認が必要です。(△ 微妙)
一度、瓦にすれば、その後のメンテナンスはほとんど必要ありません。
その分、メンテナンス費が浮いてくるのでお勧めしたいのですが・・・
また、屋根・建物形状が複雑ですと、各取り合いの納まり検討が必要となります。
次回メンテナンス時期・・・30~50年後
葺き替え・・・ ルーガ(樹脂セメント屋根材) △ 微妙
ルーガなど厚形のセメント屋根材は重量的には問題ありません。
耐久性も問題ないとメーカーは言っていますが、パミールの件もありますので、10年程度の新材料は、やめておいた方が賢明かも?
また、こちらも複雑な屋根ですと、各取り合い部の納まり検討が必要となります。
次回メンテナンス時期・・・20~30年後??
【まとめ】 パミール屋根のメンテナンス・・・お得なのは、葺き替えです!
・パミール屋根はスポンジのように水分を含む特徴の屋根材です。
・その水分が原因で、パミール表面の層状剥離や釘の腐食を引き起こしています。
・メンテナンスは、カバー工法はお勧めできません。
・パミール屋根をはがして、新しい屋根材に葺き替えしましょう!
・新しい屋根材としては、安心・高耐久な屋根を選びましょう!
・今後のメンテナンス費も確認して、屋根材を選びましょう!
選択を間違えて、再び、悩まないでくださいね~!
愛知でお困りの方は、お気軽にご相談くださいね~!(お電話でも大丈夫ですよ!)
神清からのお願い
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