住宅は遮熱材だけでは、寒いですよ!
遮熱材による新築住宅をお考えのあなた。
住宅の断熱・遮熱性能の違いがよくわからなくて、頭の中には、???が多いのではないでしょうか?
遮熱材を魔法の新素材のように説明されるので、ついつい魅力的に感じてしまいますよね!
また、断熱材/遮熱材を比較しようにもそれぞれが異なる主張をしているので、何を信じていいのか?
実際、建築(屋根)業界にいる私も、一時、遮熱材は新素材としてこれからの住宅に有効ではないか?と思っていました。
自宅を検討する上で、屋根面には遮熱シートを使用しました。(もちろん、屋根・壁・床には断熱材を使用しています。)
遅くなりましたが、屋根から人の笑顔を作りたい!!!がモットーの神清(かみせい)のDr.神谷です。
私は以前、屋根の遮熱性能について、大学や愛知県と一緒に研究・実験・測定を行い、そこで、いろいろと住宅の遮熱性、断熱性について勉強しました!
また、工務店さんからの依頼で、実棟の遮熱住宅について、温度測定・シミュレーション検討を行ったこともあります!
そんな私がお伝えしたいことがあります!
それは・・・
沖縄以外では断熱材なしの遮熱住宅はやめた方がいいです!!!
以下、簡単にその理由をご紹介いたします!
遮熱材とは?
ここでいう遮熱材とは、アルミニウム箔やアルミニウム蒸着、アルミニウムフィルムなどを表面に施したシートまたは、緩衝材(間に空気層があるプチプチシート)を指しています。
これらはアルミ表面の反射率が高いことを利用して、熱放射による伝熱を防ぐというものです。
実際の現物はこの写真のようなアルミシートです。
反射率が高いものでは、98%以上とうたっている商品もあります!
ここで、遮熱シートを理解してもらうために少し理科的なお話をします。(読みたくない人は流してください。)
熱の移動
熱の伝達には、3つの形態があります。
(1)熱伝導:固体中を温度差によって、熱が伝わること。(伝導)
(2)熱伝達:流体と固体の間で熱が伝わること。(対流)
(3)熱放射:固体表面間を電磁波として熱が伝わること。(放射)
ここで、遮熱材が効果を発揮するのは、(3)の熱放射に対してです。
上図の高温面T1と低温面T2との間では、空気層があるので熱伝導はおきません。
熱伝達と熱放射で熱が伝わります。
低温側に遮熱材が入ると高温側からの放射熱を遮熱材で反射することができます。
遮熱材の資料では、放射熱が75%を占めているので、熱をほとんど遮断できると書いてあります!
実際はどうでしょうか?
シミュレーション結果
遮熱について、シミュレーション計算を行っていただきました!
屋根に遮熱材を使用したときのシミュレーションです。
外側から屋根材、空気層、遮熱材、野地板、断熱材、室内です。
屋根材表面温度を80℃、室内温度を30℃とします。
左は遮熱材なしの場合の計算結果で、室内表面温度は31.77℃となります。
右は遮熱材ありの場合の計算結果で、遮熱材の反射率が80%の場合、室内表面温度は31.62℃。
遮熱材の反射率が98%の場合、室内表面温度は31.51℃。
この計算結果をもとに、遮熱材の断熱性能を検討します。
遮熱材の代わりに断熱材を入れた時、同じ室内表面温度となるには、断熱材がどの程度の厚みとなるのか検討しました。
つまり、この遮熱材の断熱性能をわかりやすく表現するために、断熱材の厚みで換算しました。
高性能な遮熱材(反射率98%)でも、断熱材15㎜厚相当ということがわかりました。
(蒸着タイプなどの遮熱材(反射率80%)だと、さらに薄くなり断熱材9㎜厚相当)
残念ながら、シミュレーション結果から遮熱材の断熱性能は高くないことがわかりました。
現在の住宅において、断熱材の厚みは、壁では100㎜、屋根では150㎜程度入れることになっているため、遮熱材では15㎜厚相当となるので、1/10程度の性能しかないことになります。
続いて、実棟での測定結果を見てみましょう!
遮熱住宅の実棟測定結果
遮熱住宅において、1年間に渡り、温熱環境を測定しました。
愛知県内の木造2階建て住宅で行いました。
屋根・天井・壁・床下に遮熱材を入れた住宅でした。
測定機器も屋根・壁・室内・床下・外気などを測定しました。
細かいデータは割愛しますが、1年間の測定からわかったことは以下となります。
夏場はある程度、遮熱効果はある。
冬場は寒い。(室内温度が10℃を下回ることもある。)
無断熱・無遮熱住宅よりは夏・冬とも改善する。(無断熱・無遮熱住宅はもっと寒い)
寒い:無断熱住宅<遮熱住宅<<<断熱住宅:暖かい というイメージです!
費用対効果は断熱住宅に比べて、悪い。
シミュレーション結果同様、実棟測定によって、遮熱住宅が寒い(遮熱材の断熱性能が低い)ことが確認できました。
実際の遮熱住宅で見かけた不安になる現象
断熱材に比べて、遮熱材の性能が低いことを計算、測定でも示す結果となりました。
しかし、これでも遮熱ファンの方は、遮熱材の性能を断熱材と比較すること自体がおかしい(基準が違うのだ)とか、施工に問題があったとか言われると思います。
遮熱ファンの方が遮熱住宅で満足される(家の作りは、夏をむねとすべし:徒然草を引用して)なら、そういう考え方もあるのかな?と思うようにしています。
しかし、夏の熱中症も深刻ですが、冬のヒートショック(風呂場・脱衣室が寒く、温度差が大きい現象)による家での死亡率は交通事故の死亡率よりも高くなっていますので、遮熱ファンの方、ご注意くださいね!
最後に、わかりやすい比較現象がありますので、ご紹介いたします。
冬の積雪時、遮熱住宅の屋根を見るとその性能が分かってしまいます。
「無断熱住宅と遮熱住宅の屋根は雪が融ける」という現象です!
手前・右側の屋根には積雪が残っているのに、遮熱住宅の屋根はきれいに雪が融けています。
断熱性能が低いので、室内の暖房熱が屋根の雪を融かしているのです。
つまり、冬、断熱性能が低く、室内の熱は逃げ、外気の寒さは入り込む、とても寒い家となっていることを表しています。
室内の熱が逃げるということは、燃費がとても悪い住宅ということです!(車だったら、必ず燃費を比較しますよね!)
残念ながら、住宅では、魔法瓶のように遮熱材の外側を真空の空間とすることはできません。
遮熱ファンの方のオカルト的な話術、プレゼンにだまされないようにしてください!
住宅の2020年断熱義務化が近づきますと一層、断熱嫌い、遮熱ファンの方が増えると予想されます。
私も一時期、遮熱は新技術と惑わされたことがありますので、その気持ちはよくわかります。
徹底的に、実験、測定、検討を行った結果、遮熱材のみの住宅はやめた方がいいという結論に達しました!
断熱材+遮熱材の住宅は?
ただし、断熱材+遮熱材の住宅はオーバースペックですが、ありだと思います。
現在の省エネ基準を満たす厚みの断熱材(厚い断熱材)に、遮熱材を付加するならOKです!
しかし、遮熱材で見かけるのが、4㎜~8㎜程度の断熱材(熱伝導率は低い高性能な材料?)の両表面が遮熱材で仕上げてあるものです。
断熱は材料の性能(熱伝導率の低さ)だけでなく、厚みに大きく影響します。
4㎜~8㎜程度の断熱材(薄い断熱材)では、はっきり言って断熱性能は低いですので、やめた方がいいですよ!
さらに、8㎜程度の緩衝材(プチプチシート)では断熱材とは言えませんので、ホント、NGですよ!!
まとめ:遮熱住宅は冬、寒い!やめた方がいい!
遮熱材と断熱材の性能比較をシミュレーションした結果、遮熱材は断熱材の15㎜厚相当しか、性能がないことがわかりました。
これから遮熱住宅は、現在の住宅の断熱性能で考えますと1/10程度の性能となりますので、とても寒い住宅です!
積雪時、遮熱住宅の屋根だけが雪解けするという断熱性能が悪いことがわかりやすく観察できます!
何かわからないことがありましたら、お気軽にお問い合わせください!
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