屋根塗装後に縁切りが必要な理由とは?費用や方法を徹底解説

Dr.神谷
Dr.神谷
  • みなさま。こんにちは。
    屋根から人の笑顔を作りたい!!!神清(かみせい)のDr.神谷です。

    弊社は、高浜市・半田市にある創業150年老舗三州瓦の生産・販売・工事を行っている会社です。
    年間200棟以上の雨漏り調査・修理を行っています。
    ※建築業界誌「日経アーキテクチュア」の連載記事「新次元!雨漏り対策」を執筆。

本記事はこんな人にお勧めします。

  • 屋根塗装後に縁切りが必要な理由を知りたい
  • 屋根塗装後の縁切りの費用や方法を知りたい

この記事で伝えたいこと

この記事は、「屋根塗装後に縁切りが必要な理由を知りたい」「屋根塗装後の縁切りの費用や方法を知りたい」という方に向けて書かれています。

雨漏りが起こる原因のひとつに、屋根の再塗装後の縁切り不足があります。
縁切りは屋根塗装後のとても重要な作業ですが、怠ってしまう業者が沢山あります。

本記事では屋根塗装後の縁切りについて、詳しく解説していきます。縁切りの重要性や費用・方法などを詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてくださいね。

お問い合わせはこちら

縁切りって何?

縁切りとは、化粧スレートを再塗装したときに、上下の重なり部分が塗料で貼り付いて隙間を埋めることを防ぐために、塗料が完全に乾く前にカッター・スクレーパーなどを差し込んで、塗料を切る作業のことです。

屋根=雨漏りというイメージがあるため、一般の方は屋根材同士の見た目の隙間を塗料でふさぐことがよりいい仕上がりだと思う人がほとんどです。

しかし、この屋根塗装で隙間をふさぐと防水性が高まるという考え方は完全に間違っています。

塗料乾燥後にふさいでいる塗膜を切って、雨水の排水経路となる上下の隙間を確保する必要があります。

 

屋根塗装後に縁切りしないとどうなる?

屋根塗装後に縁切りしないと数年後、屋根全体で広範囲に雨漏りします。(スレート屋根の雨漏り原因第1位)

 

ここで、屋根塗装後に縁切りしないと雨漏りする仕組みについて解説します。

スレート屋根には、横方向にスレート同士を突き付けた「継ぎ目」とスレート屋根の意匠性を高めるために設けられた「スリット」と呼ばれる2種類の縦方向の溝が生じています。

屋根塗装時、縦方向の溝が塗料で完全にふさがれることはなく、隙間やピンホールが発生しています。

その後、雨が降ると雨水が溝の隙間・ピンホールに浸入し、毛細管現象で左右にあるスレートの裏面へ拡がっていきます。

スレート屋根の上下方向にあるスレートの重なり部の隙間に入り込んだ塗料は上下のスレートに貼り付いて、その隙間をふさいでしまうため、スレート裏面に浸入した雨水は排水されずに溜まってしまいます。

雨水が滞留する部分には、スレートを留め付けているくぎがあり、そこから屋根下地へ伝わり、経年で雨漏りするという仕組みです。

 

スレートのスリットがない種類でも、上写真のようにスレート継ぎ目から左右のスレートの裏面に浸入し、毛細管現象で拡がっていきます。(元々赤色に黒色の屋根塗装したスレート屋根)

 

一方、屋根塗装していないスレートの継ぎ目部分の雨水浸入痕は拡がっていません。

上下方向にあるスレートの重なり部の隙間がふさがっていなければ、毛細管現象で浸入した雨水はそのまま排水されるので、雨水が滞留せず雨漏りは発生しないのです。

 

スレート屋根塗装後の縁切り作業の様子を動画で紹介しています。

 

縁切りが行われるタイミングは?

縁切りは、屋根塗装工事が終わって塗料が乾いた後、その上を歩行できるようになってから行います。

ただし、長期間経過して塗料が完全に硬化した段階で行うと塗料が固まっているので、縁切り作業が大変になってしまいます。

足場が設置してある間に行うので、塗装後数日間で行うことが一般的です。

季節によって、塗料の上を歩行できるタイミングが変わります。

乾きが悪い季節で、翌日、屋根に上がって歩行すると塗装面を傷つけてしまうので注意しましょう。

縁切りの作業時間は屋根全面を手作業で行うため、半日~1日程度かかります。

 

屋根塗装における3種類の縁切り

屋根塗装の縁切り方法としては、3種類がありますので、それぞれの方法について紹介します。

  1. 手作業による縁切り工法
  2. 樹脂製スペーサーによる縁切り工法
  3. 金属製スペーサーによる縁切り工法

 

①手作業による縁切り工法

手作業による縁切り工法はスレート製造メーカーから推奨されています。

大手ハウスメーカーの塗装メンテナンスでも手作業の縁切りが行われているようです。

●メリット

手作業による縁切り工法は、スレート屋根の塗装前の状態を維持できるので、その後に塗装したことが原因の不具合が発生することはありません。

●デメリット

塗装職人は塗装後、別日で縁切り作業を行う必要があります。

縁切り作業の正確さは職人の気質でしか担保されず、不十分な箇所、やり残しの箇所が発生するリスクがあります。(縁切りのやり残しは確認が難しい。)

塗装する度に、手作業の縁切りが必要です。(その度に費用が発生する)

 

②樹脂製スペーサーによる縁切り工法

塗装職人による縁切り作業のバラツキを心配しなくてもいいようにと考えられた工法です。

予め、スレート屋根の上下方向にあるスレートの重なり部の隙間に樹脂製スペーサーを入れて、隙間を大きくして、塗装したときに塗料がくっつかないようにする工法です。

塗装後に縁切りしなくても、上下の隙間が塗料で埋まることはなく、塗装後の雨漏りをふせぐことができます。

●メリット

樹脂製スペーサーの有無が塗装後でも確認できます。(樹脂製スペーサーは入れたままとなる)

樹脂製スペーサーが入っているところは確実に縁切り効果があります。

樹脂製は安価なため、1度目の塗装時のイニシャルコストは縁切りと同等です。

●デメリット

樹脂製スペーサーは完全につぶれた状態でも2mmの厚さがあります。

スレート製造メーカーは、樹脂製スペーサーを入れておくと踏み割れのリスクがあるため、推奨せず、注意喚起を行っています。

屋根を健全にするために屋根塗装のメンテナンスを行うのに、スレート屋根が踏み割れしやすくなる工法はかえって、屋根が悪くなるリスクがあります。

樹脂製で紫外線劣化するため、2度目の塗装時に撤去して、新規を入れ替えるのに手間がかかります。(費用が発生する)

樹脂製で燃えるため、火災時の延焼リスクがあります。

 

樹脂製スペーサー部分のスレートの踏み割れが原因で、スレートが落下した事例を動画で紹介しています。

踏み割れが原因でスレートが落下し、人や車にあたるリスクは軽視できないですね。

 

③金属製スペーサーによる縁切り工法

樹脂製スペーサーの踏み割れ問題を改善した縁切り工法です。

金属製スペーサーは金属特有のスプリング効果を取り入れており、人が載ったときには約1mm程度につぶれ、人が載らないときは復元してスレートの隙間を確保できる特徴があります。

スレート製造メーカーの耐風仕様で使用する耐風クリップの厚みが1.5mmであるため、それよりつぶれるので踏み割れの心配はありません。

●メリット

スペーサーが起因のスレートの踏み割れをふせぐことができます。

ステンレス製のため、耐久性が高く、2度目の塗装時にも使用できます。(費用がかからない)

紫外線劣化・火災の不安もありません。

●デメリット

1度目の塗装時には、手作業の縁切り・樹脂製スペーサーの縁切りに比べてイニシャルコストがかかります。(約2~5万円アップ)

 

2度目の塗装時に使用できるので、トータルではコストアップはないようです。

踏み割れ対策した金属製スペーサーが手作業の縁切りよりも安心できると思います。

 

 

屋根塗装における縁切り費用

屋根塗装における①手作業の縁切り工法の費用は、1棟あたり5~6万円前後が相場となります。

②樹脂製スペーサー工法も同じ程度の費用です。

③金属製スペーサー工法は8~10万円前後が相場だと思います。

 

カッターやスクレーパーなどの道具を使って、スレート1枚1枚を手作業で縁切りするので、時間や費用がかかりますが、雨漏りをふせぐ大切な作業です。

縁切り費用を惜しんで雨漏りしたら、補修費用は10倍以上になるので必ず依頼しましょう。

 

屋根塗装後の縁切り不足は大きな雨漏りの原因

屋根塗装の縁切り不足は、スレート屋根の雨漏り原因第1位になっています。

雨漏りの特徴としては、広範囲に発生する雨漏り(屋根全体、けらば全体、棟全体等)が発生することが多いです。

小屋裏に入って確認すると野地合板に雨染みが発生し、ボロボロに劣化していることがあります。

部分補修では対応できず、葺き替えする必要がありますので、絶対に避けたい雨漏りです。

 

縁切り作業が工程に入っているのか確認しよう

縁切りでトラブルを避けるためには、縁切り作業が工程に入っているのかを確認しておきましょう。

口約束だけでなく、見積書に記載されていることを確認すべきです。

見積書に「縁切り」と記載されていても、タスペーサーを使用する業者もいますので、作業後に屋根を確認したり、施工写真を提出してもらいましょう。

 

縁切りが不必要な屋根もあります

屋根の再塗装を行った場合、基本的には縁切りが必要です。

ただし、スレート屋根の状態によっては、縁切りが不要なケースがまれにあります。

  • 経年劣化でスレート屋根が反っている屋根

 

ただし、屋根全体のスレート屋根が反っていることはほとんどないので、基本的には縁切りを依頼しましょう。

 

金属製スペーサーについて詳しく知りたい

金属製スペーサーは(株)ヨネキンが製造している商品です。

REEV SPACER(リーヴスペーサー)というステンレス製(SUS304)のスペーサーです。

詳しくはこちらのQRコードを読むと、製品動画が見ることができます。

 

どの縁切り工法がいいの?

今回紹介した3つの縁切り工法(手作業、樹脂製スペーサー、金属製スペーサー)の比較をまとめてみました。

縁切り工法の種類手作業の縁切り樹脂製スペーサー金属製スペーサー
概要皮スキ・カッター等で重なり部の塗料を切る樹脂製スペーサーを重なり部に差し込んで隙間を確保する金属製スペーサーを重なり部に差し込んで隙間を確保する
材質樹脂製(ポリアセタール)ステンレス製(SUS304)
厚み最厚部2mm0.5mm
荷重なしのスレート隙間約1~2mm約2.5mm約2.5mm
荷重時のスレート隙間約0mm約2.5mm約1.3mm
メリット塗装前の状態を維持できる・樹脂製スペーサーは入れたままなので有無の確認できる
・スペーサーの材料代は安価
・金属製スペーサーは薄く、人が載るとつぶれるので踏み割れを防ぐ
・劣化しない
・2度目の塗装時にも効果あり
デメリット職人によってはやり残しが発生(やり残しの確認が困難)・樹脂製スペーサーは厚いので踏み割れのリスクがある
・不燃ではない
・紫外線劣化する
イニシャルコストが高い
費用目安(材工共)500円/㎡500~700円/㎡700~1000円/㎡
2度目の塗装時費用目安500円/㎡500~700円/㎡0円
スレートメーカーの推奨推奨踏み割れの注意喚起

 

それぞれ一長一短がありますが、「縁切りなし」よりはどれかを採用されることをオススメします。

塗装後の雨漏りに関して、保証してくれる塗装屋さんはいないので、自宅のスレート屋根は「縁切り・スペーサー」で守りましょう。

 

縁切りされているのか不安に感じたら業者に相談しよう

もしも縁切りされているのかどうかが不安になった場合は、専門業者に依頼して点検をしてもらうようにオススメします。

屋根の点検で縁切りされていない場合は、小屋裏を点検してもらいましょう。

ただし、小屋裏への雨漏り痕が発生するのは、塗装後すぐではないこともあります。

塗装後、間もない点検の場合は、その後に再度、屋根点検してもらいましょう。

 

弊社では、写真等による判断も行っており、気軽に相談を受け付けているのでお問い合わせください。

 

【まとめ】屋根塗装後は基本的に縁切りが必要です

縁切りとは、化粧スレートを再塗装したときに、上下の重なり部分が塗料で貼り付いて隙間を埋めることを防ぐために、塗料が完全に乾く前にカッター・スクレーパーなどを差し込んで、塗料を切る作業のことです。

屋根塗装後に縁切りしないと数年後、屋根全体で広範囲に雨漏りします。

スレート製造メーカーは、樹脂製スペーサーを入れておくと踏み割れのリスクがあるため、推奨せず、注意喚起を行っています。

屋根を健全にするために屋根塗装のメンテナンスを行うのに、スレート屋根が踏み割れしやすくなる工法はかえって、屋根が悪くなるので、やめておきましょう。

手作業の縁切り作業もしくは、金属製スペーサーを入れて縁切りすることがオススメです。

 

弊社では、写真等による判断も行っており、気軽に相談を受け付けているのでお問い合わせください。

お問い合わせはこちら
LINEでお問い合わせ

 

この投稿は役に立ちましたか? 役に立った 役に立たなかった 17 人中 17 人がこの 投稿 は役に立ったと言っています。

神清からのお願い

記事を最後まで読んでいただきありがとうございます。

お客様の率直な感想をいただくため「役にたった」「役に立たなかった」ボタンを設置しました。

私たちは、日々屋根にお困りのお客様にとって必要な情報をお伝えしたいと考えております。今後のご参考にさせて頂きますのでご協力よろしくお願いいたします。

この記事に関連するサービスメニュー

関連工事メニュー

instagram
屋根の見守りラジオ

関連記事

この記事を読んだ人にオススメの記事