目次
屋根の勾配(こうばい)って何?
屋根の勾配とは、傾斜(けいしゃ)のある屋根の傾きの大きさを示しています。
上図は4寸勾配(4すんこうばい)と呼ばれる屋根の傾きとなります。
ここで、寸(すん)とは、長さの単位で、1寸とは、約30.303mmのことです。
4寸勾配とは、水平に1尺(10寸)に対する垂直方向の長さ4寸で表される流れの角度のこととなります。
角度°で表すと4寸勾配=21°48′05″となります。
4/10と分数表示することもあります。
屋根の勾配について詳しくはこちらの記事で解説しています。
一般的な屋根勾配は?
一般的な屋根勾配は、3寸~5寸勾配と言われています。
この屋根勾配が採用されている理由としては、水はけ・デザイン性・コスト面などで利点があるからです。
防水性能の関係で屋根材によって、推奨している屋根勾配があります。
どの屋根材を選ぶことができるのが3~5寸勾配となり、オススメです。
屋根の勾配はどうやって調べる?
屋根の勾配の調べ方を紹介します。
図面の矩計図(かなばかりず)や立面図の屋根面の上に屋根勾配が記載されている場合が多いので、調べてみましょう。
実際の屋根面で調べる場合の求め方をいくつか紹介します。
●水平100㎝のときの高さを求める
水平100㎝で高さが40㎝だと、4寸勾配となります。
●測りやすい長さを測定して、計算で求める
勾配=高さ÷距離×10
●屋根面の角度を測定する
屋根の端部など屋根下地の角度をスマホのアプリで計測して屋根勾配の角度を測定します。
その角度から当てはまる勾配を求めます。
3寸=16.7° 4寸=21.8° 5寸=26.6°
詳しくは勾配と角度の一覧表をご覧ください。
勾配 | 角度 |
---|---|
0.5寸 | 2.9° |
1寸 | 5.7° |
1.5寸 | 8.5° |
2寸 | 11.3° |
2.5寸 | 14.0° |
3寸 | 16.7° |
3.5寸 | 19.3° |
4寸 | 21.8° |
4.5寸 | 24.2° |
5寸 | 26.6° |
5.5寸 | 28.8° |
6寸 | 31.0° |
7寸 | 35.0° |
8寸 | 38.7° |
9寸 | 42.0° |
10寸(矩勾配/かねこうばい) | 45° |
緩勾配(かんこうばい)の屋根のメリットとデメリット
屋根が緩勾配であった場合のメリット・デメリットを紹介します。
緩勾配屋根とは、0.5~2.5寸が一般的です。
【メリット】
- 台風や強風の影響を受けにくい
- 屋根面積が少なくて済む(伸び率がほとんどない)
- 落雪被害が少ない
【デメリット】
- 傾斜が緩いため、水はけが悪く雨漏りにつながることがある
- 汚れがたまりやすく、劣化や美観の低下につながりやすい
- 小屋裏に高さが取れない
- 施工できない屋根材がある
緩勾配屋根は屋根面積が少なくなるので、屋根工事費用が安価となるメリットがあります。
一方で、水はけが悪くいので雨漏りリスクが高いことと屋根材の劣化リスクが高いデメリットがあります。
また、緩勾配屋根は金属屋根の縦葺きしか施工できないこともデメリットです。
とくに、0.5寸勾配は2.51°とわずかな傾きしかありません。
陸屋根・屋上防水ですと防水層を施工し、くぎ・ビスなどで防水層にあなを開けることは厳禁です。(陸屋根の標準的な勾配は0.1寸勾配/陸屋根も排水のために水勾配あり)
一方で、わずかな勾配がつくと縦葺きを設置するためのくぎ・ビスで防水シートにあなをあけてしまうことは大きな雨漏りリスクとお考えください。
急勾配(きゅうこうばい)の屋根のメリットとデメリット
屋根が急勾配であった場合のメリット・デメリットを紹介します。
急勾配屋根とは、6~寸が一般的です。
【メリット】
- 雨水と一緒に汚れも流れるため、美観維持に良い
- 積雪時に雪が積もりにくい、または落ちやすい
- 小屋裏が高く取れる(収納スペースにすることができる)
【デメリット】
- 屋根面積が大きくなる(伸び率が大きい)
- 施工時・メンテナンス時に屋根足場が必須となる
- 施工時・メンテナンス時の作業性が悪く、費用が割高となる
- 台風や強風によるダメージを受けやすい
急勾配屋根のメリットは小屋裏空間が大きくなるため、小屋裏を有効利用する場合には検討してもいい屋根となります。(利用しないならやめた方がいいです。)
デメリットは屋根足場がないと屋根に登ることができず、しかし、屋根足場があるため作業効率が極端に悪くなります。
屋根面積が大きくなること、屋根足場が必要となること、施工時・メンテナンス時の費用が割高になることなどコストアップ要因ばかりなので、オススメできません。
並勾配の屋根のメリットとデメリット
屋根が並勾配であった場合のメリット・デメリットを紹介します。
並勾配屋根は3~5.5寸となります。
【メリット】
- 雨漏れがしにくい
- 工事費用や手間が標準的であり、計算がしやすい
- 屋根材の使用制限がない
【デメリット】
- 特になし
並勾配屋根のメリットは屋根材の使用制限がなく、雨漏りのリスクも特別高くありません。
工事費用も標準的であり、メンテナンス性もいいので、割増などはありません。
デメリットはありません。
屋根勾配の理想は?
緩勾配、急勾配屋根のリスクを考えると何か特別な理由がなければ、並勾配である3寸~5.5寸勾配がいいと思います。
3寸以上であれば、瓦、スレート、シングル、金属屋根と様々な屋根材から選ぶことができます!
30年後に、違う屋根材へ葺き替えることもできます。
強いて限定すると建物のデザイン・トータルコストも考慮に入れて4寸勾配が理想だと思います。
3寸の方が安価にはなりますが、屋根が薄く見えるからです。
屋根材ごとに必要な勾配の最低値
屋根材の種類・形状によって、屋根材ごとに設置するのに必要最低勾配が定められています。
- 金属屋根 立平葺き 0.5寸勾配
- 金属屋根 横葺き 3寸勾配
- 住宅用化粧ストレート 3寸勾配
- 瓦屋根 (標準タイプ) 4寸勾配
- 瓦屋根 (緩勾配タイプ) 3寸勾配
- 樹脂繊維セメント 3寸勾配
屋根材の必要最低勾配を守らないと雨漏りしたときに屋根材メーカーの保証を受けることができません。
また、屋根材の下に使用する防水シートも一般的には、3寸~勾配となっているので、0.5~2.5寸勾配立平葺きで雨漏りした場合は、防水シートメーカーの対応も期待できないと言えます。
雪対策に必要な屋根の勾配
傾斜によって落雪させる屋根を「自然落雪式屋根」と言って、屋根の急勾配で落雪させる考え方があります。
屋根の傾斜によって落雪させるためには、勾配が3/10以上必要となります。
積雪対策は、その地域の降雪量によって、それぞれの地域で適した屋根仕様が考えられています。
北海道などでは無落雪屋根もあります。
ときどき降雪がある地域では、雪止を設置して、落雪事故を防いでいます。
その地域で昔から採用されている雪対策用の屋根勾配を採用されることが無難だと思います。
【まとめ】それぞれの特徴を知って勾配を決めよう
屋根の勾配とは、傾斜(けいしゃ)のある屋根の傾きの大きさを示しています。
緩勾配0.5~2.5寸、並勾配3~5.5寸、急勾配6~寸と主に3つに分類でき、メリット・デメリットを紹介しました。
緩勾配のメリットは初期費用を安価にでき、急勾配のメリットは小屋裏空間を活用できることです。
緩勾配屋根は雨漏りリスク・劣化リスクがあり、急勾配屋根は維持管理も含めてコストアップになるため、オススメは並勾配となります。
それぞれの特徴を知った上で、自分のイメージにあった屋根の勾配を決めるようにしましょう。
屋根に関してお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。
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