目次
- 片流れ屋根とは?特徴と人気の理由を解説
- 片流れ屋根のデメリットその1:雨漏りリスクが高い
- 片流れ屋根のデメリットその2:風雨の影響を受けやすい構造
- 片流れ屋根のデメリットその3:換気しにくい
- 片流れ屋根のデメリットその4:結露が起こることも
- 片流れ屋根のデメリットその5:大量の雨が流れ落ちる
- 片流れ屋根のデメリット【雨漏り】の解消法その1:透湿ルーフィングを巻く
- 片流れ屋根のデメリット【雨漏り】の解消法その2:けらば部にシール材付きけらば水切りを使う
- 片流れ屋根のデメリット【換気不足】の解消法:小屋裏換気を多くする
- 片流れ屋根のデメリット【湿気・結露】の解消法:野地面通気+透湿ルーフィング
- 片流れ屋根に透湿ルーフィングが使えないときはどうする?
- 【まとめ】片流れ屋根のデメリットを理解し、後悔しない家づくりを!
片流れ屋根とは?特徴と人気の理由を解説
片流れ屋根とは、一枚の屋根面が一方向に傾斜している屋根形状のことで、片屋根ともいいます。
物置などの小さめの建物に採用されることが多かった形状ですが、シンプルでスタイリッシュなデザインが人気で、近年は増加傾向で人気のある屋根形状となっています。
片流れ屋根の特徴と人気の理由は以下の5つがあります。
- スタイリッシュでおしゃれな外観
- 北側斜線制限に対応しやすい
- 高い位置に窓を設けることができ、天井高の明るい居住空間が可能
- シンプルな作りで初期費用が抑えられる
- 太陽光パネルが設置しやすく効率が良い
総2階のキュービック型住宅(箱型)と相性がよく、その屋根に採用されています。
北側斜線制限がある場合、北向きの片流れ屋根にすることで対応しやすいメリットがあります。
傾斜天井とすることで、高い位置に窓を設けることができ、天井が高く明るい居室とすることができます。
南面向きの片流れ屋根は、同じ敷地面積とすると切妻屋根に比べて2倍太陽光パネルを設置することができます。
南面は、他の方角(東・西)よりも発電効率が約18%良くなります。(北面に比べるとなんと約60%)
大容量の太陽光発電を検討されている方には、片流れ屋根のメリットは大きいですね。
片流れ屋根のデメリットその1:雨漏りリスクが高い
片流れ屋根のデメリットその1として、雨漏りリスクが高いことがあります。
新築・瑕疵担保責任保険での雨漏り事故では、75%以上が片流れ屋根となっていて、他の屋根に比べて、圧倒的に雨漏りが多く発生しています。(雨漏り事故4件中の3件が片流れ屋根)
片流れ屋根の中では、50%が棟部(屋根の頂部)からの浸入です。
片流れ屋根の棟断面図は以下の通りです。
片流れ屋根の棟部では、野地板は室内側が低くなっている逆勾配となっており、野地板と破風板の境から雨水が野地板の裏面を伝い水となって室内側へ流れてしまいます。
強風雨の吹き込みによって、片流れ棟部の野地板裏面に雨がかかると建物内側へ浸入する構造となっていることが雨漏りを高めている原因です。
片流れ屋根のケラバ部(屋根の端部)からの浸入が次に多く27%、残りは軒先部(屋根の水下部)で23%となっています。
同じ敷地面積であれば、片流れ屋根のケラバ部1辺の長さは切妻屋根の2倍となります。
軒先部に流れる雨水量は2倍となるため、軒先付近のケラバ部を流れる雨水量も2倍となります。
ケラバ・軒先とも雨量が2倍となるので、単純に2倍以上、雨漏りリスクが高い屋根構造と言えます。
片流れ屋根のデメリットその2:風雨の影響を受けやすい構造
片流れ屋根のデメリットその2として、風雨の影響を受けやすい構造であることがあります。
片流れ屋根の軒先部は他の屋根と比べて違いはありませんが、棟部は外壁と軒の関係が鈍角となって開いており、風雨が吹き込みやすい形状となっています。
また、棟部は屋根でもっとも高い位置であり、風圧がもっとも大きい場所にもなっています。
片流れ屋根の特徴的な構造である棟部が風雨の影響を受けやすい状態であり、吹き込みによる雨漏りリスクが高いと言えます。
さらに、軒の出のない(軒ゼロ)の片流れ屋根では、外壁と屋根の取り合い部(赤線部分)が風雨の影響を受けやすい構造になっています。
外壁と屋根の取り合い部・外壁目地・窓まわりはシーリング処理で雨水浸入を防いでおり、軒の出がないため紫外線劣化が進行しやすい状況です。
シーリングが劣化しやすく、風雨が吹き込みしやすいので、経年劣化による雨漏りリスクも高くなっています。
片流れ屋根のデメリットその3:換気しにくい
片流れ屋根のデメリットその3として、小屋裏換気を行いにくいことがあります。
片流れ屋根の棟部は風雨が吹き込みやすいので、雨漏り対策として屋根と外壁の取合部、軒天材付近の隙間を無くしたいです。
一方で、屋根や壁の結露対策として、屋根の頂部に小屋裏換気の吸排気孔を設置して、小屋裏換気や屋根通気・壁内通気を促進したいです。
このように雨漏り対策と結露対策は矛盾していますので、雨漏りに配慮した小屋裏換気が必要です。
また、片流れ屋根は緩い勾配を採用されることがあり、この場合、小屋裏換気の温度差換気効果は低下します。
さらに、軒ゼロの片流れ屋根は雨漏りリスクが高いので、軒ゼロ専用の換気部材の設置が必須です。
小屋裏換気が不十分ですと結露リスクが高まりますが、結露については次の章で詳しく紹介します。
片流れ屋根のデメリットその4:結露が起こることも
片流れ屋根のデメリットその4として、結露が起こるリスクがあります。
もっともリスクが高い片流れ屋根は北向きの片流れ屋根です。
北側斜線による高さ制限の対策として、北向きの片流れ屋根となるように設計されることがあります。
北向き片流れ屋根は冬季、屋根面に日射があたらない可能性が高く、壁内や小屋裏の湿気が移動して北面野地板が高湿となり、結露が発生するリスクとなります。
6寸以上の勾配の北面片流れ屋根は冬至時期には、1日中、日陰となるので危険です。
冬季の間、数週間にわたり、野地板の結露が続くと野地板が腐朽してしまいます。
また、片流れ屋根は傾斜天井(屋根断熱仕様)となる場合が多く、この組み合わせも結露リスクが高いです。
屋根断熱では断熱材上と野地板との間で通気措置が必須で、軒先の吸気孔、通気層、棟の排気孔の3点セットで野地板の結露を防ぐことになっています。
先ほども紹介しましたが、軒先・棟での換気の吸気・排気は雨漏りリスクもあるので、風雨の吹き込み対策した吸気孔・排気孔を屋根断熱では必ず設置してください。
片流れ屋根のデメリットその5:大量の雨が流れ落ちる
片流れ屋根のデメリットその5として、大量の雨が軒先へ流れ落ちることです。
屋根の傾斜が一方向しかないため、同じ敷地面積における他の屋根形状にくらべて雨樋への流入量は2倍(対切妻屋根)、4倍(対寄棟屋根)程度多くなります。
豪雨などでは雨樋からオーバーフローする可能性もあり、外壁面に伝わると外壁・窓からの雨漏りリスクとなります。
また、雨樋が落ち葉・土ぼこり等で詰まると通常の雨でもオーバーフローしてしまい、外壁の劣化を促進させてしまうリスクもあります。
片流れ屋根のデメリット【雨漏り】の解消法その1:透湿ルーフィングを巻く
片流れ屋根のデメリット【雨漏り】の解消法その1として、透湿ルーフィングを屋根周辺部に巻くことがあります。
片流れ屋根の弱点とも言える棟部からの伝い水に関しては、野地板表面端部から破風板へ透湿ルーフィングを巻くことで浸入を防ぐことができます。
透湿ルーフィングとは、屋根の防水シートの一種ですが、折り曲げても破れにくく、湿気を排出することができ、防水性が高いという特徴があります。
少し高価ですが、片流れ屋根の周辺部と外壁との間を巻くことだけなら少しのコストアップだけとなり、片流れ屋根の防水性は大幅に向上するため、コストパフォーマンスが高い対策です。
また、野地板と破風板の取合部だけではなく、軒天と外壁の取合部にも使用することも有効です。
片流れ屋根のデメリット【雨漏り】の解消法その2:けらば部にシール材付きけらば水切りを使う
片流れ屋根のデメリット【雨漏り】の解消法その2として、けらば部にシール材付きけらば水切りを使用することがあります。
スレート屋根やシングル屋根、金属屋根(横葺き)では、けらば水切りを使用した納まりが標準的となっています。
しかし、経年で土ぼこりがけらば水切りに堆積して、水切りからオーバーフローして雨漏りする事例が切妻屋根において問題となっています。
片流れ屋根では、切妻屋根の2倍以上リスクが高いので、今後、問題となる可能性があります。
解消方法はいくつかありますが、基本的には、けらば水切りからのオーバーフローを防ぐことが有効です。
●シール材付きけらば水切り
けらば水切りを改良した「シール材付きけらば水切り」を活用すると、シール材(クッション性のある止水材)が屋根材と密着して、土ほこりや雨水のオーバーフローを防ぐことができます。
●シーリング処理
シール材付きけらば水切りのシール材付の代わりにシーリング材を塗布して、屋根材とけらば水切りを貼り付けてしまうというものです。
ただし、屋根材の補修時には、けらば水切りと屋根材が密着してしまっているので、屋根材・けらば水切りを解体しなければ、撤去することができません。
大掛かりな補修となるリスクはあります。
●防水シートの増し張り
けらば水切りからオーバーフローすることを前提として、けらば部分へ縦方向に防水シートを増し張りするというものです。
現在は1m分増し張りするようになっていますが、片流れ屋根の流れ方向が長くなると1mでは不足する懸念があります。
片流れ屋根のデメリット【換気不足】の解消法:小屋裏換気を多くする
片流れ屋根のデメリット【換気不足】の解消法として、小屋裏換気を多く設置することでことがあります。
切妻屋根や寄棟屋根では、小屋裏換気量は天井面積に対して、軒先部、棟部である割合以上とすることが求められています。
片流れ屋根も同様な基準が求められていますが、片流れ屋根特有の換気能力の低下リスクがあるため、切妻屋根よりも小屋裏換気量を多くすることをオススメします。
小屋裏換気を多くするには、以下のような方法があります。
- 換気棟を切妻屋根よりも多く設置する。
- 軒を出して、軒天換気を全周に設置する。
- 妻壁での妻換気と併用する。
とくに、軒ゼロの片流れ屋根の場合は、専用の換気部材を設置して換気することになりますが、雨水浸入を考慮して、換気部材の換気能力は低くなっています。(換気部材の換気抵抗が大きくなっている)
基準以上に多く設置(予算的に可能であれば全周に設置)することをオススメします。
片流れ屋根のデメリット【湿気・結露】の解消法:野地面通気+透湿ルーフィング
片流れ屋根のデメリット【湿気・結露】の解消法として、野地面通気+透湿ルーフィングを設置することがあります。
北向きの片流れ屋根では、野地板結露・劣化防止が必要であり、野地面通気(屋根材と野地板の間の通気)+透湿ルーフィングが有効です。
また、屋根断熱仕様の片流れ屋根においても有効です。
屋根断熱仕様は野地板と断熱材の間で通気していますが、屋根材からの雨水浸入で野地板上面が濡れることに対しては効果が薄いです。
そのため、屋根断熱仕様では、野地板の上下で通気層を持つことで、野地板の健全な状態が長く保つことにつながります。
とくに、長寿命な住宅(35年以上)かつ省メンテナンスを希望している方にはオススメです。
ただし、これは屋根の仕様も関係してくるので、設計当初から建設会社との打ち合わせが必要です。
透湿ルーフィングを使用するには、野地面通気が必須となりますが、シングル屋根や金属屋根では対応する工法がないのでご注意ください。
片流れ屋根に透湿ルーフィングが使えないときはどうする?
片流れ屋根に透湿ルーフィングが使えないシングル屋根・金属屋根・太陽光パネル設置屋根での結露対策を紹介します。
野地面通気+透湿ルーフィングで野地板を乾燥させることができないため、小屋裏換気能力を上げることが必要となります。
片流れ屋根ではなくなりますが、反対面にも小さな屋根面を設けて、変形の切妻屋根にすることが有効です。
切妻屋根となるため、棟部からの雨水浸入リスクは大幅に減少します。
また、棟部付近でわずかな水平天井を設けることで小さな小屋裏ができ、屋根断熱の通気層からの湿気を確実に小屋裏換気として排気できるようになります。
デザイン性で妥協できるならオススメです。
【まとめ】片流れ屋根のデメリットを理解し、後悔しない家づくりを!
片流れ屋根のメリットと人気の理由を紹介しました。
一方で、片流れ屋根のデメリットを5つ解説しました。
デメリットに関しては、雨漏りリスク・結露リスクという発生してしまうと簡単に補修できない内容で、屋根に関してあまり検討しなかったことを後悔する方が多いようです。
また、雨漏り対策・結露対策もいくつか紹介しました。
片流れ屋根のメリットとデメリットを比較しながら理想の家を建てるために、屋根に関してお悩みであれば、ぜひお気軽にご相談ください。
神清からのお願い
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