瓦屋根の耐風性能が強化されます。耐風診断・耐風改修工事をご紹介します!

Dr.神谷
Dr.神谷
  • みなさま。こんにちは。
    屋根から人の笑顔を作りたい!!!神清(かみせい)のDr.神谷です。

    弊社は、高浜市・半田市にある創業150年老舗三州瓦の生産・販売・工事を行っている会社です。
    年間200棟以上の雨漏り調査・修理を行っています。
    建築業界誌「日経ホームビルダー」の連載記事「新次元!雨漏り対策」を執筆しています。

本記事はこんな人にお勧めします。

古い瓦屋根に住んでいる人。

新築を検討している人。

瓦屋根の耐風診断を検討している人。

瓦屋根の耐風補修を検討している人。

この記事で伝えたいこと

最近、異常気象による自然災害が毎年のように発生しています。

千葉県における瓦屋根被害も甚大なものでした。

50年ぶりに建築基準法の告示基準の改正が行われます。

瓦屋根の耐風診断・耐風改修工事をご紹介します。

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瓦屋根の耐風性能が強化

2019年台風15号により、千葉県では大きな被害が発生しました。

とくに、古い建物の屋根被害が多く、その7割程度が瓦屋根でした。

このような被害を防止するために、瓦屋根の緊結方法が強化されることとなりました。

昭和46年の基準から50年ぶりの告示改正となります。

現在の標準的な瓦屋根の新築工事の内容(ガイドライン工法)が基準となっています。

 

瓦屋根の耐風性能の変遷

50年前の瓦屋根とは?

50年前の建設省告示109号で、瓦の緊結(きんけつ/留めること)が定められました。

上の図からわかるように、軒・けらばは「2通り緊結すること」となっています。

裏を返すと、図の白い部分は瓦は留め付けされておらず、50年前の瓦屋根は瓦桟木(かわらさんぎ)に引っかかっているだけがほとんどです。

また、愛知県以西は土葺き(どぶき)工法が多く採用されて、今も多くが健在しています。

土葺き工法について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

~土葺き工法ってなに? Q014~ 図解 屋根に関するQ&A

棟部(屋根の頂点)の瓦は土の固着力のみで形状を維持している状態です。

30年前の瓦屋根とは?

30年前に金融公庫の仕様書で、平部は4段おき、3段おきにくぎ留めと記載されました。

30年前の瓦屋根の平部は、3枚か4枚に1枚くぎ留めされている場合が多いです。

愛知以西の瓦屋根は、一部は引掛け桟となっている場合もあります。

20年前の瓦屋根とは?

2001年に現在、標準となっている「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」が定められ、ガイドライン工法で施工されるようになりました。

その地域に必要な耐風性能を満たす施工方法で、瓦屋根が施工されるようになりました。

現在の瓦屋根の耐風性能は大丈夫です。

30年以上前の瓦屋根(旧構法)と現在の瓦屋根(耐風仕様)の違いについて、ご紹介します。

  1. 軒先部
  2. けらば部
  3. 平部
  4. 棟部

上記、4つの部位を簡単に解説します。

軒先部

左側の旧構法は軒先の瓦が数枚に1枚、銅線で緊結されています。留め付け量が少ないです。

一方、現在の瓦屋根は耐風仕様となっていて、軒先の瓦1枚を3点留め(くぎ2本とビス1本)しています。

3点留めされているので、どんな強い風でも瓦は全く動きません。

けらば部

左側の旧構法はけらばの瓦が銅線で1か所緊結されています。留め付け量が少ないです。

一方、現在の瓦屋根は耐風仕様となっていて、けらばの瓦1枚を3点留め(くぎ2本とビス1本)しています。

けらば部は風向きによって、瓦が飛散しやすいのですが、3点留めされているので、どんな強い風でも大丈夫です。

平部

左側の旧構法は平部の瓦が土葺き工法となっていて、くぎ・ビスや銅線などでは留め付けられていません。

葺き土の固着力と瓦の下の空間が葺き土で埋められているため、今まで、留め付けなしでも飛散しませんでした。(しかし、将来の巨大台風ではどうなるか、わかりません。)

一方、現在の瓦屋根は耐風仕様となっていて、防災瓦(ぼうさいがわら)を全数くぎ留めしています。

防災瓦とは、15年前ぐらいから使用されるようになった耐風性能が飛躍的に向上した瓦の通称です。(現在では、瓦の比率としては、99%が防災瓦となっています。)

防災瓦を全数くぎ留めしているので、沖縄・鹿児島などの強風地域を除けば、十分な耐風性能があると言えます。(沖縄・鹿児島などはくぎ2本留めやビス留めで対応可能です。)

防災瓦について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

~防災瓦(ぼうさい)ってなに? Q054~ 図解 屋根に関するQ&A

棟部

左側の旧構法は棟部の瓦が大回しという銅線でくるんでいるだけで、建物との留め付けは葺き土の固着力だけとなっています。

巨大台風や巨大地震では、状態を維持することがむずかしく、瓦屋根被害の多くを占めるもっとも脆い部位です。

一方、現在の瓦屋根(ガイドライン工法)の棟部は耐風仕様となっていて、建物と棟のすべての瓦が金物等で連結するようになっています。

建物に留め付けられているため、棟の瓦が飛散することはありません。

~ガイドライン工法の棟部はどうなっているの?~

 

このように、現在の瓦屋根はそれぞれ部位ですべての瓦がしっかりと留め付けられているため、巨大台風でも飛散しません。

実際に、台風15号千葉県でも新しい瓦屋根の被害は、飛来物による破損を除けば、ほとんど大丈夫でした。

 

旧構法の瓦屋根の耐風診断

築30年以上経過した旧構法の瓦屋根を耐風診断した様子をご紹介します。

①築年数が20年以上経過した瓦屋根でした。⇒旧構法の可能性が高い。

②棟部の写真を撮ると、旧構法の目印である緑色となった銅線が棟部の横に見えました。旧構法である。

③屋根に上がって、平部の瓦をめくってみますと、土葺き工法でした。旧構法である。

以上、3点からこの瓦屋根は、旧構法であり耐風性能が乏しいことが確認できました。

 

旧構法の瓦屋根の耐風改修のご提案

旧構法の瓦屋根であると、耐風診断の調査結果をお伝えしました。

併せて、3つ瓦屋根の耐風改修案をご提案させていただきました。

①もっとも脆い旧構法の棟部のみの耐風改修案

②2階屋根部分のみを葺き替える耐風改修案

③1・2階屋根全体を葺き替える耐風改修案

お客様にご検討いただいた結果、③の屋根全体を葺き替える耐風改修を行うこととなりました。

旧構法の瓦屋根の耐風改修工事

工事前

足場設置・養生対策

安全対策と併せて、土葺き屋根の葺き替えの場合、土ほこりが飛散しやすいので、周辺への養生対策を行いました。

旧構法の瓦屋根の解体

①瓦を1枚ずつめくります。

葺き土がびっしりと屋根の上に載っています。

②葺き土・杉皮をめくります。

杉皮の下に古い防水シートがありました。

耐風仕様の瓦屋根への改修

①新しい屋根下地を設置します。

垂木に野地合板を設置します。

②新しい防水シートを設置します。

野地合板の上に、新しい防水シート(改質アスファルトルーフィング)を設置します。

③瓦桟木、ルーフテープを設置します。

④新しい瓦・F形防災瓦を施工します。

平部は全数釘打ちで、棟際のカットした瓦もすべて留め付けます。

隅棟部のカットした瓦や壁際の瓦も留め付けします。

棟部・けらば部もパッキン付きビス留めをします。

告示の改正内容にも、棟部はパッキン付きビス留めと記載されています。

現行では、標準としてパッキン付きビス留めを行っています。

耐風改修工事のビフォーアフター

ビフォー

アフター

旧構法の留め付けなしの瓦屋根から、耐風仕様の瓦屋根へ改修工事完了です。

巨大台風が来ても、この耐風仕様の瓦屋根なら飛散することはありません。

30年以上メンテナンスしていない瓦屋根が新品の瓦屋根へと改修されました。

葺き土をめくり、屋根重量も大幅に軽量化となりました。

今後、再び30年以上は点検だけのメンテナンスで大丈夫です。

 

まとめ:旧構法の瓦屋根を耐風診断・耐風改修しました。

最近の自然災害での被害を防止するために、瓦屋根の緊結方法が強化されることとなりました。

現在の標準的な瓦屋根の新築工事の内容(ガイドライン工法)が基準となっています。

一方で、50年前の瓦屋根は瓦桟木(かわらさんぎ)に引っかかっているだけがほとんどです。

30年前の瓦屋根の平部は、3枚か4枚に1枚くぎ留めされている場合が多いです。

愛知県以西は土葺き(どぶき)工法が多く採用されて、今も多くが健在しています。

これらの瓦屋根は耐風性能が乏しいものがほとんどです。

20年以上経過した瓦屋根は、瓦屋根工事業者に点検をしてもらうことをオススメします。

耐風診断・耐風改修のお悩み・ご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

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