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スレート屋根のカバー工法をする前に知っておくべきメリット・デメリットは?
今日は、皆様からよく頂く質問の一つ。「スレート屋根のリフォーム」について書かせていただこうと思います。
この記事を読んでいる方はこんなことを考えていらっしゃるのではないでしょうか?
「スレート」のリフォームなら「カバー工法」とリフォーム業者に聞いたけど、いまひとつ理解できていない。
「スレート」とか「カバー工法」って言葉は、普段なかなか耳にしない言葉ですよね。
実は、リフォーム業者さんから提案されたこの「スレートのカバー工法」のメリットデメリットを知りたいという質問は、結構いただくんです。
今回はこちらをわかりやす〜くプロの屋根屋が説明させていただきます!
ご自宅の屋根がスレートだった場合の注意点!
まずはスレート屋根とはどんなものか。はい、こちら!
スレートとは、「超強いセメントを固めて塗装した板」になります。
いわゆる「屋根材」というやつですね。
スレートについては、こちらの記事にとてもわかりやすく書かれています。
参照:スレート?瓦とは違うの?正直知らない屋根材の特徴・修理・注意点を余さず解説【カラーベスト・コロニアル】
築10~20年の化粧スレート屋根はメンテナンス時期に来ています。
そして、
築10~20年の化粧スレート屋根はメンテナンス時期に来ています。
スレート表面塗装が紫外線劣化により褪色し、コケ等が付着した状態です。
黒色だったスレートが褪色し、さらに黄色のコケが大量に付着しています。
この状態を長い間放って置くと屋根の下地板が痛むだけでなく、雨漏りや、家自体の劣化にも繋がってしまいます。
要するに早めのメンテナンスが結果的に一番良い場合が多いということですね。
古いスレートには有害なアスベストが含まれている。
さらに、この年代のスレート屋根(2004年以前)はアスベスト(石綿)が混入されていました。
石綿スレートという名称で呼ばれていました。
アスベストは非常に危険な発がん性物質です。
アスベスト飛散試験では、
写真のような防護服、防じんマスクをしっかりして行われます。アスベストの危険性を感じていただけますか?!
アスベストは、国が決めた対策をきちんと知っているプロに任せたほうがいい。
そのアスベストが混入しているスレート屋根の解体・リフォームに関しては、国がいくつかの対策を定めています!
国は、
「石綿障害予防規則」を定めアスベストを含有する建材(化粧スレート)を使用した建物等の解体・改修作業において、石綿ばく露防止対策等の徹底を促しています。
簡単にいうと、
「アスベストが飛び散らないように、プロの業者はこれを守りなさい!」
というのを国が決めているんですね。
アスベストは絶対にプロに任せたほうがいいのです。
具体的な方法は、以下です。
①解体・改修ではアスベスト建材を湿潤化し、破損させず、手作業で慎重に取り扱うこととしています。
湿潤作業を嫌う屋根屋さんは掃除機を改良した特殊工法も採用しています。
②外部・周辺への飛散防止を義務付けています。
③解体された建材は、非飛散性アスベスト廃棄物に区分され、飛散防止に注意しながら廃棄物として処理します。
アスベスト入りのスレートをプロに任せることは、
石綿ばく露防止対策の順守はお施主さま、その家族、周辺住民、作業者などのアスベスト被ばくを防ぐ唯一の方法となります。
スレートのメンテナンス方法は「メンテナンス計画」と「トータル費用」で考えよう。
選び方としては、
・今後のメンテナンス計画をどうするか?
・今後、家にかけるトータル費用はどうするか?
の2つをポイントを比較して選ぶ必要があります。
スレート屋根のメンテナンス方法としては、以下の3つが一般的です。
①今屋根に乗っているスレートを「再塗装」する
もっとも安価なメンテナンスとなります。
ただし、こちらはあくまで見た目を良くするという側面が強いですね。
10年毎に再塗装が必要です。
そして30年経つと
・屋根のスレートを全て取り替える「葺き替え」
もしくは、
・「カバー工法」での対策が必要となります。
②「カバー工法」による屋根リフォーム
ガルバリウム鋼板によるカバー工法が主流です。
ただし、再塗装が10年毎に必要です。(もしくは、高耐久塗装品で20年で再塗装)
③新しい屋根材に「葺き替え」
古いスレート屋根をはがして、新しいスレート屋根に葺き替えた現場です。
えー!!アスベストは大丈夫なの??と思われる方も多いですよね!
現在のスレート屋根はアスベストが入っていませんので、ご安心ください!
また、高耐久塗装品(グラッサコート)がありますので、こちらにすれば、再塗装の回数が軽減しますよ!
もしくは、古いスレート屋根をはがして、ガルバリウム鋼板に葺き替えもありますね。
これら3つの方法はそれぞれ一長一短があります。
では、その選び方をお教えいたします。
「カバー工法」のメリット・デメリットとは。
先ほども出ました、「カバー工法による屋根リフォーム」について、詳しくご説明いたします。
最近、多くのリフォーム業者さんが「カバー工法」勧めていると思います!
既存のスレート屋根を剥がすことなく、新しい屋根材(ガルバリウム鋼板製の軽量なもの)で、スレート屋根を覆うため、カバー工法と呼ばれています。
カバー工法のメリット
カバー工法のメリットとしては、
①スレート屋根を剥がす費用が無いので、その分、屋根リフォームは少し安価となります。
②既存の屋根があるため、リフォームの途中で雨漏りする可能性は低くなります。
③前工程(洗浄やめくりなど)がないため、すぐに施工できるので工期が短くなります。
カバー工法が採用されるのは、①の安価が魅力で行われることが多いと思います。
さらに、②、③に関してもお施主さまのリフォームに対する精神的負担を軽減できるので、大きなメリットと言えます!
カバー工法のデメリット
ただ「カバー工法」には大きなデメリットが4つあります。
ⅰ)負の遺産を将来(子供・孫)へ先送り
石綿含有産業廃棄物(通常の廃棄物)として廃棄する費用は、右肩上がりで年々高騰しています。
現時点で、10年前の5倍以上になっています。
カバー工法を行うことは、廃棄を将来へ先延ばしすることになるため、将来の廃棄費用がさらに高騰することは容易に想像できます。
将来、家を引き継ぐ子供・孫へ負の遺産を残すことになります!
この1回のリフォームは少し安価ですが、将来まで見ると、トータルでは高価となることをご承知ください!
ⅱ)10年後またメンテナンスが必要。
今回、カバー工法で費用を抑えてリフォームしても、また、10年後、ガルバリウム鋼板のメンテナンスがやってくるのです!
1度目は、カバー工法を採用すれば安価でいいでしょうが、その次はどうするのでしょうか?
その計画まできちんと提案してくれるリフォーム業者なら安心です。
また、太陽光パネルを設置したいときにも、カバー工法では不可となります。
カバー工法したときの屋根材のメンテナンス計画を確認してくださいね!
2度目のメンテナンスとして、カバー工法屋根の2重めくりをした現場をご紹介します。通常のめくりにくらべ、かなり大変で、費用もかかりました。詳しくは、こちらの記事をぜひ、ご覧ください。
動画をみたい方は、こちらのYou Tubeをご覧ください。
ⅲ)カバー工法するとアスベスト飛散リスクが高まる!
カバー工法の手順を見ると「アスベスト」に対するリスクが高まる可能性があることがわかります。
以下、作業手順です。
①古いスレート屋根の上に粘着層付きルーフィングを施工します。
②その上からカバーする屋根材を施工します!
屋根材を留め付ける「釘」や「ねじ」で古いスレート屋根に孔を開けながら、野地板に留め付けます。
このとき、古いスレートに多数の孔や破断が発生しますよね。
カバー工法の施工時は、粘着層付きルーフィングでスレートを覆っているため、外部へアスベストが飛散する可能性は低いと言えます。
しかし、家を解体する時には、建設リサイクル法の分別解体の義務があるので、
・カバーした屋根材
・粘着層付きルーフィング
・古いスレート屋根
をそれぞれ分別して解体しなければなりません。
■分別解体の具体的な手順は?
①カバーしたガルバリウム鋼板屋根材を剥がします。(さらに、スレート屋根が破断する)
②粘着層付きルーフィングを剥がします。
③古いスレート屋根を解体します。
スレートは度重なる破断や穿孔により、非常にアスベストが飛散する状態となっています。
お施主さま、ご家族様、周辺住民、施工者はアスベストの被ばくリスクが高まります!
飛散する状態となっているため、特別管理産業廃棄物に分類されてしまう可能性もあります。
そうなると、解体費用・廃棄費用はますます高額となります。
ⅳ)屋根木部(野地合板)の劣化リスクが高まる!
カバー工法では、野地合板の全体的な劣化状況を把握しないまま、屋根を覆ってしまいます。
要するに、スレートが乗っている部分の土台はチェックしないまま作業を進めてしまうんですね。
スレート屋根の野地劣化は方位・部位・室内側の状況などで、部分的な劣化が発生します。
スレート屋根が施工されている状態で、劣化部分を見つけることはむずかしいです。
スレート屋根のケラバ部は野地合板の腐朽が多く発生しています!
スレート屋根では北面野地合板が結露により腐朽する事例が発生しています!
野地合板の劣化が進行した場合は、屋根材の緊結具(釘・ビス等)の保持力がなくなり、台風や地震などで、予想外の大きな被害が発生する危険性もあります。
ちなみに、もともとの屋根材を剥がして、もう一度、化粧スレートを施工する場合、スレートメーカーのマニュアルは野地合板の増し張りを行うこととなっています。
つまり、野地合板が劣化していることが前提の屋根材と言えます。
それなのに、「屋根の劣化を確認しない」で、スレート屋根をカバーする「カバー工法」は心配です!
今後、20年程度屋根を持たせたいと考えると不安ですよね。
本当にあった「カバー工法」での気の毒な話
参考までに、カバー工法の悲惨なリフォーム話を聞きましたので、ご紹介いたします。
お施主様にとっては、本当に気の毒なお話なのです。
築10年でスレート屋根が褪色しました。
リフォーム業者に勧められ、アスベスト入り波形セメント系屋根材のカバー工法でリフォームしました。
築20年が過ぎて、カバーした屋根材の再び褪色・割れが発生しました。
結局、2つアスベスト入りの屋根材(スレートとセメント)を分別解体して、新しい屋根材を施工したという話を聞きました。
10年目の時に、
安易に安価なカバー工法を行ったために、アスベスト廃棄量が2倍となり、
その分別解体・廃棄費用は莫大な金額になったと聞きました。
結局、余分な費用と時間がかかってしまったようです。
リフォーム時には、
その後のメンテナンス計画とトータル費用も併せて、リフォーム業者さんに提案してもらうこともお奨めいたします。
まとめ:スレートをメンテするなら「カバー工法」よりも「葺き替え」が結果的にコスパが良い!
築15年では、住宅ローンが残っている間のメンテナンスと思われます。
そのため、メンテナンス費の安価な再塗装が多く行われています。
しかし、10年毎に再塗装は結果、割高なので、悩みますよね!
そこで、リフォーム業者さんはその次に安価となるカバー工法ばかりを勧めています。
カバー工法のメリットデメリットを理解した上で、選択してくださいね!
私個人としては、負の遺産を将来へ引き渡さないように、カバー工法よりは葺き替えをお勧めしています!
スレートのことで、わからないことがある方はまずはお気軽にお問い合わせください。ご相談にのらせていただきます!(担当:神谷あきのり)
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