目次
ガルバリウム鋼板屋根材の基本的な特徴
ガルバリウム鋼板とは、金属の表面を特殊なコーティングで覆うめっき鋼板の中の1種類のことです。
昔からよく聞いた「トタン」「ぶりき」などのめっき鋼板の仲間となります。
ガルバリウム鋼板の分類名称としては、「溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板」が正式名称となります。
アルミニウムの特徴である耐食性、加工性、耐熱性と亜鉛の特徴である犠牲防食機能により、トタンよりも3倍程度、耐久性が優れているめっき鋼板です。
ガルバリウム鋼板屋根は金属屋根材なので軽く、トタン屋根よりもサビにくくコストパフォーマンスが優れているため、最近では多くの住宅に採用されている人気の屋根材です。
ガルバリウム鋼板屋根材の主な種類と特徴
ガルバリウム鋼板は、用途やデザインによって大きく4つに分けることができます。
- 横葺き
- 縦葺き
- 瓦調(かわらちょう)葺き
- 折板(せっぱん)葺き
それぞれの種類について簡単に解説していきます。
横葺き:地面と平行に並べるタイプ・断熱材の有無で性能が変わる
「横葺き」は、昔からある形状で屋根面に対して横方向にガルバリウム鋼板が並んでいきます。
横葺きの注意点としては、屋根の傾きが2.5寸以上の屋根勾配でなければ施工できません。
ガルバリウム鋼板の屋根材の中では、緩い勾配がNGなタイプとなります。
横葺きの種類は大きく2つあり、裏面に「断熱材あり」と「断熱材なし」の2種類あり、断熱材の有無で性能が変わります。
「断熱材あり」は高価で、リフォームなどで多く採用されています。
「断熱材なし」は安価で、昔からよく使用されています。
縦葺き:地面に垂直に並べるタイプ・緩やかな勾配の屋根にも対応
(上の写真は立平葺きです。)
「縦葺き」は、屋根面に対して縦方向にガルバリウム鋼板が並べられます。
縦葺きは昔からよく使用されている「瓦棒葺き(心木あり/心木なし)」があります。
上の写真は心木あり瓦棒葺きで、もっとも一般的に採用されていました。
立上り部の中に心木として、木材が入っています。
心木にキャップのカバーを横から留め付けています。
20年程度すると心木の木材が腐朽するため、徐々に心木なしタイプが主流となりました。
最近では、心木なしの仲間である「立平葺き」が人気で、多くの新築に採用されています。
縦葺きの特徴としては、0.5寸以上とゆるい勾配から対応可能となっています。
縦葺きはつなぎがないものがほとんどで、長尺ものを使います。
長尺ものをビス留めしながら並べていくため、施工が簡素で費用も安価です。
問題点としては、大雨のときに流速が速く、雨樋からオーバーフローしやすいことがあります。
瓦調葺き:瓦のような外観・伝統的な形状を保ちつつ軽量化
「瓦調葺き」は、横葺きと同じで地面と平行に葺く工事方法で、瓦をイメージした外観や瓦の重厚感が好みの方にオススメとなっています。
瓦屋根ではなく、ガルバリウム鋼板の「瓦調葺き」を選ぶメリットとデメリットをご紹介します。
瓦調葺きのメリットは、瓦のイメージを残しつつ屋根を軽量化できることです。
瓦調葺きのデメリットは、瓦に比べて割高であり、耐久性が低く塗装などのメンテナンスが必要となり、コストパフォーマンスは低いです。
折板葺き:大きな山谷形状・大型物件向き
「折板葺き」は、断面の構造に重点を置いて開発された屋根材で、大きな建物に合うデザイン性と強度・経済性を備えています。
工場や倉庫、ショッピングモールなどの大きな建物の屋根で使用されます。
一般の住宅として「折板葺き」が使用されることは少なくないです。
駐車場の屋根など下地がいらない箇所に使用する場合があります。
ガルバリウム鋼板屋根材のメリット
人気なガルバリウム鋼板のメリットを紹介します。
【メリット】
- サビに強い
- 耐久性が高い
- 軽量
- デザイン性が豊富
それぞれについて簡単に解説します。
サビに強い
今まで金属屋根材として使用されていたトタン屋根(カラー鉄板とも呼ばれる)よりは、3倍以上サビに強くなっています。
トタン屋根は赤サビが発生しやすく、それを防ぐために約5年に1度のペースで塗装する必要があり、メンテナンスが大変でした。
ガルバリウム鋼板は赤サビが発生しにくいため、そこまでの塗装メンテナンスは必要ではなく、トタン屋根に比べて大きなメリットとなります。
耐久性が高い
塗装メンテナンスまでの期間は、トタン屋根が5~10年程度とすると、ガルバリウム鋼板屋根の場合は10~15年と長寿命(耐久性が高い)になっています。
塗装メンテナンスを怠ってもあな開きまでの期間が20年以上と長くなっています。
但し、ステンレスのような高耐久性はないので、メンテナンスフリーではありません。
軽量
金属屋根材全般に言えますが、他の屋根材に比べてもっとも軽い屋根材です。(約5㎏/㎡)
スレート屋根・樹脂繊維セメント屋根材と比較しても1/4の軽さです。
デザイン性が豊富
立平葺きなどの縦葺きや折板葺きは、緩い屋根勾配(5/100以上)でも対応可能です。
直線的な印象の屋根からアール状の屋根まで、多様なデザインにも、対応しています!
ガルバリウム鋼板屋根材のデメリット
人気なガルバリウム鋼板のデメリットを紹介します。
- 初期費用(イニシャルコスト)が高い
- メンテナンス費用が高い
- 雨音が響く
- 強風で飛散のリスクがある
- サビる可能性がある
それぞれについて簡単に解説します。
初期費用(イニシャルコスト)が高い
ガルバリウム鋼板屋根の材工価格は、スレート屋根に比べると高いです。
種類によっては、瓦屋根と同等かそれより高いものもあります。
メンテナンス費用が高い
メンテナンス費用は瓦屋根に比べると高いです。
ガルバリウム鋼板屋根はメンテナンスフリーではありません。
ガルバリウム鋼板屋根は表面を定期的に塗装メンテナンスすることを推奨されています。
目安としては、表面の塗膜が白亜化(チョーキング)したら(10~年)塗り替えとなります。
雨音が響く
ガルバリウム鋼板屋根はトタン屋根と同じ金属屋根なので、雨音がうるさいです。
特に、瓦やスレートから葺き替えした場合、「雨音がうるさくて眠れない」と相談を受けることがあります。
施工後の対策は難しいため、音や睡眠に対して神経質な方はガルバリウム鋼板屋根で葺き替えるときにはよく検討されることをオススメします。
強風で飛散のリスクがある
ガルバリウム鋼板立平葺きなどは、長尺もので、1枚当たりの面積が大きく、他の屋根材よりも1枚当たりの耐風性能が求められます。
一方で、経年した金属屋根を調査すると、屋根周辺部(軒・けらば・棟)からの雨水浸入や結露(くぎまわり、軒先)などで野地板が劣化している場合が多いです。
新築時での耐風性能はあっても、野地板の経年劣化によって、ガルバリウム鋼板屋根を留め付けているくぎ・ビスの保持力が低下してしまうと巨大台風でガルバリウム鋼板屋根が飛散するリスクがあります。
ガルバリウム鋼板屋根が飛散するときには、屋根全体がめくれて飛散するので、周辺へ大きな被害をもたらしますので要注意です。
サビる可能性がある
トタン屋根に比べて、錆びにくくなっていますが、ガルバリウム鋼板の屋根はもちろん、錆びます!
水溜まり、土ぼこりの堆積、塩害、木材の接触面での錆び、電食による錆びなどで錆びるので、掃除が必要です。
ガルバリウム鋼板の屋根材は保証がしっかり表示されているものがあります。
サビや穴あきへの保証が10~20年ついているものが多いです。
保証の内容には免責事項が多く、実際に補償してもらうにはハードルは高くなっていますのでご注意ください。
ガルバリウム鋼板屋根材の価格相場を種類別に紹介
ガルバリウム鋼板屋根材の種類別価格の目安を紹介します。
ガルバリウム鋼板屋根材の種類 | 価格相場/㎡ |
---|---|
横葺き(断熱材なし) | 5,500~ |
横葺き(断熱材あり) | 8,000~ |
縦葺き(瓦棒) | 5,700~ |
縦葺き(立平葺き) | 6,000~ |
瓦調葺き | 9,000~ |
折板葺き | 7,000~ |
※ガルバリウム鋼板屋根材は板厚により材料費が変わります。
※屋根の大きさ・形状・リフォームなどで施工費が変わります。
ガルバリウム鋼板屋根材のおすすめ商品
ガルバリウム鋼板屋根材のおすすめ商品を紹介します。
新築におけるガルバリウム鋼板のおすすめ商品は「立平葺き」です。
縦葺きの中でも、ワンタッチ立平と呼ばれる端部にオスメスのあるものは、端部をはめ込むだけで、施工性がよくおすすめです。
一般住宅では0.35mmの塗装ガルバリウム鋼板を加工したものがよく採用されています。
リフォームにおけるガルバリウム鋼板のおすすめ商品は「横葺き(断熱材あり)」です。
リフォームでは、施工後に「雨音が響いて、眠れない」という問題が発生することがあります。
断熱材があることで雨音の響きを軽減させるのでおすすめします。
逆に、安価でも断熱材なしは雨音がひびくので、やめておきましょう。
ガルバリウム鋼板屋根材の人気メーカー
ガルバリウム鋼板屋根材の人気メーカーを紹介します。
●横葺き(断熱材あり)
アイジー工業 「スーパーガルテクト」・・・山形県出身で金属製建材の専門メーカーです。
ニチハ 「横暖ルーフ」・・・窯業系サイディングの最大手で横葺き(断熱材あり)を古くから手掛けています。
福泉工業 「MFシルキー2」・・・屋根リフォーム協会と関係が強く、施工性の良さを商品に組み入れています。
●縦葺き/横葺き(断熱材なし)
縦葺きは長尺(3m以上)な商品となるため、各地域に多数の加工製造メーカーが存在しています。(日本金属屋根協会には約250の正会員が在籍しています。)
ガルバリウム鋼板自体は製鉄メーカー(日本製鉄・JFEスチール等)が製造しており、コイル状で加工製造メーカーへ搬入されています。
そのため、縦葺き/横葺き(断熱材なし)の屋根材の種類を決めると屋根工事店が扱っている製鉄メーカーの種類や色を決めることになります。
ガルバリウム鋼板屋根材のメンテナンス方法
ガルバリウム鋼板屋根材のメンテナンス方法を紹介します。
ガルバリウム鋼板屋根はトタン屋根に比べて耐久性は高いですが、メンテナンスフリーではありません。
ガルバリウム鋼板屋根材のメンテナンス方法は以下の4つとなります。
- 定期的に水をかける
- 塗り替え
- カバー工法
- 葺き替え
それぞれについて簡単に解説します。
①定期的に水をかける
ガルバリウム鋼板屋根は飛散してくる塩分やほこり等の付着により錆びが発生しますので、年に数回程度、きれいな水をかけると長持ちします。
小動物(鳥など)の糞尿がかかった状態で放置するとさらに錆びやすくなるので、水道水で洗いながしましょう。
②塗り替え
ガルバリウム鋼板屋根にコケやチョーキング(白亜化)、色あせ、白錆などが発生している場合は、塗り替えを行いましょう。
赤錆が発生する前であれば、塗り替えをすることでガルバリウム鋼板屋根を長持ちさせることができます。
塗装の費用目安は40~80万円程度です。
③カバー工法
ガルバリウム鋼板屋根に赤錆、孔あきが発生している場合は塗り替えではなく、カバー工法によるメンテナンスが必要です。
既存の屋根材の種類によって、新しい屋根材をその上にカバーする施工方法と新しい野地合板を既存屋根材上にカバーしてから新たにガルバリウム鋼板屋根を設置する施工方法があります。
また、カバー工法は既存屋根で雨漏りしていないことが条件となります。
雨漏りしている場合は、葺き替えが必要です。
カバー工法の費用相場は、80~200万円程度とお考えください。
④葺き替え
既存のガルバリウム鋼板屋根で雨漏りしていたり、野地板が劣化していたりする場合は、葺き替えのメンテナンスが必要です。
既存の野地板が劣化している状態でカバー工法をしても将来、台風で飛散してしまうリスクが高いからです。
葺き替え工事の費用相場は、100~240万円程度とお考えください。
ガルバリウム鋼板屋根材の色の選び方
ガルバリウム鋼板屋根材の色の選び方について紹介します。
- 色のイメージ
- メンテナンス性の違い
- 遮熱性に違い
それぞれについて簡単に解説します。
色のイメージ
ガルバリウム鋼板は色の種類が多く、色によって家の印象が大きく変わります。
「黒」 → ガルバリウム鋼板の主流の色。高級感と重厚感がありスタイリッシュ。和風建築にもマッチ。
「ダークグレー」 → 黒のように洗練された印象で、汚れが目立たない。
「シルバー」 → メタリックな印象が近未来や明るさを感じさせる。
「青」 → スタイリッシュでクール。人気な色である。
「オレンジ」 → 穏やかな印象を与える。
「赤」 → バラのような色合いが上品さを感じさせる。
メンテナンス性の違い
ガルバリウム鋼板屋根材の色は塗料で着色されているので、10年程で色あせしてきます。
真っ赤・明るい緑などの鮮やかな色や真っ黒、真っ白は色あせ・汚れが目立ちやすい特徴があります。
グレーやブラウンなどの落ち着いた色の方が色あせが目立ちにくいです。
その分、メンテナンス間隔をあけても気にならないので、省メンテナンスを考えている方にはオススメとなります。
遮熱性の違い
ガルバリウム鋼板屋根材の色によって遮熱性が異なります。
白系の色は日射反射率が高く、黒系の色は日射反射率が低くなります。
ガルバリウム鋼板屋根材は熱を伝えやすいので、夏の暑さが気になる方は日射反射率の高い色を選ぶようにしましょう。
色見本には日射反射率が記載されていますので、その数値の大きいものがオススメです。
ガルバリウム鋼板以外でおすすめの屋根材
石付金属屋根は輸入品で、統一の規格はなく呼び名も販売元によって様々です。(「自然石粒仕上げ鋼板屋根」「天然石粒付き屋根」「ストーンチップ鋼板」「ジンカリウム鋼板」)
石付金属屋根とは、ガルバリウム鋼板とほぼ同じ組成材料のジンカリウム鋼板に着色した小粒の石をコーティングさせており、色の耐久性や断熱性・遮音性を高くした屋根材です。
人気の石付金属屋根としては、「ディートレーディング」が輸入している「ディーズ ディプロマット」があります。
ディプロマットは横葺きと同じように上下の屋根材がかん合して固定されるので、施工のバラツキがなく、耐風性能が高く安心です。
多くの石付金属屋根は耐風対策として、金属屋根の先端でビス留めする海外仕様となっており、金属屋根の先端15mm程度のところにビスを留めするため、施工のバラツキがあり、巨大台風で飛散した事例があります。
ガルバリウム鋼板屋根材はなぜ人気?
ガルバリウム鋼板屋根材が人気となっている理由を紹介します。
- トタン屋根に比べて耐久性が高い
- スレート屋根に比べて塗装メンテナンス費が安価になる
- 瓦屋根に比べて軽い
- 緩い勾配の屋根に施工できる
- 住宅以外の大型物件の屋根に施工できる
住宅、非住宅を含めた国内屋根材市場における素材別シェアで、金属屋根は約63%程度となっています。
トタン屋根より少し高価ですが耐久性が3倍以上高いので、トタン屋根はほとんどなくなり、ガルバリウム鋼板屋根材が使用されています。
スレート屋根のリフォームでは、金属屋根の横葺き(断熱材あり)が多く使用されています。
非住宅(工場、倉庫)では、波形スレートがほとんどなくなり、金属屋根の折板葺きが使用されています。
住宅では、人気の片流れ・箱型住宅で緩い勾配の屋根は金属屋根の立平葺きがほとんどとなっています。
【まとめ】ガルバリウム鋼板屋根材は種類の豊富さが魅力!
ガルバリウム鋼板は大きく分けると4つの種類に分けられることができます。
トタン屋根よりも耐久性が大幅に高いガルバリウム鋼板屋根材が金属屋根の主流になりました。
さらに、用途に応じた種類が豊富なのも魅力となっています。
横葺き(断熱材あり)は高価ですが、スレート屋根のリフォームで使用されています。
縦葺きでは、立平葺きが緩い勾配で使用でき、多くの新築に採用されています。
折板葺きは、断面の構造に重点を置いて開発された屋根材で、非住宅の大きな建物に合うデザイン性と強度・経済性を備えています。
新築におけるガルバリウム鋼板のオススメ商品は「立平葺き」です。
リフォームにおけるガルバリウム鋼板のオススメ商品は「横葺き(断熱材あり)」です。
自分のライフプランに合うガルバリウム鋼板を選びましょう。
屋根材で迷ったら専門業者にご相談ください。
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