築80年の瓦屋根はどうなっているのか?【実態調査】
バラ板、杉皮、土葺、日本瓦と日本の伝統的和風建築の屋根です。
今では社寺など特殊な物件でしか施工されない工法ですが、その屋根全体としての劣化の有無・耐久性について詳しく調べました。
上写真は調査前の施工してある状態です。
屋根材である瓦の割れ・カケもなく、棟のくずれ・脱落もありませんでした。
三州窯元の刻印
瓦の表面をよく見てみると瓦には1枚1枚、三州窯元の刻印がありました。
瓦は自体・80年経っても全く劣化していませんでした。
色あいはいぶし瓦特有の経年変化は見られましたが、経年美としての印象の方が強く感じました。
屋根下地(木材・防水材)の調査
瓦自体の耐久性は焼き物だからわかる。
けれど、屋根全体は80年で、どこか?劣化しているのでは?
と思われる方も多いのではないでしょうか?
そこで、屋根全体の下地(木材・防水材など)も調査しました。
調査して驚いたのですが、屋根としても劣化していませんでした。
その様子をご紹介します!
瓦を剥がしたところです。
瓦の下には、葺き土(ふきつち)がしっかり入っていました。
葺き土(ふきつち)には、瓦の固定+吸水材の役割があります。
少々瓦から浸入した雨水なら葺き土が吸い込み、雨漏りを防ぎます。
その下には、竹桟(たけざん)、杉皮(すぎかわ)がありました。
杉皮は今のルーフィング(防水紙)の役目のもので、杉皮の重なりで水を含んで軒先側に伝え、雨漏りを防ぐことができます。
台風など強風雨時に瓦から少量の雨が入った場合でも、葺き土+杉皮の吸水・防水効果で、雨が小屋裏まで達しない工法となっています。
その後、晴天時、瓦が日射によって暖められるとその下にある葺き土は乾燥し、その湿気は瓦の隙間から外部へ排湿されます。
土を完全に剥がしたところです。
軒先の広小舞も腐朽劣化していません。
桟木やその桟木に巻かれている藁縄(わらなわ)も劣化していません。
これら木材は水分が多ければ、腐朽しますので、このような健全の状態であれば、常時、乾燥状態であったと想像できます。
杉皮などを剥がすと、その下は木下地となるバラ板がでてきました。
バラ板も全く腐朽劣化していませんでした。(杉板の9㎜)
(ちなみに、最近の屋根に使用されている野地合板では、多くの腐朽事例が報告されています。)
小屋裏側から垂木・バラ板を観察しました。
よく乾燥した状態で、年月の経過した黒っぽい色になっていました。
雨水浸入痕も全くありませんでした。
瓦の土葺き(どぶき)屋根は重量が重くなるため、現在ではあまり行われていません。
しかし、このように80年経過した無傷の屋根を見ると雨漏りや結露に対しては、優れている耐久性の高い屋根だと言えます。(故に、昔から使われてきた・・・)
お伝えしたいこと。
80年前の瓦屋根を観察した結果、
①葺き土の吸水力+杉皮の防水性により、雨漏りを防いでいた。
②野地板に合板を使わず、透湿抵抗の高いアスファルトルーフィングも使用していないため、小屋裏から屋根面(バラ板・杉皮・土・瓦)へ湿気を排湿できる屋根構造になっていた。
③①+②より屋根の劣化はなかった。
この昔の知恵を生かしながら、現在、必須の耐風性・耐震性も取り入れた工法として、ホールレス工法があります。
ホールレス工法について、詳しくは下記をご覧ください。
木材・瓦という高耐久な素材を生かせるベストマッチの工法であり、今後、普及していくと考えています。
80年間、メンテナンス費がほとんどかからないととてもお得ですよね!
スレート屋根や金属屋根では、少なくとも2回は葺き替えをしています。
つまり、この瓦屋根のお宅は単純計算で、800万円以上得していますよ!
詳しい内容については、お気軽にお問い合わせください!
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