スレート屋根の雨漏り 3大原因の1つ「塗装時の縁切り不足」をご紹介。
スレート屋根とは、新築時は雨漏りしにくい屋根材です。
漏水試験で、猛烈な強風雨を想定した送風散水試験を行っても新品では雨漏りしません。
しかし、経年劣化にともない、雨漏りすることも。
その経年劣化による雨漏りには、以下の3大原因があります。
①塗装時の縁切り不足
②踏み割れからの浸水
③ケラバ部からの浸水
です。
この記事では、①塗装時の縁切り不足による雨漏り事例とその対策をご紹介します。
①の雨漏りは、著しい屋根の劣化を引き起こします。
スレート屋根を長持ちさせるために塗装したことが、かえって、「屋根を短命にする」というお客様にとっては、大きな後悔と大きな出費が伴います。
スレート屋根の塗装時は、必ず「縁切り」を要望してください。
雨漏り現場事例を紹介します。
築30年の木造住宅・寄棟・2階建てでした。
雨漏り調査
小屋裏に入ると野地合板がボロボロに劣化していました。
野地合板はたるき間で、たわみも発生していて、屋根材を保持する耐力もない状態でした。
スレート屋根でこのように全面的に雨漏りする場合、ほとんどが「塗装時の縁切り不足」が原因です。
屋根に上がってみると、塗料により、スレート同士が貼り付いていました。
外観では、スレートの退色・コケもないため、しっかりしたスレート屋根に見えるのです。
しかし、屋根材の下は雨漏りでボロボロになってしまいます。
縁切り不足が水を溜める現象を検証しました。
スレート屋根塗装の「縁切り不足」がどのような現象となるのか?実際の屋根で、見える化検証してみました。
上の動画でわかるように、スレート同士が貼り付いているため、スレートの継ぎ目からスレートの裏側へ浸入した雨水は、排水されずに溜まってしまいます。
溜まっている部分には、スレートを留めているくぎがあります。
くぎからの伝い水となって、防水シート・野地合板へと浸入して、やがて、雨漏りとなります。
雨漏り修理(古い屋根の解体)
このお宅のように、野地合板が全体的に腐朽している場合は、全面の葺き替え修理となります。
古いスレート屋根をめくります。
前日まで2日間、少し雨が降っていました。(1日の降水量:前々日・7mm、前日・1.5mm)
塗料で貼り付いている表面のスレートをはがしてみました。
すると、スレートの下に水が残っていました。
スレートくぎも濡れていたので、くぎを伝わって、雨が浸入するルートが確認できました。
スレート同士が塗料で貼り付いているので、割りながら、はがす作業となります。
よく水が溜まっているところでは、はがすときに、水が垂れてきました。
10mm/日も降っていないのに、このように水が溜まっていることから、少しでも雨が降ると、野地合板へ水がまわっていたと推測できます。
常に野地合板が濡れているため、腐朽が進み、著しい野地劣化を引き起こしたようです。
スレートをはがすと防水シートが出てきました。
ここまでは、一見、問題ないように感じます。
しかし、防水シートをめくると、ビックリしました。
野地合板が広範囲にわたって、腐朽していました。
野地合板の外・内とも白色腐朽が付着していました。
合板は層状にはくりしていました。
雨漏りがひどいところは、たるきの表面にも腐朽が付着していました。
幸い、表面だけだったので、たるきの交換までには、至りませんでした。
野地合板の劣化が進んでいるところでは、合板が1層ごとにばらけていました。
この合板にスレートくぎで留まっているだけだったので、台風のときにスレートが飛散してもおかしくない状態でした。
雨漏り修理(新しい材料で復旧)
新しい野地合板(構造用合板)で復旧しました。
野地合板の上に、新しい防水シートを張ります。
防水性の高い改質アスファルトルーフィングを施工します。
コロニアルグラッサを葺き上げました。
棟には、棟換気を設置して、今までよりもグレードアップした屋根としました。
スレート屋根の葺き替えビフォーアフター
葺き替え前
葺き替え後
ビフォーでも塗装してあるので、ビフォーアフターの差は少ないです。
「縁切り」をしていれば、後10年程度はメンテナンスする必要がなかったのですが、お客様にとっては、悪夢のようです。
数年で、塗装代+屋根の葺き替え代+野地合板の葺き替え代のメンテナンス費用を支払う羽目になってしまったからです。
塗装時の縁切り不足の対策
◎見積書で、「縁切り」の有無を確認する⇒「縁切り」有とする
スレート屋根の塗装時の縁切り不足対策は、シンプルです。
お客様が、塗装の見積の中に、「縁切り」費用の有無を確認することです。
「縁切り」が記入されてなければ、「縁切り」するように、見積に追加してもらってください。
おそらく、1人工増えるだけですので、数万円のことです。
この数万円をケチると、数年後に、30倍以上の出費をする羽目に。
✖見積書に、「スペーサー」が記載してある場合⇒「縁切り」に変更する
塗装屋さんの中には、スレート同士が貼り付かないように、スレートの間に、「スペーサー」を入れ込む方もいらっしゃいます。
この場合、常に2~3mmの隙間をスレートに与えるものです。
「縁切り」不足による雨漏りは解消されます。
しかし、以下の点で、スレート製造メーカーはやってはいけない注意事項としてあげています。
・踏み割れの原因となる
・風を受けやすくなるので、飛散リスクとなる
見積書に「スペーサー」と書いてある場合、「縁切り」に変更してもらってください。
費用的には、あまり変わらないと思いますが、スレート製造メーカーの禁止事項はやめておきましょう。
塗装屋さんは、屋根の専門ではありません。
塗装屋さんが「縁切り」は必要ないという場合は、別の塗装屋さんでも見積してもらい、「縁切り」してもらいましょう。
スレート屋根の雨漏りで、「縁切り不足」は多い事例です。
大切な屋根の下地腐朽を防ぎましょう!
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