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建築基準法で定めれた重い屋根と軽い屋根
屋根には建築基準法で定められた重い屋根と軽い屋根という分類があります。
重い屋根 → 陶器瓦・セメント瓦
軽い屋根 → 金属屋根材・化粧スレート
木造住宅では地震力の水平力に対して耐えることができるように壁・柱などを配置すること必要です。
住宅の床面積に対して水平力に耐えるために壁量の割合が定められています。
その必要な壁量は上記分類によって係数が変わっており、屋根材の重さで必要壁量は異なっています。
係数を用いた地震力に対する必要壁量の計算
建築基準法では、地震力に抵抗するために必要壁量が定められています。
係数を用いた地震力に対する必要壁量の計算方法を紹介します。
- 床面積の算出
- 重い屋根と軽い屋根の係数確認
- 必要壁料の計算
次の章から詳しく解説していくことを記載しておきましょう。
【係数を用いた必要壁量の計算】①床面積の算出
(引用先:木造軸組構法住宅の構造計画の基礎と演習より)
地震力に対する必要壁量を計算するには、床面積の算出が必要です。
1階の床面積、2階の床面積をそれぞれ求めます。
面積は柱心で計算します。
【係数を用いた必要壁量の計算】②重い屋根と軽い屋根の係数確認
屋根材ごとに係数が定められていますので紹介します。
陶器瓦・セメント瓦などの重い屋根の1階は33cm/㎡、2階は21cm/㎡。
金属屋根材・化粧スレートなどの軽い屋根の1階は29cm/㎡、2階は15cm/㎡。
【係数を用いた必要壁量の計算】③必要壁量の計算
床面積と屋根材ごとの係数がわかれば、必要壁量を求めることができます。
床面積(㎡)×係数(cm/㎡)×0.01=必要壁量(m)
求めた必要壁量の長さ以上を1階、2階のX軸Y軸のそれぞれが満たしていることが必要です。
地震ではどちらの方向にも揺れるため、X軸Y軸とも必要壁量以上が求められています。
上記表がモデル図面の建物における重い屋根、軽い屋根の必要壁量の違いとなります。
2階建て建物の1階が崩れやすいですが、軽い屋根よりも重い屋根の方が13.8%増しに壁量が必要とわかります。
重い屋根が地震に弱く軽い屋根が地震に強い訳ではない
重い屋根か軽い屋根だけでは、地震に強い・弱いということは一概に言えません。
建物が地震に強いか判断するには、(実際の壁量)/(必要壁量)で数値が大きい方が強いと判断することができます。
建築基準法では(実際の壁量)/(必要壁量)≧1となっており、1~1.24までの建物を耐震等級1となります。(厳密には少し計算方法が変わります)
1.25~1.49までを耐震等級2、1.5~を耐震等級3としており、壁量によって建物の強さを等級分けしており、壁量が重要となります。
屋根材の重さだけで地震に強い・弱いということは間違っています。
壁量以外にも壁量の配置バランスや地盤・基礎の強さ、基礎と建物構造をつなぐ金物の有無などにも耐震性は影響を受けます。
重い屋根か軽い屋根かよりも家全体のバランスが重要
屋根の重さに注目されがちですが、屋根を軽くするだけが耐震につながるわけではありません。
「屋根を軽くする」とは、粘土瓦以外を選択することになります。
粘土瓦は耐久性に優れ、35年以上のライフサイクルコストは屋根材の中でももっとも安価なので、屋根以外で耐震を検討することもオススメです。
窓などの開口部の部分は耐力壁とはなりませんので、家全体の開口部の位置やバランスを検討するだけでも耐震性を上げることができます。
昔のように南側を窓だらけにすると家の壁量のバランスが悪くなり、巨大地震が来たときに被害を受けてしまいます。
家のバランスを確保するためには、構造計算を行うことも有効です。
構造計算とは、建物の構造部分にかかる自重や積載荷重、多様な外力(地震力、積雪、風圧など)に対して、構造部材の応力や変形を計算して、安全であることを確かめることです。
重い屋根と軽い屋根の壁量計算の改正について
2025年4月の法改正で壁量計算をより実態に応じたものとなるように、改正が行われる予定です。
昭和56年以降40年以上もの間、必要壁量の算定において「重い屋根」と「軽い屋根」の分類による係数でしたが、それは廃止されます。
屋根の仕様だけなく、外壁の仕様、太陽光設置の有無も考慮した必要壁量計算となります。
重い屋根から軽い屋根への変更は耐震性向上になる?
重い屋根(瓦、セメント瓦等)から軽い屋根(金属屋根、スレート等)に変更することで、建物(屋根)の重量を小さくすることができます。
変更前と比較して、相対的には建物を揺らす地震力の低下(減震)にはつながります。
しかし、建物の耐震性は建物の重量に見合うだけの建物の強度と耐力壁のバランスによって決まってきます。
そのため、一概に屋根軽量化したから耐震性を満たすとか安全であるとは言えません。
例えば、昭和56年前の旧耐震基準の建物において、重い屋根から軽い屋根へ変更しても新耐震基準(昭和56年以降)を満たすことはほとんどないからです。
必要壁量を満たすように壁補強することや建物下の地盤や基礎の強度、基礎との連結力(耐震金物設置など)の影響も大きいです。
屋根軽量化は減震にはなりますが、旧耐震基準の建物を新耐震基準の耐震性に適合させるほどの向上にはなりません。
屋根の軽量化と耐震性について詳しくはこちらの記事で解説しています。
【まとめ】係数を使って重い屋根と軽い屋根の壁量計算を!
屋根軽量化リフォームを行うまえに、建物の構造の状態を確認しておくことをオススメします。
建物の構造の状態は壁量計算を行うで目安が見えてきます。
屋根を軽くした方がいいのか、壁を増やした方が効果的なのか費用面も含めて検討することができます。
旧耐震基準の住宅は自治体からの補助金がありますので、耐震診断を行いましょう。
屋根に関してお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。
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