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瓦屋根が地震に弱いとされる理由
瓦屋根が地震に弱いとされる理由として、巨大地震で瓦屋根建物の被害が目立つからだと思います。
瓦屋根の被害が目立つ要因は以下となります。
- 倒壊する建物は古い建物である
- 古い建物の多くは瓦屋根である(他の屋根材の建物は建替え済み)
- 倒壊しない建物でも瓦屋根自体に被害が発生する
倒壊する建物の多くが瓦屋根であることから、「瓦が重いから倒壊した」と間違った内容で報道されたことが、「瓦屋根が地震に弱い」とされる理由だと思います。
「瓦が重いから倒壊した」は間違っているので、次の章で詳しく解説します。
「屋根が重い」とその分建物の強度は必要ですが、「倒壊した」理由にはなりません。
例えば、屋根の重さを比較すると【金属屋根の重さ】<【瓦屋根の重さ】ですのでこの部分だけを強調されていますが、実際には【瓦屋根の重さ】<【陸屋根の重さ】ともなっています。
RC造や鉄骨造などの陸屋根は瓦屋根よりも重いのですが、「陸屋根が重いから倒壊した」とはなりません。
どんな屋根(瓦屋根、金属屋根、陸屋根)でもそれに見合うだけの建物の強度が必要であり、その強度不足しているとどんな屋根の建物でも倒壊してしまいます。
次に、倒壊しない建物で瓦屋根自体に被害が発生している瓦屋根は、日本瓦の棟部(むねぶ/屋根の頂部)の施工が古い仕様になっているからです。
現在では新しい耐震仕様となっており、古い仕様の日本瓦屋根を葺き替え・葺き直し・部分補修するメンテナンスが行われています。
間違った内容の報道について詳しくはこちらの記事で解説しています。
CBCテレビ「屋根を瓦にしているから起きた災害と言われても否定できない」は正しくない!
瓦屋根が地震に弱いと言われる本当の理由
瓦屋根が地震に弱いと言われる本当の理由を解説します。
先ほども紹介しましたが、倒壊する建物の多くが瓦屋根であることから、「瓦が重いから倒壊した」と間違った内容で報道されたことが、「瓦屋根が地震に弱い」と言われる理由です。
正しくは、「古い建物(旧耐震基準(1950~1981)の建物)が地震に弱い」のです。
屋根材が瓦であろうと金属屋根であろうと旧耐震基準の建物であれば、震度6、7の巨大地震で建物は倒壊します。
なぜなら、旧耐震基準では震度5で倒壊しない強度を求めており、ほとんどの古い建物は旧耐震基準ギリギリの強度で建てられているからです。
また、日本の滅失した住宅の平均築年数は32.1年(平成28年度)なので、旧耐震基準の建物はある程度取り壊されています。
スレート屋根や金属屋根などは築30年で大規模修繕(葺き替え等)が必要であり、屋根・壁の大規模修繕で数百万円をかけるなら「建て替え」を選択され取り壊されてきたと思われます。
一方で、瓦屋根は築30年を過ぎてもそのまま使用できるため、古い建物で残っているのはほとんどが瓦屋根になるのです。(平成30年統計で戸建住宅19%(約560万戸)が、昭和56年以前の旧耐震基準のままで残っている)
つまり、古い建物が地震に弱く、古い建物のほとんどの屋根が瓦であるために、「瓦屋根が地震に弱い」と言われる本当の理由です。
因みに、古い建物(旧耐震基準の建物)の瓦屋根を金属屋根に葺き替えしたシミュレーションがあるのですが、金属屋根に葺き替えて屋根を軽くしても倒壊してしまいます。
詳しくはこちらの動画をご覧ください。
動画からも瓦屋根の問題ではなく、古い建物の強度が不足していることが確認できます。
地盤の悪さが悪影響を与えることもある
耐震性が議論されるときに屋根材や躯体の話になることが多いですが、地盤の悪さは建物の倒壊に影響する大きな要素となります。
仮に地盤が脆弱な場合、どんなに建物の強度が高くしっかりしていても、建物の倒壊のリスクは飛躍的に高まります。
そのため、2000年に建築基準法が改正され、地盤調査の規定が充実され、地盤の耐力に応じた基礎構造とすることが追加されました。
2000年以前の建物が倒壊する場合は、地盤の悪さが原因の可能性もあります。
東日本大震災での屋根被害
地震では、地震の大きさ以外に揺れ方(周期)の違いで建物に発生する被害が異なります。
東日本大震災では、建物が倒壊する被害が少ない一方で、瓦屋根自体に多くの被害が発生しました。
東日本大震災の屋根被害調査では、全体の85%が日本瓦屋根だったと報告されています。
その内の98%が棟部(むねぶ/屋根の頂部)の被害でした。
つまり、「瓦屋根が地震に弱い」という指摘がありますが、正確には「古い日本瓦屋根の棟部が地震に弱い」ということだと思います。
現在では、旧工法の日本瓦の棟部だけを耐震工法にメンテナンスする方法も確立されており、補助金制度を設けている地方自治体もあります。
震度6、7では、どんな揺れ方をしても日本瓦の旧工法の棟部には被害が発生することがわかっていますので、早めに耐震補修を行いましょう。
東日本大震災の屋根被害について詳しくはこちらの記事で解説しています。
東日本大震災の屋根被害、83%は日本瓦棟部でした。簡易な地震対策もありますよ!
瓦屋根が地震に弱いのはウソ?地震対策で大切なこと
先ほども少し説明しましたが、「瓦屋根が地震に弱い」のはウソです。
旧耐震基準の建物は、震度6、7では屋根材の種類に関係なく、倒壊する可能性が高いです。
旧耐震基準の建物は地震対策が必要であり、そのためには、まず耐震診断を行いましょう。(各地方自治体が耐震診断に対する補助制度を用意しています。)
屋根の軽量化よりも建物の強度を高める耐力壁を増加する耐震改修が必要であり、費用的にも安価となります。
新築であれば、陸屋根と同様に、瓦屋根の重さに合わせて建物の強さで建設されるため、地震で倒壊することはありません。
瓦屋根の建物でも他の屋根材と同様に躯体の強度を上げることで耐震等級1、2、3と選択できるため、地震対策で耐震性を高めたい方は、耐震等級3(耐震等級1の1.5倍の強さ)を選びましょう。
また、瓦屋根は耐久性(60~年)が高く、省メンテナンスなのでランニングコストを抑えることができます。
瓦屋根が重い分だけ躯体のイニシャルコストは他の屋根材に比べて高くなりますが、30年以上住むことを考えるとライフサイクルコストではもっとも安価となります。
瓦は地震で落ちる?
瓦が地震で落ちるのは、日本瓦の棟部が崩れる被害が発生し、その崩れた瓦が落ちてくることがあります。
旧工法の日本瓦の棟部は建物への留め付けが不足しているからです。
また、愛知県以西の古い日本瓦屋根は土葺き(どぶき)と呼ばれる瓦下の葺き土の固着力で瓦を維持している工法もあります。
土葺きでは、平部の瓦の留め付けも弱く、地震で落下する可能性があります。
巨大地震が発生する前に、屋根を葺き替えることで、軽量化で建物の負荷を軽減でき、瓦が落下するリスクも軽減できます。
地震に強い瓦とは?
現在は、昔に比べて瓦1枚の重量が少し軽くなっています。
瓦の形状は、建物のデザインに対応できるように、日本瓦、平板瓦、洋瓦と和~洋までありますが、地震の強さにほとんど差はありません。
どの形状も、瓦同士が噛み合うようなロック構造になった「防災瓦」と呼ばれるズレたり、外れたりしにくくなっている瓦に進化しています。
また、令和4年から建築基準法の改正で、全ての瓦を建物へ釘やビスで留め付けることになりましたので、地震で落下したり、台風で飛散することもありません。
地震に弱いとは言わせない!防災瓦の特徴
地震に強くなった防災瓦の特徴を紹介します。
【メリット】
- 地震や台風でもズレない、落下しない
- 塗装などのメンテナンスは不要
- 従来の瓦より軽い
- 防水性が高い
- 遮音性が高い
- 耐久性が高い(60~年)
【デメリット】
- イニシャルコストはスレート屋根に比べると高い
- 割れる可能性はある
- スレートや金属屋根と比較すると重い
三州瓦の防災瓦について詳しくはこちらの記事で解説しています。
地震に弱いを克服した瓦屋根の魅力
地震に弱いを克服した瓦屋根の魅力を紹介します。
- 財布に優しい
- 豊富なデザイン
- 遮音性が高い
- 耐久性が高い(60~年)
- メンテナンス費用が抑えられる
現在では、瓦屋根は初期費用において金属屋根(横葺き)、樹脂繊維セメント屋根材、石付金属屋根に比べて安価です。
塗装品ではないので塗装メンテナンスも必要なく、メンテナンス費はほとんどかかりません。
さらに耐久性が他の屋根材に比べて倍以上となっているので、ライフサイクルコストはダントツに安価になり、財布に優しい屋根材です。
10年、20年、30年後の建物のメンテナンス費用を抑えたい方には、もっともオススメな屋根材です。
地震に弱いイメージで選択肢から外されてしまうには、もったいない屋根材です。
イニシャルコストを抑えたい建設会社さんからは敬遠されているので、始めの段階でお客様から提案されることをオススメします。
【まとめ】瓦屋根が地震に弱いということはない
瓦屋根が地震に弱いということはありません。
「屋根が重い」とその分建物の強度は必要ですが、「倒壊した」理由にはなりません。
どんな屋根(瓦屋根、金属屋根、陸屋根)でもそれに見合うだけの建物の強度が必要であり、その強度不足しているとどんな屋根の建物でも倒壊してしまいます。
正しくは、「古い建物(旧耐震基準(1950~1981)の建物)が地震に弱い」のです。
屋根材が瓦であろうと金属屋根であろうと旧耐震基準の建物であれば、震度6、7の巨大地震で建物は倒壊します。
なぜなら、旧耐震基準では震度5で倒壊しない強度を求めており、ほとんどの古い建物は旧耐震基準ギリギリの強度で建てられているからです。
一方で、瓦屋根は耐久性が高く、30年以上のライフサイクルコストがもっとも安価な屋根材です。
10年、20年、30年後の建物のメンテナンス費用を抑えたい方には、もっともオススメな屋根材です。
屋根に関してお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。
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