目次
DIY屋根塗装。スレートでの注意点は?
DIYでスレート屋根の塗装を検討されている方へいくつかの注意点を紹介します。
- 屋根での塗装作業は滑落のリスクがある
- 塗装後数年で雨漏りするリスクがある
- スレートを踏み割ってしまうリスクがある
屋根でのDIY作業の注意点としては、高所作業となるので安全対策が必要となります。
昔のトタン屋根にくらべて、スレート屋根は傾斜が大きく滑りやすくなっているので、常に滑落しないように注意してください。
DIYでの高所作業リスクについて詳しくはこちらの記事で解説しています。
屋根修理のDIYはやめておこう!オススメできない7つの理由を解説
雨漏りと踏み割れのリスクについては、この後、詳しく紹介していきます。
【DIY屋根塗装】で失敗!雨漏り事例を紹介
スレート屋根から雨漏りしたとご相談がありました。
伺ってみると「DIY屋根塗装を数年前に行っている。自分で隙間なくしっかり塗った。雨漏りの浸入箇所が見当たらない。」とのことでした。
おっしゃるように屋根に上がってみるとスレート屋根の上下の段差の隙間が完全に埋まるように塗装されていました。
このDIY屋根塗装こそが雨漏りの原因です。
しかし、塗装直後では雨漏りに気がつかなかったそうで、塗装が原因とは認めたくないようで説明しても理解してもらえなかったです。
そこで、スレート塗装面に散水して、漏水することを実証しました。
雨漏り箇所の天井から漏水して、熱画像でも温度低下を確認しました。
雨漏りの原因について次の章から解説していきます。
スレート屋根塗装で、「縁切りなし」は雨漏りを引き起こします。
はじめて聞く言葉だと思いますが、「縁切り(えんぎり)」とスレート屋根の雨漏りの関係を説明します。
縁切りとは、「塗装、乾燥後、上下の屋根材の段差が接着している部分を皮スキ・カッター等で塗料を切ること。」
縁切りすることで、スレートの裏面にまわった雨水を上下の隙間から排水することができます。
「縁切りなし」の場合、スレートのスリットから浸入した雨水がスレート裏面で排水できなくなり、スレートを留めているくぎ穴から漏水してしまいます。
「縁切りなし」による雨漏り事例
スレート屋根の雨漏りが著しい場合は、ほとんどが「縁切りなし」が原因となります。
DIY塗装ではなく、プロの塗装業者が塗装して雨漏りしてしまったいくつかの事例を紹介します。
●事例1
築16年で、2回も塗装したスレート屋根です。
表面はとてもきれいなのですが、雨漏りした現場です。
小屋裏側は、たるきからも水が垂れるほど、雨漏りしていました。
2回目の塗装をして、1年程度で雨漏りを発見したそうです。
雨漏りが発生してから、間もないせいか、野地板の腐朽までは、進行していませんでした。
●事例2
築30年のスレート屋根です。
塗装した塗料もかなり劣化した状態です。
小屋裏の裏面は著しい雨漏りが発生していました。
野地板は雨染み以外にも、腐朽菌であるキノコも発生していました。
長年にわたって、頻繁に雨漏りが発生していたと想像できます。
●事例3
築30年で、2回塗装した屋根です。
表面はとてもきれいな状態です。
小屋裏には、著しい雨漏りが発生していました。
野地板の裏面は、たるきまで白い腐朽菌が発生していました。
こちらも長年にわたって、雨漏りが発生していたと思われます。
これら事例の共通点としては、以下の3つがあります。
- スレート屋根の塗装する前には、雨漏りは発生していなかった。
- 塗装後に、雨漏りが著しく発生するようになった。
- 塗装後の屋根面を診ると、「縁切り」されておらず、上下のスレートが塗料で接着された状態となった。
塗装後に「縁切り」しないと雨漏りする仕組みを次の章で解説します。
スレート屋根塗装後に縁切りせず雨漏りする仕組みとは?
スレート屋根塗装後に縁切りしないと数年後、屋根全体で広範囲に雨漏りします。(スレート屋根の雨漏り原因第1位)
ここで、屋根塗装後に縁切りしないと雨漏りする仕組みについて解説します。
スレート屋根には、横方向にスレート同士を突き付けた「継ぎ目」とスレート屋根の意匠性を高めるために設けられた「スリット」と呼ばれる2種類の縦方向の溝が生じています。
屋根塗装時、縦方向の溝が塗料で完全にふさがれることはなく、隙間やピンホールが発生しています。
その後、雨が降ると雨水が溝の隙間・ピンホールに浸入し、毛細管現象で左右にあるスレートの裏面へ拡がっていきます。
スレート屋根の上下方向にあるスレートの重なり部の隙間に入り込んだ塗料は上下のスレートに貼り付いて、その隙間をふさいでしまうため、スレート裏面に浸入した雨水は排水されずに溜まってしまいます。
雨水が滞留する部分には、スレートを留め付けているくぎがあり、そこから屋根下地へ伝わり、経年で雨漏りするという仕組みです。
スレート屋根を塗装する場合は、雨漏りを防ぐために「縁切り」が必須です!
DIYでのスレート屋根塗装の手順
DIYでのスレート屋根塗装の手順を紹介します。
- 安全対策
- 洗浄・補修
- 下塗り
- 上塗り
- 縁切り
安全対策
塗料が余計なところに飛び散らないように、養生することが必要です。
車や隣の家のカーポートなどへ塗料がかかってしまうと、その修理費用で節約どころの話ではなくなります。
また、スレート屋根には、傾斜がついています。
少しでも、危険を感じたら、DIYはやめた方がいいです。
落下すると命にかかわりますので、プロに頼むことをおススメします。
洗浄・補修
スレート屋根の棟部(屋根の頂点)には、棟板金という塗装された鉄板が設置されています。
この部分に、さびが発生している場合は、さびを取りのぞいてください。
さび止めの下処理剤を塗ってください。
板金を留めているくぎなどが出ている場合もあります。ビス留めに変更してください。
スレート本体は、退色・変色していて、コケも生えたりしています。
デッキブラシなどを使って、入念に掃除しましょう!
洗浄後は、スレートが踏み割れしている部分も多いので、シーリング接着剤で補修してください。(変性シリコン系)
板金のくぎ・ビス頭もシーリング処理することで、抜け落ちを防ぐことができます。
下塗り
水洗いした屋根をしっかり乾燥させてください。(2日間程度)
下塗りに使うシーラーは油性密着強化下塗りシーラーを使用してください。
シーラーはスレート本体と塗料が密着するための役割を果たし、強度も高めます。
上塗り
水性シリコン系のスレート屋根用塗料を使用してください。
水性塗料はニオイや中毒の心配がなく、保存も比較的簡単なので、扱いやすいです。
2度塗りすると耐用年数が高くなります。
縁切り
翌日以降で塗料の乾燥後に、スレート屋根の上下の重なり部分で塗料が密着している箇所をスクレーパー、カッター、皮スキなどで塗料をカットして縁切りします。
塗料がある程度乾燥しないとスレート屋根の上を歩くことができません。
また、何週間も放置してしまうと塗料が固まってしまい、縁切り作業が困難になります。
※縁切りを行わないと数年後に雨漏りが発生します。
※手作業での縁切りの代わりにスペーサーを差し込んで縁切りする場合は、下地調整後にスペーサーを差し込み、上塗り後の縁切りは行いません。(スペーサーはそのまま差し込んだままとなります。)
DIYでの屋根塗装における3種類の縁切り
屋根塗装の縁切り方法としては、3種類がありますので、それぞれの方法について紹介します。
- 手作業による縁切り工法
- 樹脂製スペーサーによる縁切り工法
- 金属製スペーサーによる縁切り工法
①手作業による縁切り工法
手作業による縁切り工法はスレート製造メーカーから推奨されています。
●メリット
手作業による縁切り工法は、スレート屋根の塗装前の状態を維持できるので、その後に塗装したことが原因の不具合が発生することはありません。
●デメリット
塗装翌日以降で塗料の乾燥後、縁切り作業を行うことになります。
塗料が乾燥すると滑りやすいので、縁切り作業を行うときに滑落リスクが高まります。
半日~1日、腰をかがめて作業するので、腰痛になるリスクもあります。
②樹脂製スペーサーによる縁切り工法
縁切りのやり残しを心配しなくてもいいようにと考えられた工法です。
下地調整後に、スレート屋根の上下方向にあるスレートの重なり部の隙間に樹脂製スペーサーを入れて、隙間を大きくして、塗装したときに塗料がくっつかないようにする工法です。
●メリット
樹脂製スペーサーが入っているところは確実に縁切り効果があります。
縁切り作業よりもスペーサーを入れる方がDIY作業としては楽です。
●デメリット
樹脂製スペーサーは完全につぶれた状態でも2mmの厚さがあります。
スレート製造メーカーは、樹脂製スペーサーを入れておくと踏み割れのリスクがあるため、推奨せず、注意喚起を行っています。
屋根を健全にするために屋根塗装のメンテナンスを行うのに、スレート屋根が踏み割れしやすくなる工法はかえって、屋根が悪くなるリスクがあります。
樹脂製スペーサー部分のスレートの踏み割れが原因で、スレートが落下した事例を動画で紹介しています。
踏み割れが原因でスレートが落下し、人や車にあたるリスクは軽視できないですね。
③金属製スペーサーによる縁切り工法
樹脂製スペーサーの踏み割れ問題を改善した縁切り工法です。
金属製スペーサーは金属特有のスプリング効果を取り入れており、人が載ったときには約1mm程度につぶれ、人が載らないときは復元してスレートの隙間を確保できる特徴があります。
※スレート製造メーカーの耐風仕様で使用する耐風クリップの厚みが1.5mmであるため、それよりつぶれるので踏み割れの心配はほとんどありません。
●メリット
スペーサーが起因のスレートの踏み割れをふせぐことができます。
ステンレス製のため、耐久性が高く、2度目の塗装時にも使用できます。(費用がかからない)
紫外線劣化・火災の不安もありません。
●デメリット
1度目の塗装時には、樹脂製スペーサーの縁切りに比べて材料代のコストアップとなります。(約2~3万円アップ)
2度目の塗装時に使用できるので、トータルではコストアップはないようです。
踏み割れ対策した金属製スペーサーが手作業の縁切りよりも安心できると思います。
金属製スペーサーについて詳しく知りたい
金属製スペーサーはスレート屋根の板金役物メーカーである(株)ヨネキンさんが製造している商品です。
REEV SPACER(リーヴスペーサー)というステンレス製(SUS304)のスペーサーです。
詳しくはこちらのQRコードを読むと、製品動画が見ることができます。
スレート屋根に詳しい板金メーカーが開発しているだけあって、スレート屋根の踏み割れ対策は理にかなっており、DIYで使用する場合、塗装時の不安が解消できるスペーサーだと思います。
どの縁切り工法がいいの?
今回紹介した3つの縁切り工法(手作業、樹脂製スペーサー、金属製スペーサー)の比較をまとめてみました。
縁切り工法の種類 | 手作業の縁切り | 樹脂製スペーサー | 金属製スペーサー |
---|---|---|---|
概要 | 皮スキ・カッター等で重なり部の塗料を切る | 樹脂製スペーサーを重なり部に差し込んで隙間を確保する | 金属製スペーサーを重なり部に差し込んで隙間を確保する |
材質 | ー | 樹脂製(ポリアセタール) | ステンレス製(SUS304) |
厚み | ー | 最厚部2mm | 0.5mm |
荷重なしのスレート隙間 | 約1~2mm | 約2.5mm | 約2.5mm |
荷重時のスレート隙間 | 約0mm | 約2.5mm | 約1.3mm |
メリット | 塗装前の状態を維持できる | ・樹脂製スペーサーは入れたままなので有無の確認できる ・スペーサーの材料代は安価 | ・金属製スペーサーは薄く、人が載るとつぶれるので踏み割れを防ぐ ・劣化しない ・2度目の塗装時にも効果あり |
デメリット | 職人によってはやり残しが発生(やり残しの確認が困難) | ・樹脂製スペーサーは厚いので踏み割れのリスクがある ・不燃ではない ・紫外線劣化する | イニシャルコストが高い |
費用目安(材工共) | 500円/㎡ | 500~700円/㎡ | 700~1000円/㎡ |
2度目の塗装時費用目安 | 500円/㎡ | 500~700円/㎡ | 0円 |
スレートメーカーの推奨 | 推奨 | 踏み割れの注意喚起 | ? |
それぞれ一長一短がありますが、「縁切りなし」よりはどれかを採用されることをオススメします。
強いて言えば、金属製スペーサーがオススメとなります。
DIY屋根塗装して、スレート屋根を踏み割ってしまっては元も子もないですから。
スレート屋根が踏み割れした場合の対策は?
DIY屋根塗装の途中で、スレート屋根を踏み割ってしまったときの対策はシーリングとなります。
DIY作業に入る前からひび割れが発生していることも結構多くあり、この場合は塗装前に下地調整としてシーリングしてください。
ひび割れたスレート屋根を新しいスレートへ差し替えすることは、プロでないと難しいのでやめておきましょう。(専用の治具も必要です。)
踏み割れ対策としては、なるべく踏み割れしない工法を採用することです。
スレート屋根の補修方法について詳しくはこちらの記事で解説しています。
「屋根材って、耐用年数以内でも割れるの?」 「スレート屋根はよく割れてますよ!!」
スレート屋根をDIYで屋根塗装するには、安全性の確保と縁切りが重要です。
スレート屋根をDIYで塗装するには、安全に作業できる建物かどうか、しっかりと判断してください。
平屋や物置などの建物ならば、慎重に作業すれば、DIYも可能だと思います。
塗料や道具などは、ホームセンターで購入可能です。
DIYする場合、縁切り作業、金属製スペーサーを使用してください。
DIYして、雨漏りするようになると、かえって、費用がかかり、何のためのDIYリフォームか、わからなくなってしまいます。
愛知県で、訪問リフォーム業者に屋根の問題を指摘された方は、弊社にお問合せください。電話でアドバイスできると思います。
神清からのお願い
記事を最後まで読んでいただきありがとうございます。
お客様の率直な感想をいただくため「役にたった」「役に立たなかった」ボタンを設置しました。
私たちは、日々屋根にお困りのお客様にとって必要な情報をお伝えしたいと考えております。今後のご参考にさせて頂きますのでご協力よろしくお願いいたします。