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瓦屋ではない雨漏り業者へ頼むと無駄なお金を払うことに。
「リフォーム業者に雨漏り補修を依頼したが、直らなかったので見てもらえますか?」とお問い合わせがありました。
お伺いしてみると瓦屋根からの雨漏りで、瓦屋根の状況は瓦屋からすると残念なシーリング補修痕が残っていました。
シーリングは本来、漆喰が施工される部分にブチューと塗られていました。(雨漏りとは関係ない場所)
ただ、瓦屋根で何か作業したという感じで、瓦屋根を汚しているだけに感じます。
これでは、雨漏りが止まるはずもありません。
こんな現場は特別かと言うと、実はそうでもないのです。
瓦屋根の構造がわかっていないリフォーム業者は多く、瓦の隙間をシーリングすれば雨漏りは直ると誤解しており、このような現場によく遭遇します。
瓦の隙間をシールしても雨漏りは止まらないので、お客様は無駄にお金を払っているのです。
お金を無駄にしないためにも、瓦屋根からの雨漏りについて原因とその修理方法について紹介します。
瓦屋根からの雨漏り症状とは?
瓦屋根が原因の雨漏りについて主な症状を紹介します。
- 軒天(のきてん)の雨染み
- 天井の雨染み
- 壁からの雨染み
それぞれどんな症状か簡単に紹介します。
軒天の雨染み
軒天とは、外壁から出ている屋根の軒先の天井部分のことで、下から見上げて見える部分のことです。
瓦屋根から雨水が浸入していると軒天に雨染みが発生します。
軒天は屋外にあるので、雨染みが発生してもすぐに室内への雨漏りにつながることは少ないです。
しかし、瓦の下へ雨水が浸入していることを示すものですので、軒天に雨染みが発生していたら、瓦屋根の修理が必要です。
天井の雨染み
瓦屋根からの雨漏りでもっとも多いのは、室内の天井に雨染みが発生することです。
室内の天井に雨染み、漏水が見られ、その真上が瓦屋根であれば、瓦屋根からの雨漏りを真っ先に疑いましょう。
天井に症状が出ているので、屋根下地・小屋裏はさらに雨漏り被害が発生している可能性が高いので、放置せず早急に雨漏り修理を行いましょう。
壁からの雨染み
壁からの雨染みだけの症状では、屋根が原因の可能性は低いです。
しかし、稀に屋根から天井ではなく、壁内へだけ浸入して、壁に雨染みが発生する場合もあります。
かなりレアケースですので、壁からのみの雨染みは瓦屋根以外を疑いましょう。
瓦屋根からの雨漏り浸入箇所/原因とは?
瓦屋根からの主な雨漏り浸入箇所/原因を紹介します。
- 谷部/谷板金のあな開き
- 瓦屋根の棟部/のし積み棟の経年劣化
- 屋根と壁の取り合い部/壁止まり部の施工不良
- 平部/瓦のズレ・割れ
- 軒先部/排水経路不足
それぞれについて簡単に紹介します。
谷部/谷板金のあな開き
谷部とは屋根面と屋根面が交わる場所で2面から雨水が流れ込むため、水量が多い場所です。
水量が多いので、雨水をスムーズに排水するために谷板金(銅製)が入っています。
長年の雨水によって谷板金の中でもよく水が流れる部分は皮膜ができず、経年劣化によって銅板にあなが開いて雨漏りが発生します。
約20年以上経過した瓦屋根で見られる現象です。
ちなみに、穴が開くのは瓦からポタポタ落ちる水滴の衝撃により銅板金が摩耗するためと言われています。(浸食/エロージョン)
瓦屋根の棟部/のし積み棟の経年劣化
日本瓦屋根の棟部(むね/屋根の頂部)では、のし瓦を数段重ねるのし積み棟が多く採用されてきましたが、経年劣化で雨漏りすることがあります。
経年で葺き土が下がることでのし瓦の角度が変わり、瓦の中央へ雨水が流れ込むようになり、雨水で葺き土を浸食し、やがて雨漏りとなります。
屋根と壁の取り合い部/壁止まり部の施工不良
瓦屋根と外壁の取り合い部では、壁止まりの部分で雨水浸入が多くなっています。
捨て水切り板金が入っていますが、その先端は外壁の中に入り込んでいるので、捨て水切り板金の先端加工の施工不良で雨漏りが発生します。
板金の加工は職人の技量にたよる部分が大きく、また、施工は隠れてしまう部分であるため注意が必要な部分です。
平部/瓦のズレ・割れ
瓦屋根の平部は比較的雨漏りは少ない場所です。
瓦のズレ・割れが発生してもすぐには雨漏りしないのですが、長期間、放置しますと雨漏りが発生します。
瓦のズレ・割れの隙間から瓦下へ雨水が浸入します。
瓦の下には防水シートが入っていますが、雨水が頻繁に浸入すると防水シートを貫通しているくぎあななどからその下の野地板へ浸入し、やがて、室内へ伝わる雨漏りとなります。
軒先部/排水経路不足
瓦の裏面に浸入した雨水は防水シート(ルーフィング)の表面を流れて、軒先部に集まります。
軒先部では、軒先水切りなどを設置して、雨水をといへ排水することで雨漏りを防いでいます。
しかし、古い施工方法(15年前までの洋瓦やセメント瓦)では軒先に軒先水切りを入れていなかったので、その慣習で軒先水切りを入れずに施工し、破風板でせき止められた雨水が浸入して雨漏りとなるケースがあります。
この場合、軒の出がある建物では軒天に雨染みが発生し、軒の出のない建物では室内へ雨漏りしてしまいます。
瓦屋根の雨漏り補修方法と費用とは?
瓦屋根での雨漏り原因は上記のようにいろいろあるので、雨漏り修理方法と費用もそれに対応する形でさまざまとなります。
もちろん、屋根をすべて葺き替えれば、屋根からの雨漏りは止まります。
しかし、予算・築年数・諸事情により、そういかないケースもありますので、ここでは、個別の補修方法の説明ではなく、補修規模のパターンをご紹介します!
- 瓦1枚から差し替え・・・25,000~100,000円
- 瓦屋根の部分補修・・・200,000~500,000円
- 瓦屋根の葺き替え・・・2,000,000~円
- 瓦屋根の葺き直し・・・1,800,000~円
次の章から詳しく解説していきます。
瓦屋根の雨漏り修理 ①瓦1枚からの差し替え
瓦交換の最小単位は瓦1枚から差し替え(交換すること)できます。
瓦1枚の差し替え費用の相場目安は、25,000~100,000円です。
※差し替える瓦の種類や場所、屋根形状などで費用は変わります。
このようにはしごで作業できる場合は、25,000円となります。
瓦の色は新旧で若干変わることはありますが、雨漏り防止には全く支障はありません。
瓦屋根の雨漏り修理 ②瓦屋根の部分補修
瓦屋根からの雨漏りの場合、多くはその周辺のみの瓦をめくって部分補修することができます。
瓦屋根の部分補修の費用相場は、200,000~500,000円です。
簡単に事例を紹介!
天井から雨漏り発生した事例です。
その真上の瓦を部分的にめくります。
瓦の下にある葺き土を撤去します。
葺き土の下の下葺材(杉皮)・野地板の状態を確認します。
野地板は劣化がなく、杉皮にあなが発生していました。
杉皮の代わりとなる新しい防水材として、改質アスファルトルーフィングを施工します。
葺き土の代わりになんばんしっくいを使い古い瓦を再施工します。
元通りに部分補修の完成です。
屋根全体を交換すると費用は高額となりますが、部分補修で費用を大幅に抑えることができます。
この部分補修できることが瓦の特徴であり、メンテナンス性が良く、ライフサイクルコストがもっとも安い屋根材と言われる由縁です。
また、部分補修の場合、古い瓦をそのまま再利用する場合と、劣化具合によっては新しい瓦を使用する場合があります。
新しい瓦でも古い瓦の一部分に使用できます。(サイズが少し異なる場合は職人技で瓦に細工して使用可能となります)
瓦屋根の雨漏り修理 ③瓦屋根の葺き替え
築後40年を超えて、瓦屋根全体が劣化している場合、瓦屋根の全面葺き替えが必要になることがあります。
瓦屋根からの雨漏りが複数個所で発生しており、屋根下地の防水シートを張り直す必要がある場合です。
瓦屋根の葺き替えの費用相場は、2,000,000~円です。
既存の瓦をめくります。
葺き土も撤去します。
新規に野地合板を設置します。
新規の改質アスファルトルーフィングを設置します。
新しい瓦として、F形防災瓦を施工して葺き替えの完成です。
葺き替えを提案した理由としては、今後も長く住み続けるとのことでしたので、雨漏りの部分補修だけではなく、葺き替えで屋根の不安な部分を解消してもらいました。
瓦屋根の葺き替え工事手順について動画でも紹介しています。
瓦屋根の雨漏り修理 ④瓦屋根の葺き直し
瓦屋根の全面葺き替えを検討する上で、瓦屋根の葺き直しを行うこともあります。
葺き直しとは、既存の瓦を再利用して、屋根全体を防水シートから新しく施工し直すというものです。
瓦屋根の葺き直しの費用相場は、1,800,000~円です。
既存の瓦を再利用するので、瓦代は安価になりますが、既存の瓦を移動する手間が大きく、葺き替えと比較して1割程度安価となる工事です。
狭小地や接続道路がないなどで既存の瓦を捨てる費用が大幅にかかる場合に提案します。
新しい瓦に代えた方が防災機能があったり、瓦自体の耐久性が向上したりとメリットの方が大きいので、立地が悪い場合に検討する工事です。
簡単に紹介します。
瓦をはがして、違う屋根面や足場、地面などの周辺に保管します。
古い瓦桟木を取り除いて、古いルーフィングの上をきれいに掃除します。
きれいに掃除した上で、新しいルーフィング新しい桟木を施工します。
瓦以外は新しい部材を使用して完成です。
施工方法は現在の施工で行うため、屋根の耐久性は大幅に向上します。
瓦屋根の雨漏り修理で、「葺き替え」と「葺き直し」のどちらがいいの?
瓦屋根の雨漏り修理を屋根全体で行う場合、葺き替えと葺き直しのどちらがいいのでしょうか?
葺き直しよりも葺き替えが断然オススメです!
以下のような利点があります。
- 瓦の形・色を新しく選ぶことができる
- 40年前にくらべて、瓦自体の性能が大幅に向上している
- 費用のメリットは1割程度なので、新しい瓦の方がお得である
現在の瓦は防災瓦となっており、耐風性能が大幅に向上しています。
瓦の焼成温度も昔にくらべて高く、耐久性も向上しています。
新しい瓦で葺き替えした方が、住まい手にとってはメリットが大きいです。
では、葺き直しを提案する場合は以下となります。
- お客様の思い入れがある瓦
- 景観にかかわる瓦
- 敷地条件により、古い瓦の捨て代や新しい瓦の搬入代が高く、葺き替えが葺き直しに比べて大幅に高くなる
葺き替えか葺き直しか悩まれる場合は、瓦工事店に相談されることをオススメします。
瓦屋根プロとして「お伝えしたいこと」①雨漏り原因として間違ったメンテナンスが多い
雨漏り原因として意外に多いのが、間違ったメンテナンスです。
間違ったメンテナンスは主に以下の2つです。
- 漆喰の「重ね塗り」
- 瓦の隙間をふさぐコーキング
日本瓦屋根では、棟部に漆喰が塗ってあり経年ではがれるため、漆喰のメンテナンスが行われます。
漆喰のメンテナンスは古い漆喰を撤去して、新しい漆喰を塗る「塗り直し」を行います。
しかし、古い漆喰を撤去せず、新しい漆喰を塗る「重ね塗り」を行う業者がおり、雨漏りする原因の1つとなります。
漆喰の重ね塗りによる雨漏りについて詳しくはこちらの記事で解説しています。
屋根瓦の重要な修理のポイント!漆喰補修工事のすべてを解説します
漆喰の重ね塗りによる雨漏りについて動画でも紹介しています。
瓦は瓦同士の重なりで雨水浸入をふせいでいます。
そのため、瓦同士の隙間は重なりに浸入した雨水の排水経路になっています。
瓦の隙間が雨漏りの原因と勘違いされる業者がおり、瓦の排水経路である隙間をコーキングして、かえって雨漏りが悪化することがあります。
瓦の排水経路である隙間をコーキングすることも雨漏りする原因の1つです。
間違った瓦のコーキングによる雨漏りについて詳しくはこちらの記事で解説しています。
瓦屋根からの雨漏り コーキングでは止まらないですよ。【愛知県美浜町】
瓦屋根プロとして「お伝えしたいこと」②瓦屋根の良さは部分修理
瓦屋根の雨漏りの原因と補修方法は、実際さまざまなのです。
瓦屋根の構造・特徴を充分に理解している工務店さん、リフォーム屋さんは以外と少ないのです。
ほとんどのケースで瓦屋根を軽い板金屋根に葺き替えする雨漏り修理を提案されています。
瓦屋からすれば、瓦1枚を交換すれば直る雨漏りでも大規模改修して板金屋根になってしまいます。
だから、瓦屋根で雨漏りした場合、部分補修が可能かどうか、よく検討されることをオススメします。
知っていました?
庭先においてある瓦は、補修交換用の瓦なんです!
もともと、部分補修できるように準備されているのです。
むかしからの瓦屋根のしくみを理解した上で、雨漏り補修することが必要です。
つまり、瓦屋根の雨漏り補修は、必ず瓦工事業者に依頼してください!
必ずお施主さまのご要望に答えることができると思います。
まとめ:瓦屋根の雨漏りの原因はいろいろあり、シーリングでは直らない場合が多い。
瓦屋根の雨漏りは瓦屋根のシーリングでは、直らない場合が多いです。
一時的に雨漏りが止まっても、根本解決にはなっていないはずです。
瓦屋根構造を理解している瓦屋根施工業者に補修をご依頼ください。
何かありましたら、お気軽にお問い合わせください!
神清からのお願い
記事を最後まで読んでいただきありがとうございます。
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私たちは、日々屋根にお困りのお客様にとって必要な情報をお伝えしたいと考えております。今後のご参考にさせて頂きますのでご協力よろしくお願いいたします。

