重い屋根と軽い屋根はどちらが地震に強い?耐震性向上の対策も解説

Dr.神谷
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  • みなさま。こんにちは。
    屋根から人の笑顔を作りたい!!!神清(かみせい)のDr.神谷です。

    弊社は、高浜市・半田市にある創業150年老舗三州瓦の生産・販売・工事を行っている会社です。
    年間200棟以上の雨漏り調査・修理を行っています。
    建築業界誌「日経アーキテクチュア」の連載記事「新次元!雨漏り対策」を執筆!

本記事はこんな人にお勧めします。

  • 重い屋根と軽い屋根はどちらが地震に強いのかを知りたい
  • 重い屋根と軽い屋根の耐震性を向上させる方法を知りたい

この記事で伝えたいこと

この記事は、「重い屋根と軽い屋根はどちらが地震に強いのかを知りたい」「重い屋根と軽い屋根の耐震性を向上させる方法を知りたい」という方に向けて書かれています。

重い屋根と軽い屋根はどちらが地震に強いのでしょうか?
近年は軽い屋根が人気のようですが、軽い屋根は高い耐震性につながっているのかも気になるところですよね。

本記事では、重い屋根と軽い屋根はどちらが地震に強いのかを解説していきます。耐震性の向上には何が重要であるのかも解説していますので、ぜひ参考にしてくださいね。

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重い屋根と軽い屋根はどちらが地震に強い?

「重い屋根と軽い屋根ではどちらが地震に強い?」とあまりに漠然とした話をされる業者さんがいます。

建物の前提条件なしに、屋根材の重量だけを比較しても地震に強いかは判断できません。

同じ建物において、軽い屋根と重い屋根を比較すると地震時の揺れが小さくなるのは軽い屋根とは言えます。

ただ、「地震に強い」を「建物の被害がない」と言う意味で話しているとすると軽い屋根だから「地震に強い」とは言えません。

屋根の重さは、建物の地震被害の有無に影響を与える要因の1つでしかありません。

それ以外にも地盤の強さ、基礎の強さ、柱等を固定する耐震金物、耐力壁の量・バランス、建物の劣化の有無など地震被害に影響を与える要因はたくさんあります。

重い屋根でも2000年以降に建てられた建物や、それ以前の耐震基準のもとで建てられていても耐震補強工事が施されている建物は大きな地震が発生しても「地震に強い」と言えます。

 

重い屋根と軽い屋根の定義

建築基準法では屋根材の種類によって、重い屋根と軽い屋根と定義して分類しています。

重い屋根 → 粘土瓦(陶器瓦)・セメント瓦

軽い屋根 → 金属屋根材・化粧スレート

木造住宅では地震力の水平力に対して耐えることができるように壁・柱などを配置すること必要です。

住宅の床面積に対して水平力に耐えるために壁量の割合が定められています。

その必要な壁量は上記分類によって係数が変わっており、屋根材の種類で必要壁量は異なっています。

 

重い屋根が地震に弱く軽い屋根が強い訳ではない

先ほども触れましたが、「重い屋根が地震に弱く、軽い屋根が強い」という訳ではありません。

重い屋根か軽い屋根だけでは、その建物が地震に強い・弱いとは一概に言えないのです。

建物が地震に強いか判断するには、(実際の壁量)/(必要壁量)で数値が大きい方が強いと判断することができます。

※壁量とは、耐力壁の量のこと。
※耐力壁とは、地震や台風などの水平の力から建物を支える役割を持つ壁のこと。

建築基準法では(実際の壁量)/(必要壁量)≧1となっており、1~1.24までの建物を耐震等級1となります。(厳密には少し計算方法が変わります)

1.25~1.49までを耐震等級2、1.5~を耐震等級3としており、壁量によって建物の強さを等級分けしており、壁量が重要となります。

屋根材の重さだけで地震に強い・弱いということは間違っています。

壁量以外にも壁量の配置バランスや地盤・基礎の強さ、基礎と建物構造をつなぐ金物の有無などにも耐震性は影響を受けます。

次の章では、必要な壁量の求め方などを解説します。

 

耐震性で重要なのは必要壁量

建築基準法では、地震に抵抗するために必要壁量が定められています。

係数を用いた地震力に対する必要壁量の計算方法を紹介します。

  • ①床面積の算出
  • ②重い屋根と軽い屋根の係数確認
  • ③床面積(㎡)×係数(cm/㎡)×0.01=必要壁量(m)

 

①床面積の算出

地震力に対する必要壁量を計算するには、床面積の算出が必要です。

1階の床面積、2階の床面積をそれぞれ求めます。

面積は柱心で計算します。

 

②重い屋根と軽い屋根の係数確認

屋根材ごとに係数が定められていますので紹介します。

陶器瓦・セメント瓦などの重い屋根の1階は33cm/㎡、2階は21cm/㎡。

金属屋根材・化粧スレートなどの軽い屋根の1階は29cm/㎡、2階は15cm/㎡。

 

③床面積(㎡)×係数(㎝/㎡)×0.01=必要壁量(m)

床面積と屋根材ごとの係数がわかれば、必要壁量を求めることができます。

床面積(㎡)×係数(cm/㎡)×0.01=必要壁量(m)

求めた必要壁量の長さ以上を1階、2階のX軸Y軸のそれぞれが満たしていることが必要です。

地震ではどちらの方向にも揺れるため、X軸Y軸とも必要壁量以上が求められています。

 

必要な壁量の計算方法について詳しくはこちらの記事で解説しています。

重い屋根と軽い屋根を係数を用いて比較!必要な壁量の計算方法とは?

 

重い屋根から軽い屋根への変更は耐震性向上になる?

重い屋根(瓦、セメント瓦等)から軽い屋根(金属屋根、スレート等)に変更することで、建物(屋根)の重量を小さくすることができます。

変更前と比較して、相対的には建物を揺らす地震力の低下(減震)にはつながります。

しかし、建物の耐震性は建物の重量に見合うだけの建物の強度と耐力壁のバランスによって決まってきます。

そのため、一概に屋根軽量化したから耐震性を満たすとか安全であるとは言えません。

例えば、昭和56年前の旧耐震基準の建物において、重い屋根から軽い屋根へ変更しても新耐震基準(昭和56年以降)を満たすことはほとんどないからです。

必要壁量を満たすように壁補強することや建物下の地盤や基礎の強度、基礎との連結力(耐震金物設置など)の影響も大きいです。

屋根軽量化は減震にはなりますが、旧耐震基準の建物を新耐震基準の耐震性に適合させるほどの向上にはなりません。

 

瓦屋根が地震に弱いはウソ?

先ほども少し説明しましたが、「瓦屋根が地震に弱い」のはウソです。

倒壊する建物の多くが瓦屋根であることから「瓦屋根が地震に弱い」とされていますが、正しくは「古い建物(旧耐震基準(1950~1981)の建物)が地震に弱い」のです。

屋根材が瓦であろうと軽い金属屋根であろうと古い建物(旧耐震基準の建物)であれば、巨大地震で震度6、7の揺れが発生したエリアの建物は倒壊する可能性が高いです。

なぜなら、旧耐震基準では震度5で倒壊しないような建物の強度を求めており、ほとんどの古い建物はそのギリギリの強度で建てられているからです。

旧耐震基準の建物は地震対策が必要であり、そのためには、まず耐震診断を行いましょう。(各地方自治体が耐震診断に対する補助制度を用意しています。)

屋根の軽量化よりも建物の強度を高める耐力壁を増加する耐震改修が必要であり、費用的にも安価となります。

 

新築であれば、瓦屋根の重さに合わせて建物の強さで建設されるため、地震で倒壊することはありません。

瓦屋根の建物でも他の屋根材と同様に躯体の強度を上げることで耐震等級1、2、3と選択できるため、地震対策で耐震性を高めたい方は、耐震等級3(耐震等級1の1.5倍の強さ)を選びましょう。

また、瓦屋根は耐久性(60~年)が高く、省メンテナンスなのでランニングコストを抑えることができます。

瓦屋根が重い分だけ躯体のイニシャルコストは他の屋根材に比べて高くなりますが、30年以上住むことを考えるとライフサイクルコストではもっとも安価となります。


瓦屋根が地震に弱いとされる理由について詳しくはこちらの記事で解説しています。

瓦屋根が地震に弱いとされる理由は?注目の防災瓦についても解説

 

重い屋根か軽い屋根かよりもバランスが重要

くり返しになりますが、屋根を軽くするだけが耐震につながるわけではありません。

窓・ふすま・ドアなどの開口部の部分は耐力壁とはなりませんので、家全体の開口部の位置やバランスを検討するだけでも耐震性を上げることができます。

昔のように南側を窓だらけにすると家の壁量のバランスが悪くなり、巨大地震が来たときに大きな建物被害が発生する可能性が高いです。

家のバランスを確保するためには、耐震診断や構造計算を行うことも有効です。

構造計算とは、建物の構造部分にかかる自重や積載荷重、多様な外力(地震力、積雪、風圧など)に対して、構造部材の応力や変形を計算して、安全であることを確かめることです。

 

重い屋根を軽い屋根にする前に耐震診断を

重い屋根を軽い屋根に葺き替えて軽量化を検討しているなら、その前にまずは耐震診断を行いましょう。

2000年以降に建てた建物であれば、耐震診断の必要性は低いのですが、屋根軽量化を検討する必要性も低いです。

2000年以前の建物であれば、耐震診断の結果に基づいて、必要な箇所に適切な補強をすることが長く安心して住むことにつながります。

屋根軽量化は耐震性を高めるためではなく、建物全体のメンテナンス計画の中で屋根の大規模修繕が必要となるタイミングで検討しましょう。

大規模改修を行うときには、屋根軽量化、断熱改修、防水性向上、その後のランニングコスト低減などをトータル的に検討して、新しい屋根材を選びましょう。

 

瓦屋根にしたいなら防災瓦はオススメです

現在、古い土葺き工法の瓦屋根であれば、瓦下に入っている葺き土を撤去するだけでも約1/2の軽量化になります。

その後の雨音問題やメンテナンス費を無くすために、新規屋根材を瓦とする場合には防災瓦がオススメです。

防災瓦は一般的な瓦に比べて台風や地震などに強い瓦のことで、ロック式と呼ばれる工法で瓦同士を連結することにより、耐震性能が大幅に強化されているのが特徴です。

防災瓦の特徴を紹介します。

【メリット】

  • 地震や台風でもズレない、落下しない
  • 塗装などのメンテナンスは不要
  • 従来の瓦より軽い
  • 防水性が高い
  • 遮音性が高い
  • 耐久性が高い(60~年)

 

【デメリット】

  • イニシャルコストはスレート屋根に比べると高い
  • 割れる可能性はある
  • スレートや金属屋根と比較すると重い

 

新規屋根材を瓦にするなら防災瓦がオススメです。

瓦屋根の地震対策について詳しくはこちらの記事で解説しています。

瓦屋根に地震対策は必要?屋根屋が効果的な対策を徹底解説

 

【まとめ】耐震性は屋根だけの問題ではない

屋根の重さは、建物の地震被害の有無に影響を与える要因の1つでしかありません。

それ以外にも地盤の強さ、基礎の強さ、柱等を固定する耐震金物、耐力壁の量・バランス、建物の劣化の有無など地震被害に影響を与える要因はたくさんあります。

屋根の軽量化よりも建物の強度を高める耐力壁を増加する耐震改修が必要であり、費用的にも安価となります。

重い屋根を軽い屋根に葺き替えて軽量化を検討しているなら、その前にまずは耐震診断を行いましょう。

屋根軽量化は耐震性を高めるためではなく、建物全体のメンテナンス計画の中で屋根の大規模修繕が必要となるタイミングで検討しましょう。

 

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