洋瓦とは?種類とメンテナンス時期・方法・費用を詳しく解説

Dr.神谷
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  • みなさま。こんにちは。
    屋根から人の笑顔を作りたい!!!神清(かみせい)のDr.神谷です。
    弊社は、高浜市・半田市にある創業150年老舗三州瓦の生産・販売・工事を行っている会社です。年間200棟以上の雨漏り調査・修理を行っています。
    建築業界誌「日経ホームビルダー/日経アーキテクチュア」の連載記事「新次元!雨漏り対策」を執筆!
    屋根の業界新聞「日本屋根経済新聞」の連載記事「瓦工事店は‟屋根のドクター”」を執筆中!

本記事はこんな人にお勧めします。

洋瓦にお住まいでメンテナンスを検討している人。

洋風の建物にお住まいで屋根材が何かわからない人。

洋瓦のメンテナンス時期・方法・費用を知りたい人。

この記事で伝えたいこと

築25~30年程度経過洋風の建物には、洋瓦が多く使われています。この記事では「洋瓦にお住まいでメンテナンスを検討している人」「洋瓦のメンテナンス時期・方法・費用について知りたい人」向けに書かれています。

外壁・樋はメンテナンスしても、屋根はメンテナンスした記憶がないのではないでしょうか?洋瓦でもずっとメンテナンスフリーではありません。

洋瓦にはいくつかの種類があり、今後のメンテナンス時期が変わってきますので、是非、ご参考にしてください。

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洋瓦とは?

洋瓦とは、洋風な建物に使用される瓦という漠然としたイメージはありますが、しっかりとした定義はありません。

広範囲な使い方での洋瓦では以下の屋根材が該当します。

  • 粘土瓦
  • セメント瓦・コンクリート瓦(モニエル瓦)

 

※金属屋根材で瓦に似せたプレス成型瓦は特殊なケースですので、ここでは除外します。

狭い範囲での使い方としては、「洋風な建物で使用される粘土瓦」となります。

粘土瓦とセメント瓦・コンクリート瓦(モニエル瓦)では、メンテナンス時期・方法が大きく異なりますので、分けて考える必要があります。

 

洋瓦の種類 ①粘土瓦

粘土瓦の形状の種類は主に3つ(J形、F形、S形)ですが、洋瓦として使用される種類としては、F形、S形の2種類となります。

F形瓦

F形瓦とは、イメージ的にはフラットな形状の瓦のことですが、実は4種類のF形瓦があります。※F形のFは、平面を意味するフラットに由来

洋風建物の屋根に適していますが、スッキリとしたデザインとなるので、和風建物にも採用されています。

 

●FFタイプ(フルフラットタイプ)

F形フルフラットタイプは瓦の表面がほぼフラットになっています。

 

●FUタイプ(Uタイプ)

瓦の表面はほぼ平なのですが、両端に立ち上がることで断面がU形となり、Uタイプと呼ばれています。

 

 

●FMタイプ(Mタイプ)

 

瓦の表面に2つ山があり、断面がM形となるため、Mタイプと呼ばれています。

2025年3月時点では、これら3つのタイプは生産・販売されております。

 

●特殊タイプ

 

F形の4つ目のタイプとして、特殊タイプがあります。

特殊タイプとは、J形、S形、F形(3タイプ)のどれにも入らない瓦をすべて特殊タイプと呼んでいます。

洋風建物にマッチするように数十種類の特殊タイプが生産・販売されましたが、2025年3月までに生産中止となっております。

 

S形瓦

S形瓦とは、大きな1つの山谷がある瓦です。※S形のSは、スパニッシュに由来しており、スパニッシュ瓦(上・下2枚を組み合わせる)を一体化させた瓦

洋風建物・大型物件ではよく採用されており、洋瓦の定番となっておりましたが、現在では、F形瓦に主役の座を明け渡した形となっています。

2025年3月時点では、これらS形瓦は生産・販売されております。

 

洋瓦の種類 ②セメント瓦・コンクリート瓦(モニエル瓦)

20年以上前では、セメント瓦・コンクリート瓦(モニエル瓦)と呼ばれるセメントを主剤とした屋根材も比較的多く採用されていました。

洋瓦と思われている中には、一定数のセメント瓦・コンクリート瓦(モニエル瓦)が入っています。

現在ではセメント瓦・コンクリート瓦の生産・販売は中止となっています。

セメント瓦・コンクリート瓦の特徴としては、表面が塗装・着色されているので、10年に1回程度塗装メンテナンスが必要となります。

また、耐久性の観点で築後30年が葺き替え時期となっています。

そのため、25~30年経過した洋瓦がセメント瓦・コンクリート瓦だった場合は、メンテナンスとして葺き替えを検討することが必要です。

台風などで数枚破損した場合は、破損部の交換となりますが、在庫・代替品がないため、セメント瓦・コンクリート瓦の中古品による交換が一般的です。

中古品が手に入らない場合で予算がない場合は、玄関上などの小さい面積の屋根を葺き替えして、はがした瓦で交換することもあります。

 

洋瓦の種類と廃盤品についてまとめてみました。

洋瓦の種類種類タイプ生産状況
粘土瓦F形瓦フルフラットタイプ
Uタイプ
Mタイプ
生産中
代替品あり
粘土瓦F形瓦特殊タイプ
種類多数
廃盤品
在庫なしも多数
粘土瓦S形瓦49枚版生産中
粘土瓦フレンチ
フランス瓦
廃盤品
在庫なし
セメント瓦平型平型廃盤品
コンクリート瓦(モニエル瓦)ホームステッド
ニューシャプレ
廃盤品
中古品のみ
コンクリート瓦(モニエル瓦)二山センチュリオン
ヴィラクラシック
廃盤品
中古品のみ

 

洋瓦としては、圧倒的に粘土瓦が多いので、これ以降は粘土瓦の洋瓦について詳しく紹介していきます。

洋瓦の耐久性は高い

粘土瓦製の洋瓦は耐久性が高く、塗装メンテナンスは不要なため、コストパフォーマンスが高い屋根材です。

洋瓦は成形した粘土を高温(1100℃以上)焼成して製造するので、劣化しにくい屋根材です。

また、表面は塗装しておらず、釉薬で着色しているので、お茶碗やお皿と同じでほとんど変色しません。

日本最古の瓦は1400年前の瓦が現存して屋根で使用されており、瓦の耐久性は高いです。

また、瓦屋根としても、日本建築学会の建築工事標準仕様書JASS12屋根工事において、一般仕様で瓦屋根の耐用年数は60年と定められています。

他の屋根材の屋根が30年程度となっている中で、2倍以上の耐用年数です。

瓦屋根の場合、屋根材の下に位置する防水シートが傷んだとしても、部分的に瓦をはがして補修することが可能なので、全面的な大規模改修は60年となっています。

 

洋瓦は塗装メンテナンスが不要で経済的

洋瓦は釉薬で着色していますので、変色や色落ちはほとんどなく、塗装メンテナンスは不要です。

一方で、粘土瓦以外の屋根材(スレート・ガルバリウム鋼板・セメント瓦等)は塗料で着色されているので、10年程度で色落ち・変色が発生し、塗装メンテナンスが必要となります。

その都度、足場代を含めた塗装費用が発生するため、メンテナンス費用が高額になります。

洋瓦は塗装メンテナンスが不要なため、メンテナンス費用がほとんど必要なく経済的な屋根材です。

 

洋瓦のメンテナンス時期

洋瓦のメンテナンス時期については以下の表をご覧ください。

メンテナンス方法メンテナンス時期
破損・ズレた瓦の差し替え台風などの自然災害後
塗装メンテナンス不要
部分補修雨漏りしたとき
葺き替え雨漏りが複数個所から発生したとき
大規模改修(葺き替え)築後60年程度

洋瓦は塗装などの定期メンテナンスは不要です。

しかし、台風などの強風で部分的にズレ・はがれ・飛来物による破損などが発生することもあります。

自然災害で洋瓦に被害が発生したときは洋瓦の交換メンテナンスが必要です。

また、雨漏りしたときには、部分補修が必要です。

一度に複数化箇所から雨漏りしたときには、瓦下の防水シートが劣化しており、洋瓦屋根の寿命が来ていますので、葺き替えのメンテナンス時期となります。

60年程度経過した洋瓦屋根は、大規模改修で葺き替えを検討するメンテナンス時期とお考えください。

 

洋瓦のメンテナンス方法と費用

洋瓦のメンテナンス方法について紹介します。

  • 洋瓦のズレ・破損・はがれの差し替え
  • 洋瓦の雨漏り箇所の部分補修
  • 洋瓦の葺き替え

 

洋瓦の主なメンテナンス方法は3つありますので簡単に解説します。

洋瓦のズレ・破損・はがれの差し替え 費用は10万円程度

洋瓦が飛来物などで数枚破損した場合では、その部分のみ瓦を撤去して、新品の瓦に差し替える交換を行います。

洋瓦の破損が数枚の場合、差し替え費用は10万円程度です。

新品の瓦は釘留めすることができないので、周辺の瓦と接着させることで次の飛散を回避します。

 

また、洋瓦の棟瓦が数枚、強風で飛散した場合は棟瓦全体を確認し、棟芯材の劣化等が見られたら、棟瓦全体を一旦撤去し、棟芯材を交換して、ビスで留め付ける葺き替えを行うこともあります。

洋瓦に強風で破損・はがれなどの被害が発生した場合、補修費用を火災保険でまかなえる場合もあります。

 

洋瓦の雨漏り箇所の部分補修 費用は30~万円程度

洋瓦屋根から雨漏りが発生した場合、雨漏りが一箇所からなら、洋瓦を部分的に撤去し、瓦下の防水シートの不具合を補修する部分補修を行います。

屋根の形状・洋瓦の種類にもよりますが、洋瓦の部分補修費用は30~万円程度です。

既存の洋瓦を撤去し、その下にある瓦桟木を撤去、防水シート・野地板の状態を確認し、劣化部分を交換し、新しい防水シート・瓦桟木・既存瓦を復旧して完成です。

部分補修した新しい防水シートと既存防水シートのつなぎ目から雨漏りするリスクがありますので丁寧な施工が必要です。

 

洋瓦の葺き替え

洋瓦屋根からの雨漏りが複数個所発生した場合、防水シートの寿命が来ている可能性が高く、屋根全体の葺き替えを検討してください。

既存洋瓦をすべて撤去し、瓦桟木・防水シートを撤去して、野地板の状態を確認します。

野地板の劣化部を交換後、新しい防水シート・屋根材を設置して完成です。

洋瓦の葺き替え費用については次の章で詳しく紹介します。

 

洋瓦の葺き替えを行う費用相場

洋瓦の葺き替えを行う場合の費用相場をご紹介します。

新規の屋根材・屋根形状(大きさ・勾配)・建物立地によって費用は変わりますので目安とお考えください。

葺き替えパターン費用相場
洋瓦⇒F形瓦200~300万円
洋瓦⇒スレート屋根170~270万円
洋瓦⇒ガルバリウム鋼板屋根(縦葺き)180~280万円
洋瓦⇒断熱材付ガルバリウム鋼板屋根(横葺き)220~320万円

※屋根面積約100㎡、2階建てを想定。足場代の費用は含まない。

洋瓦の葺き替えでは、新しい屋根材は洋瓦以外の別の屋根材を設置することも可能です。

新しい屋根材を洋瓦にする場合は、F形瓦とする場合が多く、瓦以外の屋根材へ変更する場合は、スレート屋根・ガルバリウム鋼板屋根(縦葺き)・断熱材付ガルバリウム鋼板屋根(横葺き)とすることもあります。

屋根材が変われば費用もかわりますので、目安を紹介しました。

洋瓦から新しい屋根材にする場合は、屋根重量が軽くなるメリットがありますが、いくつかのデメリットもあります。

葺き替えパターンメリットデメリット
洋瓦⇒F形瓦・葺き替え後のメンテナンス費用が少ない・葺き替え費用は中程度
・屋根は軽くならない
洋瓦⇒スレート屋根・屋根は軽くなる
・葺き替え費用はもっとも安価
・スレートのメンテナンス費用が発生する
・夏の暑さが気になる
・既存屋根の不陸に弱い
洋瓦⇒ガルバリウム鋼板屋根(縦葺き)・屋根は軽くなる
・葺き替え費用は安価
・ガルバリウム鋼板のメンテナンス費用が発生する
・夏の暑さ・雨音が気になる
・既存屋根の不陸に弱い
洋瓦⇒断熱材付ガルバリウム鋼板屋根(横葺き)・屋根は軽くなる
・葺き替え費用は高額
・ガルバリウム鋼板を塗装メンテナンスする費用がかかる
・雨音が気になる
・既存屋根の不陸に弱い

洋瓦を葺き替えする場合、F形瓦を全体的に検討してオススメです。

既存の洋瓦を設置した屋根は、経年での不陸が発生しており、スレート・ガルバリウム鋼板では不陸調整ができないのでオススメできないです。

 

洋瓦から洋瓦で葺き替えるときの注意点

現在、洋瓦を新築で施工する場合、2022年に改定された建築基準法の告示に対応したすべての瓦を留め付ける施工方法(ガイドライン工法)となっております。

巨大地震・巨大台風でも瓦屋根の被害が発生しないように改定されたもので、安全安心の瓦屋根が実現できます。

洋瓦へ葺き替える場合、ほとんどの瓦工事店はガイドライン工法で施工すると思いますが、中には、法律の範囲外だからと旧工法のままで施工する業者がいないとも限りません。

葺き替えを依頼する際は、「ガイドライン工法で施工してほしい」と伝えておくことをオススメします。

 

洋瓦を葺き替えるときに補助金はある?

耐風性能の低い瓦屋根を強風対策として葺き替えるときに補助金が使える可能性があります。

ただし、補助金の対象となるための条件が設定されており、それを満たしている瓦屋根となります。

窓口は各自治体となっていますので、住んでいる自治体の窓口で確認しておきましょう。

住宅・建築物安全ストック形成事業で瓦屋根の耐風診断・瓦屋根の耐風改修工事に対する補助金です。

 

洋瓦をメンテナンスするときに火災保険は使えるの?

洋瓦をメンテナンスするときに火災保険で補修費用をまかなえる場合があります。

火災保険は、風災によって建物の被害が発生した部分を直す場合に、その費用を補償するものです。

台風などの強風で、飛来物によって洋瓦が割れたり、洋瓦が飛散してしまったりするケースでは火災保険が使える可能性があります。

一方で、洋瓦に被害がなく、強風雨の吹き込みで雨漏りが発生した場合は火災保険が適用されない可能性が高いです。

また、風災による事故が発生しているかどうかは、火災保険申請後に鑑定人が現場の状況を確認して判断することになります。

かならずしも、洋瓦をメンテナンスするときに火災保険が使えるとは限らないので、修理業者の「火災保険でメンテナンス費用がまかなえる」というセールストークに騙さらないように注意してください。

 

まとめ 築30年を経過した洋瓦は葺き替えを検討しよう!

洋瓦を広範囲で考えると粘土瓦とセメント・コンクリート瓦の2種類があります。

洋瓦屋根の耐用年数は、粘土瓦60年、セメント・コンクリート瓦30年となっています。

築30年を経過したセメント・コンクリート瓦の洋瓦は、塗装ではなく、葺き替えを検討してください。

粘土瓦の洋瓦は、複数個所で雨漏りしたら葺き替えを検討しましょう。

洋瓦は廃盤品が多いので不具合が発生した場合、築年数によって、部分補修か葺き替えを選択することをオススメします。

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