目次
ガルバリウム鋼板はどんな屋根材?
ガルバリウム鋼板とは?・・トタンを錆びにくくしたものです。
ガルバリウム鋼板とは、めっき鋼板の中の1つです。
「トタン」、「ぶりき」の仲間なのです。
分類名称としては、溶融55%アルミニウム‐亜鉛合金めっき鋼板です。
その中の日鉄住金鋼板(株)の商品名「ガルバリウム鋼板」が一般名称として、使われています。(短縮して「ガルバ」とも呼ばれます。)
アルミニウムの特徴である耐食性、加工性、耐熱性と亜鉛の特徴である犠牲防食機能により、トタンよりも3倍程度、耐久性が優れているめっき鋼板です。
塗装ガルバリウム鋼板の構成図を下に示します。
(引用:日本金属屋根屋根協会)
鋼板の表裏面を55%アルミニウム-亜鉛合金でめっきしています。
その上に樹脂塗装が施されています。
トタンとは?・・「カラー鉄板」のことです。
トタンとは、溶融亜鉛めっき鋼板のことです。
めっき鋼板の中でも、耐食性、加工性、安さの理由から広く使用されていました。
トタンが建材に使用されたのは、犠牲防食の効果が高かったからです。
犠牲防食とは、亜鉛めっき層に傷がついて、鋼板(鉄)が錆びる前に、亜鉛が溶け出すことで、鋼板(鉄)の錆びを遅らせる機能のことで、トタン屋根は都市部では、推定耐用年数7~9年程度と言われています。
トタンの表面・裏面を塗装した、通称「カラー鉄板」が屋根では、多く使用されてきました。
安価で、寒さにも強かったので、寒冷地では、トタン屋根が標準だったとようです。
しかし、赤錆びが5年程度で発生するので、こまめに塗装が必要でした。
ガルバリウム鋼板はそのトタンの3倍以上耐久性が高いので、トタンの代用として、屋根に使用されるようになりました。
ガルバリウム鋼板はなぜ耐久性の高い屋根材なの?
鋼板は鋼鉄(こうてつ)を薄く伸ばした板のことです。
鋼板は炭素をわずかに含む鉄(てつ)の合金(いわゆる・鉄)なので、水等によって、すぐに錆びます。
めっき鋼板は耐食性に優れた薄いめっき層で鋼板が錆びることを防いるもののことです。
ガルバリウム鋼板は、アルミニウム55%+亜鉛43.4%+ケイ素1.6%のめっき層となっています。
アルミニウムがめっき層表面に強い不動態被膜(腐食作用に抵抗する被膜)を形成してめっき層を保護する役割を果たしています。
このアルミニウムの不動態被膜と亜鉛の腐食生成物とが相まって、めっき層の腐食進行を妨げる性能が高まり、亜鉛だけよりも高い防食性を発揮する仕組みとなっています。
ちょっと、専門用語でわかりにくいですがアルミニウムと亜鉛のいいとこどりみたいな感じです。
ガルバリウム鋼板の屋根材としての4つのメリット
ガルバリウム鋼板屋根材の4つのメリットを解説します。
- 錆に強い
- 耐久性が高い
- 軽い
- デザイン性が高い
錆びに強い
今までの屋根材で使用していたトタン(カラー鉄板)よりは、3倍以上は錆びにくいです。
屋根材に赤錆びが発生するとその家の印象は古びた感じとなってしまいます。
赤錆びが発生しずらいというのは、ガルバリウム鋼板のメリットです。
※錆びにくいと言っていますが、錆びない訳ではもちろん、ありません!
耐久性が高い
ガルバリウム鋼板は、アルミニウムと亜鉛の合金・めっき層が優れていて、耐久性が高いので、赤錆が発生しにくくなっています。
トタンの場合、5~10年程度だったとすると、ガルバリウム鋼板の場合、10~15年と長寿命になっています。
※メンテナンスフリーと思っている方も多いですが、そんなことはありません!
軽い
屋根材の中では、もっとも軽いです。(約5㎏/㎡)
スレート屋根・樹脂繊維セメント屋根材と比較しても、1/4の重さです。
デザイン性が高い
立平葺きなどは、緩い屋根勾配(5/100以上)でも対応可能です。
直線的な印象の屋根からアール状の屋根まで、多様なデザインにも、対応しています!
ガルバリウム鋼板の屋根材としての6つのデメリット
ガルバリウム鋼板屋根材の6つのデメリットを解説します。
- 初期費用(イニシャルコスト)が高い
- メンテナンス費用が高い
- 音がうるさい
- 強風で飛散しやすい
- 保証のハードルが高い
- 錆ることがある
以下、デメリットについて簡単に紹介します。
初期費用(イニシャルコスト)が高い
ガルバリウム鋼板屋根の材工価格は、スレート屋根とくらべると高めとなっています。
瓦屋根と同じぐらいです。
メンテナンス費用も高い
「ガルバリウムはメンテナンスフリー!」
という説明を聞いたり、記事を見たりします!
でも、これは間違いです!
これは、ガルバリウム鋼板を製造している協会の資料にも、明確に記載されています!
ガルバリウム鋼板でも、塗装の部分は、定期的(10年~)にメンテナンスを行う必要があります。
・ガルバリウム鋼板の表面の塗膜が白亜化(チョーキング)したら、塗り替えが必要
・そのまま放置すると赤錆が進行し、大改修が必要
メンテナンス費用は概算の目安として以下となります。
・塗り替えで、約80万円。
・撤去葺き替えで、約160万円。
音がうるさい
ガルバリウム鋼板の屋根は、基本構成はめっき鋼板でトタン屋根と同じであるため、雨音がうるさいです。
「他の屋根材から金属屋根に葺き替えたら、音がうるさくて、眠れない!
何か対策がないか?」
というご相談を時々いただきます。
音は個人差があるのでなんとも言えませんが、神経質な方は葺き替えでガルバリウム鋼板屋根を選ぶときには特に注意が必要です。
強風で飛散しやすい
年々、巨大台風が上陸する傾向です。
ガルバリウム鋼板立平葺きなどは、長尺もので、1枚当たりの面積が大きく、他の屋根材よりも耐風性が求められます。
とくに経年した金属屋根を調査すると、屋根周辺部(軒・けらば・棟)からの雨水浸入や結露(くぎまわり、軒先)などで、野地板が劣化している場合が多いです。
新築時での耐風性能はあっても、野地板の経年劣化でくぎ・ビスの保持力が低下してしまい、屋根全体で飛散するリスクがあります。
大阪で大きな被害が発生した台風21号の被害をまとめた記事です。
台風21号で飛散した金属屋根。気になる方はYouTubeをご覧ください。
衝撃!屋根が消えた!巨大台風による金属屋根飛散!悲惨な事例です。
保証のハードルが高い
ガルバリウム鋼板の屋根材は保証がしっかり表示されています。
錆びや穴あきへの保証が10~20年ついているものが多いです。
しかし、保証の内容には、免責事項がしっかり小さい字で記載されていて、実際に保証してもらうには、かなりハードルが高くなっています。
瓦やスレート屋根にくらべて、保証期間が長いので、安心なように見えますが、後で紹介しますが、よく免責事項を確認して保証の有無を評価しましょう。
錆びることがある
トタン屋根に比べて、錆びにくくなっていますが、ガルバリウム鋼板の屋根はもちろん、錆びます!(以下、日本金属屋根協会の技術資料からの抜粋です。)
緩い勾配での錆び(水溜まり)!
ガルバリウム鋼板立平葺きは0.5寸勾配からと緩い傾斜の屋根でも、唯一、対応できる屋根材です。
しかし、経年の建物の動きや屋根面における立平葺きのひずみ・少しの凹凸などで、水溜まり部ができてしまうと、腐食が進んで赤錆が発生します。
土ほこりが堆積しての錆び!
大気中と土中におけるガルバリウム鋼板の腐食速度は、大きく異なると報告されています。
土中におけるガルバリウム鋼板の腐食速度は大気中の約12倍大きく、めっき寿命としては、4年程度と極端に短命になります。
どんな屋根では、経年で土ほこりが堆積する部分があります。
ガルバリウム鋼板屋根で、土ほこりが堆積した部分では、他の部分の約10倍以上は腐食速度が速くなり、耐久性が大幅に低下し、赤錆が発生します。
塩害での錆び・穴あき!
塩害とは、海岸地域で、波浪によるしぶきが発生し、風により飛散し、建築物等への付着して、腐食が早まることをいいます。
塩害は、海岸からの距離が大きく関係しています。
そのため、ガルバリウム鋼板の保証の免責事項には、海岸からの距離が記載されているので、ご確認ください。
木材での錆び!
上の写真は、ガルバリウム鋼板屋根と木材との接触により赤錆が発生した事例です。
木材が湿ると、木酢液(木材中に含まれる酢酸が主成分)が染み出て、水分が酸性となるので、ガルバリウムめっき層が腐食し、その内側の鋼板が錆びてしまいます。
電食での錆び!
鉄くぎからのもらい錆びでも腐食が進行します。
その他、ステンレス鋼板製雪止金具やステンレス鋼くぎ・ビスとガルバリウム鋼板との間では、水が介在すると電食により、ガルバリウム鋼板に錆びが発生します。
施工時に付着した切粉、加工屑や切断面からも錆びが発生します。
ガルバリウム鋼板はメンテナンスが必要な屋根材なの?
以下、ガルバリウム鋼板屋根材のメンテナンス方法を引用しました。
定期点検を行ってください
日常では、目視にて確認できる範囲で、また、地震や台風の後には、お客様自身で行ってください。
定期点検は、5年に1回を目安に専門業者による点検を実施してください。(費用はお客様負担となります。)
ちなみに、以前問題のあった屋根材では、「お客様が定期点検を怠った」という理由でクレームを受け付けないという事例がありました。
クリーニング・メンテナンスを行ってください
屋根を美しく保つために、年に数回の水洗いをしてください。
どうやって、やるのでしょうか?
このクリーニングをメンテナンスに含ませているのは、ガルバリウム鋼板の屋根だけです!
ちなみに、そのクリーニングの内容は以下となります。
クリーニング方法
①屋根材に鋼板の切粉、切り屑、くぎなどを放置するともらい錆びの原因となります。完全に取り除いてください。
②屋根面に落ち葉、動物の排泄物や粉じんなどが堆積した場合は、水洗いにより落としてください。
①は施工時に対応できますが、②を実施するには、費用が高額となってしまいます。
この定期点検・クリーニングが保証条件の1つとなっています。
わかりやすくするため、ガルバリウム鋼板屋根のさび・穴あき保証に対する免責事項をいくつかあげてみます。
確認しておきたい!ガルバリウム鋼板の免責事項
ガルバリウム鋼板の屋根材の主な免責事項を以下に記載します。
・海岸線より500m以内の地域、及び塩害地域。
・加工時、施工時、運搬時に発生した損傷及び施工後、外力による損傷。
・切断面や端面、現場加工部からの損傷。
・異常な気象(台風、地震、落雪、酸性雨、降雹、氷雪の落下など)。
・水が滞留する部分の塗膜損傷及び電食作用による塗膜損傷。
・鋼板表面または、合わせ面に付着、堆積した切粉、加工屑、落ち葉、動物の排泄物、粉じんなどに起因した損傷。
・入居者または第三者による維持管理不行き届き。
上の免責事項の中で、太字の部分が保証のハードルを上げています。
- 塩害について、沿岸線より500mは意外と引っかかります。
- 屋根なので、必ず切断面や端面、現場加工が加わります。すべての屋根が免責?
- 「お客様の維持管理不行き届き」と言っても、屋根の上に落ちた鳥の糞尿や落ち葉の水洗いのメンテナンスは不可能に近いです。
※これを実現するには、年に数回専門業者に依頼する必要があり、メンテナンスがもっとも必要な屋根材となります。
家作りや住宅の外観デザインは最初になんとなく選んでいませんか?
外観デザインによって、自然と屋根材も決まってしまいます。
- 箱型住宅/片流れデザイン
- 総2階住宅/寄棟デザイン
- オーソドックスな住宅/切妻デザイン
以下、簡単にご紹介します。
箱型住宅/片流れデザイン
最近、流行りの住宅です。
屋根は片流れとなり、シャープ感のあるデザインです。
ゆるい傾きの屋根が多く設計されています。(1寸~2.5寸の勾配屋根)
ゆるい傾きの屋根の場合、対応できる屋根材はガルバリウム鋼板立平葺き(金属屋根)だけとなってしまいます。(次回葺き替えも同じ屋根となります。)
流行っていますが、残念ながら雨漏りがもっとも多い屋根にもなっています。
総2階の住宅/寄棟デザイン
下の写真は少し下屋根もありますが、総2階の住宅では寄棟デザインの屋根が多いです。
少し前に流行ったデザインですが、屋根材はスレート屋根・瓦の採用率が高いです。
寄棟屋根の場合、ガルバリウム鋼板立平葺きは少ないです。
オーソドックスな住宅/切妻デザイン
軒の出もあるオーソドックスな住宅では、切妻デザインの屋根が多いです。
切妻屋根の屋根材は、瓦・スレート屋根・ガルバリウム鋼板の採用率が高くなっています。
箱型住宅/片流れ屋根住宅なら、ガルバリウム鋼板立平葺きになります!
はじめの打ち合わせで、何も屋根の要望しないと箱型住宅/片流れ屋根住宅はガルバリウム鋼板立平葺きになる傾向が高いです。
なぜ、最初に決まってしまうかと言いますと、
工務店さんがの都合で、以下のように設計してしまうからです。
- 屋根の勾配をゆるくする。
- ゆるい勾配はガルバリウム鋼板立平葺きしか、対応できない。(他の屋根材は3寸以上が多い)
- ガルバリウム鋼板屋根の重量に合わせて、建物の強度を低くする。
この理由としては、建設費のコストダウンにつながるからです。
この仕様で、御見積が提出されるので、後から、屋根材を別のものに変更する場合は、建物本体の設計変更・強度計算からやり直しとなり、抵抗感も強く、「御見積がかなり高くなる」と言われてしまいます!
あらかじめ、瓦を要望しておけば、瓦に合わせた屋根勾配、建物強度で設計するので、抵抗なく見積りしてくれるはずです。
ここで、伝えたいポイントは、
お客様は、家を検討しはじめて、最初に、関心のない屋根などは全く調べないと思います。
ガルバリウム鋼板立平葺きのメリット・デメリットをほとんど知らないまま、いつの間にか、ガルバリウム鋼板立平葺きの屋根を選んでしまっているのです。
大切な家を守る屋根ですので、是非、ガルバリウム鋼板のメリット・デメリットを理解して、検討されることをオススメします!
屋根材を決めるときは何を重視するのかを検討しよう
ガルバリウム鋼板屋根はメリットの多い材料ですが、長期保証・メンテナンスフリーというのは、言いすぎだと思います。
軽さ、デザイン、耐久性、イニシャルコスト、メンテナンス費用も含めて、総合的な検討が必要です。
それも、家づくりの最初の段階で、屋根をどうするか要望しましょう!
オススメの検討方法としては、以下のポイントがあります。
- 何年住む予定か?
- 定期メンテナンスコストをかけるか?
- イニシャルコストを優先するか?
屋根材のざっくりした特徴は以下となります。
- 軽さ・デザイン優先なら、ガルバリウム鋼板屋根。
- イニシャルコストなら、スレート屋根。
- 長期住宅・耐久性・トータルの費用の安さなら、瓦屋根。
という選び方も参考にしてください。
屋根材の選び方について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
屋根材の人気ランキング!オススメはどれ?チェックポイントも解説!
ガルバリウム鋼板屋根を要望する場合は、マンションの修繕費のように、最初からメンテナンス費を積み立てをしておくのも、1つの手だと思います。
【まとめ】ガルバリウム鋼板はメリットとデメリットを理解しよう
ガルバリウム鋼板とは、めっき鋼板の中の1つで、溶融55%アルミニウム‐亜鉛合金めっき鋼板の商品名です。
アルミニウムの特徴である耐食性、加工性、耐熱性と亜鉛の特徴である犠牲防食機能により、トタンよりも3倍程度、耐久性が優れているめっき鋼板です。
ガルバリウム鋼板屋根材のメリットは4つです。
- 錆に強い
- 耐久性が高い
- 軽い
- デザイン性が高い
ガルバリウム鋼板屋根材の6つのデメリットを解説します。
- 初期費用(イニシャルコスト)が高い
- メンテナンス費用が高い
- 音がうるさい
- 強風で飛散しやすい
- 保証のハードルが高い
- 錆ることがある
最近の傾向として、はじめの打ち合わせで、何も屋根の要望しないと箱型住宅/片流れ屋根住宅はガルバリウム鋼板立平葺きになる傾向が高いです。
新築時の屋根材を選ぶポイントは以下の3つとなります。
- 何年住む予定か?
- 定期メンテナンスコストをかけるか?
- イニシャルコストを優先するか?
ガルバリウム鋼板屋根を要望する場合は、マンションの修繕費のように、最初からメンテナンス費を積み立てをしておくのも、1つの手だと思います。
屋根に関して、お悩みの方はお気軽にお問い合わせください。
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