目次
屋根塗装における「タスペーサー」とは?
屋根塗装における「タスペーサー」とは、屋根の塗装時に屋根材の隙間を塗料がふさがないようにするための補助部材(スペーサー)です。
スレート屋根の塗装時に行う「縁切り」作業の代わりとして、スレート屋根の上下の隙間に差し込んで使用します。
一般名称としては「差込み型の縁切り補助部材」と呼ばれており、「タスペーサー」は株式会社セイムから販売されているプラスチック製スペーサーの商品名です。
クリップのような形状をしており、大きさは4×3㎝程度の小さいものです。
屋根塗装のどの工程でタスペーサーを使うの?
タスペーサーは屋根塗装の工程のうち、一番最後に行われる「縁切り」という作業の代わりをする部材です。
しかし、タスペーサーを使用する工程は屋根塗装の前段階となります。
屋根を高圧洗浄して下塗りをする前に、スレート1枚ごとにタスペーサー2個を差込みます。
その後、タスペーサーが差込まれた状態で、タスペーサーも併せてスレート表面を塗装していきます。
「縁切り」については、次章で詳しく解説してきます。
屋根塗装の工程のひとつ「縁切り」とは
屋根塗装の工程のひとつ「縁切り」とは、スレート屋根を塗装後、塗料が完全に乾く前に、スレート上下の隙間にカッター・スクレーパー・皮スキなどを差し込んで、上下の隙間に入り込んだ塗料の膜を切る作業のことです。
「屋根」=「雨漏りが怖い」というイメージがあるため、一般の方は屋根材同士の見た目の隙間を塗料でふさがれた状態の方がよりいい仕上がりだと思われがちです。
しかし、屋根塗装でその隙間をふさいだ方が防水性が高まるという考え方は完全に間違っています。
上下の隙間をふさいでしまうと浸入した雨水を排水できなくなり、かえって、雨漏りする屋根になってしまいます。
塗料乾燥後に隙間をふさいでいる塗膜を切って、雨水の排水経路となる上下の隙間を確保する必要があり、「縁切り」作業は工程のひとつになっています。
縁切りの重要性について詳しくはこちらの記事で解説しています。
屋根塗装でタスペーサーを使うシチュエーション
屋根塗装でタスペーサーを使うのは、スレート屋根の塗装のみです。
トタン屋根・ガルバリウム鋼板屋根・セメント瓦などの塗装には使用しません。
スレート屋根とは、セメントに繊維を混ぜて、板状に成形した屋根材で、日本の住宅では単一商品としては最も多く設置されている屋根材です。
「コロニアル」、「カラーベスト」、「スレート瓦」などで呼ばれることが多いです。
スレート屋根の1回目の塗装メンテナンス時、もしくは、過去の塗装メンテナンスで縁切りしてある場合の2回目に使用できます。
屋根塗装でタスペーサーを使うメリット
屋根塗装でタスペーサーを使うメリットについて紹介します。
- 塗装の剥がれを防げる(従来の縁切りでは作業時に塗装が剥がれるリスクがある)
- 屋根を足跡で汚すリスクが減る
- 工期を短縮できる(従来の塗装後に約1日かかる縁切り作業がなくなる)
- 手作業よりも確実に縁切りができる
- 作業の品質が安定しやすい(手作業の縁切りよりも均一な仕上がりになる)
塗装後、塗料が完全に乾く前に屋根に上がって行う縁切り作業では、作業中に塗膜をはがしてしまうことがありました。
タスペーサーを使うことで、塗装後に縁切り作業は行わないので、塗膜のはがれ・足跡・縁切り不足などの縁切り作業の不具合を解消できます。
また、塗装後に行う縁切り作業がなくなるので、その分、工期を短縮でき、足場を早く撤去できます。
屋根塗装でタスペーサーを使うデメリット
屋根塗装でタスペーサーを使うデメリットについて紹介します。
- タスペーサーの部材費がかかり、コストアップとなる
- タスペーサーの段差でスレートにひび割れが発生しやすい
従来の縁切りとくらべて、約1~3万円のコストアップとなります。
それよりもタスペーサーを使用することで、スレート自体にひび割れが発生するリスクが高まります。
スレート製造メーカー「株式会社ケイミュー」の施工要領書には、踏み割れが発生するので、タスペーサー(差込み型縁切り補助部材)を使用しないように注意喚起されています。
踏み割れについて動画でも紹介しています。
屋根塗装でタスペーサーを使うときの注意点
屋根塗装でタスペーサーを使うときの注意点は、ズバリ、スレートの踏み割れです。
スレート屋根では、以前はアスベストを混入して強度・靭性を上げていたのですが、2004年以降のスレートに使用されていません。
ゼロアスベストのスレートになってから、踏み割れが目立つようになり、屋根としての不具合が発生しています。
ゼロアスベストのスレートにタスペーサーを使用すると踏み割れリスクが高まります。
タスペーサーは2mmの厚みがあり、その段差でスレートが踏み割れしやすいのです。
2004年以降のスレートにタスペーサーを使用することは注意してください。
踏み割れが気になる方は、少し高級品となりますがステンレス製スペーサーを検討することもありです。(タスペーサーに比べて約2~3万円のコストアップ)
ステンレス製スペーサーは厚みが0.5mmと薄いため、施工時の踏み割れリスクを大幅に軽減します。
その上で、ステンレスのスプリングバック効果で、縁切り効果は確保されています。
タスペーサーのひび割れリスク、ステンレス製スペーサーについて詳しくはこちらの記事で解説しています。
タスペーサーを利用して屋根塗装するのが向いている方は?
タスペーサーを利用して屋根塗装するのが向いている方について紹介します。
- アスベスト入りスレート屋根の方
- スレート屋根の塗装で仕上がりの美しさを保ちたい方
- 工期を短縮したい方
タスペーサーは比較的安価ですので、踏み割れしにくいアスベスト入りスレート屋根の方には向いています。
また、足場を早く外したい方には、縁切り作業よりも向いています。
初めて塗装するような2004年以降のスレート屋根では、ステンレス製スペーサーの方が踏み割れしにくいので向いています。
縁切りの費用相場:屋根塗装でタスペーサーを使用した場合
タスペーサーを使用して屋根塗装する場合の費用について紹介します。
タスペーサーを使用しての縁切りの費用相場は、30坪の住宅で約4~5万円です。
目安としては、1㎡あたり500~700円/㎡とお考えください。
縁切りの費用相場:屋根塗装でタスペーサーを使用しない場合
タスペーサーを使用しないで屋根塗装する場合の費用について紹介します。
手作業の縁切りを行う費用相場は、30坪の住宅で約3~5万円です。(1㎡あたり500円/㎡)
また、高級品であるステンレス製スペーサーを使用しての縁切りの費用相場は、30坪の住宅で約6~8万円です。(1㎡あたり700~1,000円/㎡)
費用は業者によって異なるため、見積もり時に確認が必要です。
縁切り作業を省く業者もいますので、縁切り作業を行うかどうかも必ず確認しておきましょう。
屋根塗装して、雨漏りする屋根になってしまうのは最悪です!
【まとめ】タスペーサーは屋根塗装時の縁切りをスムーズにするアイテム
屋根塗装における「タスペーサー」とは、屋根の塗装時に屋根材の隙間を塗料がふさがないようにするための縁切り補助部材(スペーサー)です。
塗装後の縁切り作業の代わりに、塗装前に縁切り効果を付与できて、屋根塗装をスムーズに行うことができます。
ただし、スレートの踏み割れが気になる方はステンレス製スペーサーも検討してみましょう。
屋根の状態によっては不要な場合もありますので、事前に業者と相談することが大切です。
屋根塗装して、雨漏りする屋根になることは絶対に避けましょう。
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