目次
漆喰が屋根に使われる理由と役割
まずはじめに、漆喰(しっくい)が使われる屋根は瓦屋根だけです。
スレート屋根やガルバリウム鋼板・トタン屋根などは漆喰は使われていません。
つぎに、瓦屋根に使われている漆喰とは上の写真のように棟部(屋根の頂部)で使われています。
瓦屋根の棟部はのし瓦を高く積み上げ、大きな鬼瓦を使うことが立派な家の象徴とされてきました。
のし瓦を高くきれいに積み上げるためには葺き土(ふきつち)を使うことが合理的です。
しかし、葺き土は暴露して風雨にさらされると浸食されてしまうため、暴露する部分の葺き土の表面に漆喰を塗ることで耐久性が向上するという理由で使用されています。
漆喰の主な役割は以下の2つです。
- 暴露している葺き土(ふきつち)を風雨から守る。
- 見た目が白くなり、美観が向上する。
瓦屋根の漆喰について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
~瓦屋根の南蛮漆喰(なんばんしっくい)ってなに? Q062~ 図解 屋根に関するQ&A
屋根の漆喰の経年劣化の症状
屋根の漆喰は経年劣化が発生します。
経年劣化の症状を地上からでもチェックすることできるため、代表的な劣化症状を知っておくことが重要です。
屋根の漆喰の代表的な劣化症状を3つ紹介します。
- 漆喰の欠け・ヒビ割れ
- 漆喰の変色・コケ
- 漆喰のはがれ
次の章から詳しく解説していきますね。
また、どうしても地上から見えにくいといって屋根に上がることは大変危険なため、絶対にやめておきましょう。
心配な方は瓦屋根の専門業者に依頼して点検してもらいましょう。
【経年劣化の症状】①漆喰の欠け・ヒビ割れ
漆喰・葺き土とも施工時は湿式で使用するため、その後、数か月かけて乾燥します。
風雨時は濡れるため、乾燥・湿潤を繰り返します。
漆喰は乾燥すると硬化するため、乾燥収縮や建物の微振動、風雨などで欠けやヒビ割れが発生することがあります。
漆喰の欠け・ヒビ割れでは大きな不具合が発生することはありませんので、補修する必要はありません。
【経年劣化の症状】②漆喰の変色・コケ
漆喰は経年劣化で黒っぽく変色したり、コケが発生したりします。
これは漆喰の奥にある葺き土に雨水が浸入しているために発生する現象です。
この雨水浸入は将来的には雨漏りするリスクとなります。
また、雨漏りした場合は漆喰の塗り直しや瓦のシーリングでは雨漏りは止まりません。
棟部の葺き直しが必要ですので、ご注意ください。
漆喰からの雨漏りについて詳しくはこちらの記事で解説しています。
雨漏りの原因をランキング形式で知りたい方必見【慶応4年創業の屋根屋が解説】
【経年劣化の症状】③漆喰のはがれ
漆喰は20~30年経過すると漆喰がはがれ落ちる経年劣化が発生することがあります。
葺き土へ雨水が浸入しての乾燥湿潤の繰り返しや建物の微振動などで葺き土と漆喰の間に隙間が発生し、やがて漆喰がはがれ落ちて葺き土が暴露する状態となります。
漆喰のはがれは1ヵ所ずづ徐々に発生するため、数カ所漆喰のはがれが発生していても、すぐに雨漏りするというものではありません。
悪徳訪問販売業者が「すぐに雨漏りして大変なことになる」とあおりますが、緊急性は少ないので、落ち着いて瓦屋根専門業者に相談しましょう。
屋根の漆喰の経年劣化が軽い場合の補修方法
屋根の漆喰の経年劣化が軽い場合は、多くの場合は漆喰の塗り直しで補修することが可能です。
漆喰の塗り直し費用は棟長さにおいて、7,000~8,000円/mが相場目安となります。
漆喰の塗り直し工事の補修の流れを簡単に紹介します。
- 劣化した漆喰の除去する
- 漆喰を塗りこむ
ただし、古い日本瓦屋根(築20年以上)は耐震・耐風性が低いため、漆喰の塗り直しではなく、棟部の瓦の葺き直しをオススメします。
葺き直しは次の経年劣化が激しい場合の補修で紹介していますので、ご参考にしてください。
屋根の漆喰の経年劣化が激しい場合の補修方法
屋根の漆喰の経年劣化が激しい場合は、多くの場合棟部の瓦を解体して、葺き替え工事が必要です。
葺き替え工事としては、大きく2種類あります。(2種類ともガイドライン工法と呼ぶ耐震・耐風・耐久性能の高い仕様です。)
- のし瓦積み棟での復旧工事・・・復旧費用は棟長さにおいて、35,000~円/mが相場目安
棟部分を解体する
屋根下地(野地板・防水シート等)を調整する
最上段の瓦(カットした瓦も含む)を留め付ける
棟補強金物を設置する
南蛮漆喰で復旧する(南蛮漆喰は葺き土・漆喰を1つで代用する)
のし瓦積みを行う(左右ののし瓦を緊結する)
棟芯材を入れて補強する
冠瓦を棟芯材に留め付ける
復旧完了
- 冠瓦伏せ棟での復旧工事・・・復旧費用は棟長さにおいて、25,000~円/mが相場目安
棟部分を解体する
屋根下地(野地板・防水シート等)を調整する
最上段の瓦(カットした瓦も含む)を留め付ける
棟補強金物を設置する
棟芯材を入れて補強する
南蛮漆喰で復旧する(南蛮漆喰は葺き土・漆喰を1つで代用する)
冠瓦を棟芯材に留め付ける
復旧完了
この2種類の工法は令和4年1月から改正された瓦の留め付けを規定した法律に適合しています。
令和3年以前に施工された瓦屋根は住宅の定期点検時に、瓦屋根診断を併せて行ってもらうことをオススメします。
漆喰工事について詳しくはこちらの記事で解説しています。
屋根の漆喰(しっくい)工事は瓦屋に相談して!プロの屋根屋が理由を説明します!
屋根の漆喰の寿命はどれくらい?
屋根の漆喰の寿命は20~30年程度で、60年以上の寿命がある瓦と比較すると短くなっています。
長時間の雨風や日光・寒暖差・地震などの揺れの影響で劣化の進行が早くなってしまうケースがあります。
また、寒冷地では棟部の漆喰・葺き土が凍害を起こしやすく、劣化が極端に早まるケースもあるようです。
屋根の漆喰の寿命を延ばすための方法
漆喰の寿命を延ばすための方法は南蛮漆喰で代用することです。
現在、新築の建物は葺き土+漆喰ではなく、代用品の南蛮漆喰でほぼ施工されています。
葺き土+漆喰ですと、経年でどうしても層ができてしまうのではがれが発生してしまいます。
代用品の南蛮漆喰は、ひとかたまりとなるため、はがれが発生しません。
漆喰を塗り替えする必要がなくなり、メンテナンスがほとんど不要となります。
また、漆喰の補修を行う場合は、信頼できる瓦屋根工事業者に補修を依頼することをオススメします。
悪徳業者の中には、漆喰の重ね塗りをする業者がいて、かえって雨漏りするようになる事例も多いようです。
優良な屋根修理業者の特徴についてこちらの記事で詳しく解説しています。
どんな屋根修理業者に頼めば良いの?優良業者の5つの特徴を解説!
【まとめ】適切なメンテナンスで漆喰の寿命を延ばそう
漆喰が瓦屋根で使用される理由と役割をご紹介しました。
屋根の漆喰の代表的な劣化症状を3つ紹介しました。
- 漆喰の欠け・ヒビ割れ
- 漆喰の変色・コケ
- 漆喰のはがれ
屋根の漆喰の経年劣化が軽い場合は、多くは漆喰の塗り直しで補修しています。
ただし、古い日本瓦屋根(築20年以上)は耐震・耐風性が低いため、漆喰の塗り直しではなく、棟部の瓦の葺き直しをオススメします。
その葺き替え工事としては、大きく2種類(のし瓦積み棟・冠瓦伏せ棟)あります。(2種類ともガイドライン工法で令和4年の告示改訂に適合しています。)
また、漆喰の寿命を延ばすための方法は南蛮漆喰で代用することです。
漆喰を塗り替えする必要がなくなり、メンテナンスがほとんど不要となります。
漆喰の補修を行う場合は、信頼できる瓦屋根工事業者に補修を依頼することをオススメします。
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