スレート屋根に塗装が必要な3つの理由とは?屋根屋が詳しく解説します

Dr.神谷
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  • みなさま。こんにちは。
    屋根から人の笑顔を作りたい!!!神清(かみせい)のDr.神谷です。

    弊社は、高浜市・半田市にある創業150年老舗三州瓦の生産・販売・工事を行っている会社です。
    年間200棟以上の雨漏り調査・修理を行っています。
    ※建築業界誌「日経アーキテクチュア」の連載記事「新次元!雨漏り対策」を執筆。

本記事はこんな人にお勧めします。

スレート屋根が必要な理由について知りたい

スレート屋根の塗装費用や塗り替え時期について知りたい

この記事で伝えたいこと

この記事は「スレート屋根が必要な理由について知りたい」「スレート屋根の塗装費用や塗り替え時期について知りたい」という方に向けて書かれています。

スレートは、国内で最も人気のある屋根材のひとつです。
でも、スレート屋根の塗装の重要性について、理解している方は多くありません。

本記事では、スレート屋根に塗装が必要な理由について詳しく解説していきます。創業150年の屋根屋がわかりやすく解説していきますので、ぜひ参考にしてくださいね。

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スレート屋根に塗装が必要な3つの理由

スレート屋根は、セメント・骨材に繊維素材を混ぜて薄い板状に加工し、表面を塗装した屋根材のことです。

スレート屋根の種類は大きく2つあり、工場や倉庫で使用されている大波スレートと住宅で使用されるカラーベスト・コロニアルと呼ばれている化粧スレートがあります。

新築後、ある程度経過すると塗装メンテナンスが必要と言われています。

スレート屋根の塗装が必要と言われる3つの理由について紹介します。

  1. 美観の向上
  2. 撥水性(はっすいせい)の向上
  3. 屋根材の保護

次の章から詳しく解説していきます。

 

【スレート屋根に塗装が必要な理由】①美観の向上

スレート屋根に塗装が必要な理由として、美観の向上があります。

スレート表面の塗装が劣化して変退色したり、撥水性が低下してカビやコケが発生してしまうと、見た目の印象に大きく悪化してしまいます。

特に、屋根が退色していると建物全体が劣化している印象となります。

塗装前後の写真をご覧ください。

●スレート屋根の塗装前

●スレート屋根の塗装後

塗装後は美観が新築状態へ生まれ変わります。

 

【スレート屋根に塗装が必要な理由】②撥水性の向上

スレートはセメント・骨材等に繊維素材を混ぜて作った薄い板であるため、それ自体に防水性能があります。

また、スレートは製造メーカーによって異なりますが、水分を8~20%程度含む特徴があります。

工場で生産されたときに塗装された塗料は、表面からの水分をはじく効果があります。

塗料は経年で劣化し、水分をはじく効果が低下するとスレートの表面からも水分を吸うようになります。

スレート表面から雨水を吸水するようになるとコケやカビが発生しやすくなります。

それを防ぐためにスレート屋根の塗装が必要となります。

 

スレート屋根を塗装しなくても、雨漏りは発生しません。

スレート屋根は2枚重なり以上となっており、スレートの重なりで雨漏りを防いでいます。

「スレート屋根を塗装しないと雨漏りする」と書かれた記事も多いですが、これは正しくありませんので、ご注意ください。

撥水性が落ちると表面からは水分を吸いやすくなりますが、その下にはもう1枚スレートがあるため、じわじわと吸水して防水シート・野地板(のじいた)まで到達して雨漏りにつながることはありません。

何かの不具合でスレート屋根の屋根下地である野地板まで到達すると雨漏りにはなりますが、それは塗装では直らない別の原因がありますので「塗装で雨漏りが止まる」という業者にはだまされないようにしてください。

野地板という大事な屋根の下地について詳しくはこちらの記事で解説しています。

野地板(のじいた)ってなに? 屋根の用語・Q&A

 

【スレート屋根に塗装が必要な理由】③屋根材の保護

一般的なスレート屋根の寿命は25~30年程度と言われています。

これはスレート自体がボロボロになると言うわけではなく、スレートの下にある防水シートの寿命から判断されています。

そのため、スレート屋根を塗装しても寿命は延長せず、30年程度で葺き替え・カバー工法などのメンテナンスが必要です。

初期の塗装は10年程度で紫外線劣化して、表面塗料の撥水性が低下します。

スレートの表面から吸水・乾燥を繰り返すようになるとスレート自体に反りが発生し、反り・浮きが目立ちやすくなります。

スレート自体の反り・浮きを進行させないようにするには、スレートを塗装することが有効です。

 

スレート屋根の塗り替え時期

スレート屋根の塗装を検討すべき時期は、新築の建物であれば一般的に10年程度であると言われています。

一度塗装を行った屋根の2度目の塗り替え時期は、1回目の塗装時の塗料の種類によって変わります。

屋根は外壁に比べて紫外線の強度が高く、塗料が劣化しやすい環境ですので、屋根塗装の耐用年数は外壁に比べて短くなります。

スレート屋根の塗装は外壁塗装のタイミングに合わせて行うことがほとんどです。

屋根塗料を高額なものを選んでも、外壁塗装のタイミングで再度、屋根を塗るため、オーバースペックはもったいないです。

また、塗装時の施工内容(下地調整)によっても耐用年数が異なりますので、目安とお考えください。

スレート屋根の塗料の耐用年数の目安を紹介します。

塗料の種類塗装の耐久年数
ウレタン約4~6年
シリコン約5~7年
フッ素約7~10年
無機約10~15年

 

屋根塗装の耐用年数について詳しくはこちらの記事で解説しています。

屋根塗装の耐用年数はどれくらい?知っておきたい3つの注意点とは?

 

屋根の塗装費用の相場

一口に屋根の塗装と言っても、塗装の種類、屋根材の種類や劣化状態、建物の立地、大きさや形状などによって変わってきます。

一般的な2階建てのスレート屋根の場合(塗り面積が60~80㎡程度)は、40~60万円程度を目安とお考えください。(30坪前後の大きさの建物)

 

屋根の塗装の費用相場について詳しくはこちらの記事で解説しています。

屋根の塗装の費用相場はどれくらい?3つの内訳も詳しく解説

 

スレート屋根にオススメの塗料

スレート屋根の塗料の耐用年数と塗料代の目安を一覧に示します。

塗料の種類屋根の塗料耐久年数費用目安
ウレタン約4~6年25,000~70,000円
シリコン約5~7年30,000~80,000円
フッ素約7~10年80,000~160,000円
無機約10~15年100,000~240,000円

標準的な住宅ですと、外壁も塗装品(窯業系サイディング)が使用されていますので、屋根の塗装だけを考えるのではなく、建物全体のメンテナンス計画に合う耐用年数の塗料をオススメします。

これは、屋根の塗装でも足場が必要ですし、外壁の塗装でも足場が必要ですし、外壁のシーリングでも足場が必要だからです。

足場代は高額なため、なるべく足場が必要な工事は併せて行いましょう。

上記3つの中で、雨漏りに関係するのは外壁のシーリングのため、外壁シーリングの耐用年数以下の塗料を選ぶことが塗料代を抑えることにつながります。

そのため、シーリングの寿命が約8~13年のため、オススメはシリコン塗装となります。

余りハイスペックの塗料は塗料代がもったいないので、オススメしていません。

また、2階部屋が暑く、遮熱性能を求める方は白系の色で塗装することをオススメします。

 

塗装の間違った施工は雨漏りや塗料の剥がれにつながる

塗装は間違った施工・手抜き施工を行うと、雨漏りの原因となってしまったり、塗料の耐用年数前に浮きやはがれが発生して、再塗装が必要となる可能性があります。

塗装作業における注意点やチェックポイントを紹介します。

  • 塗装前にしっかりと屋根の汚れを落とす
  • 塗る面積に適した塗料の量が塗装する
  • 下塗り・中塗り・上塗りの工程ごとの乾燥時間を確保する
  • 適切に調色や希釈を行う

 

現場に届いた作業前の塗料の量の確認や作業中の残量の確認をして、手抜き施工を未然に防ぎましょう。

 

スレート屋根塗装後に縁切りしないとどうなる?

屋根塗装後に縁切りしないと数年後、屋根全体で広範囲に雨漏りします。(スレート屋根の雨漏り原因第1位)

 

ここで、屋根塗装後に縁切りしないと雨漏りする仕組みについて解説します。

スレート屋根には、横方向にスレート同士を突き付けた「継ぎ目」とスレート屋根の意匠性を高めるために設けられた「スリット」と呼ばれる2種類の縦方向の溝が生じています。

屋根塗装時、縦方向の溝が塗料で完全にふさがれることはなく、隙間やピンホールが発生しています。

その後、雨が降ると雨水が溝の隙間・ピンホールに浸入し、毛細管現象で左右にあるスレートの裏面へ拡がっていきます。

スレート屋根の上下方向にあるスレートの重なり部の隙間に入り込んだ塗料は上下のスレートに貼り付いて、その隙間をふさいでしまうため、スレート裏面に浸入した雨水は排水されずに溜まってしまいます。

雨水が滞留する部分には、スレートを留め付けているくぎがあり、そこから屋根下地へ伝わり、経年で雨漏りするという仕組みです。

 

スレートのスリットがない種類でも、上写真のようにスレート継ぎ目から左右のスレートの裏面に浸入し、毛細管現象で拡がっていきます。(元々赤色に黒色の屋根塗装したスレート屋根)

 

一方、屋根塗装していないスレートの継ぎ目部分の雨水浸入痕は拡がっていません。

上下方向にあるスレートの重なり部の隙間がふさがっていなければ、毛細管現象で浸入した雨水はそのまま排水されるので、雨水が滞留せず雨漏りは発生しないのです。

 

スレート屋根塗装後の縁切り作業の様子を動画で紹介しています。

 

スレート屋根の縁切りについて詳しくはこちらの記事で解説しています。

スレート屋根の再塗装の注意点!「縁切り」は必須ですよ!

 

スレート屋根塗装における3種類の縁切り

スレート屋根塗装の縁切り方法としては、3種類がありますので、それぞれの方法について紹介します。

  1. 手作業による縁切り工法
  2. 樹脂製スペーサーによる縁切り工法
  3. 金属製スペーサーによる縁切り工法

 

①手作業による縁切り工法

手作業による縁切り工法はスレート製造メーカーから推奨されています。

大手ハウスメーカーの塗装メンテナンスでも手作業の縁切りが行われているようです。

●メリット

手作業による縁切り工法は、スレート屋根の塗装前の状態を維持できるので、その後に塗装したことが原因の不具合が発生することはありません。

●デメリット

塗装職人は塗装後、別日で縁切り作業を行う必要があります。

縁切り作業の正確さは職人の気質でしか担保されず、不十分な箇所、やり残しの箇所が発生するリスクがあります。(縁切りのやり残しは確認が難しい。)

塗装する度に、手作業の縁切りが必要です。(その度に費用が発生する)

 

②樹脂製スペーサーによる縁切り工法

塗装職人による縁切り作業のバラツキを心配しなくてもいいようにと考えられた工法です。

予め、スレート屋根の上下方向にあるスレートの重なり部の隙間に樹脂製スペーサーを入れて、隙間を大きくして、塗装したときに塗料がくっつかないようにする工法です。

塗装後に縁切りしなくても、上下の隙間が塗料で埋まることはなく、塗装後の雨漏りをふせぐことができます。

●メリット

樹脂製スペーサーの有無が塗装後でも確認できます。(樹脂製スペーサーは入れたままとなる)

樹脂製スペーサーが入っているところは確実に縁切り効果があります。

樹脂製は安価なため、1度目の塗装時のイニシャルコストは縁切りと同等です。

●デメリット

樹脂製スペーサーは完全につぶれた状態でも2mmの厚さがあります。

スレート製造メーカーは、樹脂製スペーサーを入れておくと踏み割れのリスクがあるため、推奨せず、注意喚起を行っています。

屋根を健全にするために屋根塗装のメンテナンスを行うのに、スレート屋根が踏み割れしやすくなる工法はかえって、屋根が悪くなるリスクがあります。

樹脂製で紫外線劣化するため、2度目の塗装時に撤去して、新規を入れ替えるのに手間がかかります。(費用が発生する)

樹脂製で燃えるため、火災時の延焼リスクがあります。

 

樹脂製スペーサー部分のスレートの踏み割れが原因で、スレートが落下した事例を動画で紹介しています。

踏み割れが原因でスレートが落下し、人や車にあたるリスクは軽視できないですね。

 

③金属製スペーサーによる縁切り工法

樹脂製スペーサーの踏み割れ問題を改善した縁切り工法です。

金属製スペーサーは金属特有のスプリング効果を取り入れており、人が載ったときには約1mm程度につぶれ、人が載らないときは復元してスレートの隙間を確保できる特徴があります。

スレート製造メーカーの耐風仕様で使用する耐風クリップの厚みが1.5mmであるため、それよりつぶれるので踏み割れの心配はありません。

●メリット

スペーサーが起因のスレートの踏み割れをふせぐことができます。

ステンレス製のため、耐久性が高く、2度目の塗装時にも使用できます。(費用がかからない)

紫外線劣化・火災の不安もありません。

●デメリット

1度目の塗装時には、手作業の縁切り・樹脂製スペーサーの縁切りに比べてイニシャルコストがかかります。(約2~5万円アップ)

 

2度目の塗装時に使用できるので、トータルではコストアップはないようです。

踏み割れ対策した金属製スペーサーが手作業の縁切りよりも安心できると思います。

 

金属製スペーサーについて詳しく知りたい

金属製スペーサーはスレート屋根の板金役物メーカーである(株)ヨネキンさんが製造している商品です。

REEV SPACER(リーヴスペーサー)というステンレス製(SUS304)のスペーサーです。

詳しくはこちらのQRコードを読むと、製品動画が見ることができます。

スレート屋根に詳しい板金メーカーが開発しているだけあって、スレート屋根の踏み割れ対策は理にかなっており、スペーサーの不安が解消できると思います。

 

どの縁切り工法がいいの?

今回紹介した3つの縁切り工法(手作業、樹脂製スペーサー、金属製スペーサー)の比較をまとめてみました。

縁切り工法の種類手作業の縁切り樹脂製スペーサー金属製スペーサー
概要皮スキ・カッター等で重なり部の塗料を切る樹脂製スペーサーを重なり部に差し込んで隙間を確保する金属製スペーサーを重なり部に差し込んで隙間を確保する
材質樹脂製(ポリアセタール)ステンレス製(SUS304)
厚み最厚部2mm0.5mm
荷重なしのスレート隙間約1~2mm約2.5mm約2.5mm
荷重時のスレート隙間約0mm約2.5mm約1.3mm
メリット塗装前の状態を維持できる・樹脂製スペーサーは入れたままなので有無の確認できる
・スペーサーの材料代は安価
・金属製スペーサーは薄く、人が載るとつぶれるので踏み割れを防ぐ
・劣化しない
・2度目の塗装時にも効果あり
デメリット・職人によってはやり残しが発生(やり残しの確認が困難)
・足跡・縁切りによる塗膜の傷・はがれが発生する
・樹脂製スペーサーは厚いので踏み割れのリスクがある
・不燃ではない
・紫外線劣化する
イニシャルコストが高い
費用目安(材工共)500円/㎡500~700円/㎡700~1000円/㎡
2度目の塗装時費用目安500円/㎡500~700円/㎡0円
スレートメーカーの推奨推奨踏み割れの注意喚起

 

それぞれ一長一短がありますが、「縁切りなし」よりはどれかを採用されることをオススメします。

塗装後の雨漏りに関して、保証してくれる塗装屋さんはいないので、自宅のスレート屋根は「縁切り・スペーサー」で守りましょう。

 

【まとめ】スレート屋根は塗装で美観が向上します

スレート屋根の塗装が必要と言われる3つの理由について紹介しました。

その中でも、もっとも効果があるのは、美観の向上です。

屋根が退色していると建物全体が劣化している印象となるからです。

スレート屋根を塗装しても寿命は延長せず、30年程度で葺き替え・カバー工法などのメンテナンスが必要ですので、あまり、高グレードはオススメしていません。

塗装は間違った施工・手抜き施工を行うと、雨漏りの原因となってしまったり、塗料の耐用年数前に浮きやはがれが発生して、再塗装が必要となる可能性があります。

また、縁切りしないとスレート屋根を塗装メンテナンスしたために、雨漏りや踏み割れの不具合が発生してしまうので、縁切りは必須です。

 

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