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知っておきたい使用されている屋根形状の割合
令和5年度のフラット35住宅仕様実態調査(フラット35の設計検査を受けた新築一戸建て住宅・木造軸組工法の住宅に限る。)における屋根形状の割合を紹介します。(総数2,623)
第1位 片流れ(かたながれ)屋根 (41.5%)
ついに最も多い屋根形状が片流れ屋根となりました。
6年前と比べて、割合は11%増加しています。
雨漏り・結露にはあまり強くない屋根形状ですので、しっかり対策した設計・施工が必要な屋根です。
第2位 切妻(きりづま)屋根 (31.5%)
前回は1位でしたが、2位と6年前より割合は9.2%減少しています。
屋根と言えば、昔から切妻屋根を思い浮かべると思います。
雨漏りや結露など屋根の不具合が発生しにくいこと、太陽光パネルを設置しやすいことで人気だと思います。
第3位 寄棟(よせむね)屋根 (13.2%)
4面の屋根が合わさった形状です。
首都圏では比較的多い屋根形状です。
太陽光パネルが設置しにくいので、減少傾向にあります。
第4位 段違い(だんちがい)屋根 (10.6%)
片流れ屋根が2段になっているような屋根です。
こちらは2階の部屋の天井を傾斜天井として、室内空間を拡げて、ロフトなどに利用しやすいために増加しているようです。
具体的な不具合事例は見ていませんが、片流れ屋根よりも不具合の発生しやすい屋根だと思います。
片流れ屋根のリスク+水平壁のリスクが加わるので、とくに、下屋根と水平壁との取り合い部分の雨仕舞(あまじまい)・下屋根の換気を注意してほしい屋根形状です。
この屋根も太陽光が設置しやすいので、増加しています。
切妻屋根について詳しくはこちらの記事で解説しています。
~切妻屋根ってなに?(屋根の形状) Q071~ 図解 屋根に関するQ&A
第1位となった片流れ屋根について詳しくはこちらの記事で解説しています。
片流れ屋根のメリット・デメリット。心配な雨漏り対策もご紹介します!
住宅用屋根材使用比率調査から見る人気の屋根材
令和4年の住宅用屋根材使用比率 第1位金属屋根(その他)42.1%となっており、最近では金属屋根がよく使用されています。
第2位粘土瓦 25.9%、第3位化粧スレート 24.5%、第4位シングル 7.5%と続いています。
令和元年までは、粘土瓦がずっと第1位を保っていましたが、令和2年から金属屋根(その他)がもっとも使われています。
金属屋根が増加している要因としては、片流れ屋根の80%以上が金属屋根となっており、片流れ屋根の増加に比例していると思われます。
粘土瓦の産地割合は三州瓦が第1位
第2位の粘土瓦の全国で生産された瓦の産地ごとの比率を見てみると、三州瓦(愛知)が第1位で74.2%と圧倒的なシェアを誇っています。
その他では第2位石州瓦(島根)10.0%、第3位淡路瓦(兵庫)5.7%となっています。
三州瓦は立地から東日本、西日本の両方へ輸送するのに適しており、昔から第1位となっています。
近年では、どんな住宅にも対応したデザインのF形瓦人気がシェアを増やしている要因です。
F形瓦を安価で大量に生産しているのは三州瓦であり、F形瓦の増加に比例して三州瓦が増えています。
三州瓦について詳しくはこちらの記事で解説しています。
雨漏りと関連が深い!割合から見る屋根の変遷の歴史
平成7年度からの屋根形状の変遷を見ると平成24年度から片流れ屋根・段違い屋根が急増しています。
東日本大震災後の電力不足で、太陽光発電を普及させる政策によるものと思われます。
太陽光パネルを10㎾以上載せるために、南向きの片流れ屋根が適しているからです。
令和5年では片流れ屋根・段違い屋根を合わせて、52.1%と半数以上となっています。
ここ最近では、築10年以内の片流れ屋根の雨漏り事故が増えていると瑕疵担保責任保険のデータで言われています。
しかし、平成24年からまだ12年しか経過しておらず、これから、経年劣化による雨漏りの物件も増えてくると予想されます。
雨漏り対策・結露対策で実績のある切妻屋根をオススメします。
片流れ・屋根断熱・ガルバリウム鋼板は雨漏りリスク大?
ここ数年で増加傾向にある屋根仕様があります。
「片流れ」「屋根断熱」「ガルバリウム鋼板立平葺き」「軒ゼロ」を採用した屋根です。
これらは雨漏り・結露対策を考えると矛盾した要素を含んでおり、屋根プロからすると心配な仕様です。
雨漏り対策としては、「屋根と壁の取り合い部を塞ぎたい」ですが、結露対策としては、「屋根と壁の取り合い部を換気・通気したい」という矛盾です。
軒ゼロでさらに雨漏りしやすくなり、結露対策は複雑となります。
次の章から、それぞれの要素について詳しく解説していきます。
雨漏りのリスクが高い?片流れ系屋根の割合
「片流れ」系屋根(片流れ+段違い)は50%を超えています。
これまでも瑕疵担保責任保険の実績から築10年以内での片流れ屋根の雨漏り事故が多いことを紹介してきました。
20年前の平成14年ではわずか1.8%しかなかった片流れ屋根が今では半数以上です。
つまり、現在でも20年経過屋根のデータしかなく、現在の片流れ屋根の仕様で30年持つのか、確証はない状態です。
これから経年劣化による雨漏りが急増しそうで心配です。
意外に雨漏りリスク高い?屋根断熱の割合
令和5年度では、屋根断熱は41.5%と増加傾向が続いています。
屋根断熱の72.6%は硬質ウレタンフォームの断熱材が用いられています。
20年前の平成14年では、わずか3.7%しかなく、現在は10倍の33.8%となっています。
硬質ウレタンフォームの耐久性は別として、屋根断熱では結露対策に通気層(吸気孔、排気孔もセット)が必要です。
通気層を設置しない場合は、野地板で結露が発生するリスクがあります。
屋根で雨水浸入が発生し、野地板が濡れた場合には結露リスクがさらに高まり、野地合板が腐朽することもあり、経年劣化に雨漏り・結露が心配です。
ガルバリウム鋼板系屋根の片流れ屋根の割合
ガルバリウム鋼板立平葺きは片流れ屋根の約80%を占めています。
片流れ屋根の4/5はガルバリウム鋼板立平葺きで、新築時から10年以内で、雨漏りが多い屋根と言えます。
立平葺きは雨漏りが少ないと思われがちなのですが、実はそうではないのです。
片流れ・屋根断熱・ガルバリウム鋼板の3点セットにリスクがあることについて詳しくはこちらの記事で解説しています。
片流れ・屋根断熱・ガルバリウム鋼板の3点セットは危険な屋根なんです!
雨漏り修理における火災保険の使用の割合
弊社の実績として、雨漏り修理における火災保険の使用の割合は2割程度です。
もちろん、その年の台風などの自然災害の多さによって、火災保険の使用の割合は異なります。
しかし、「雨漏りは火災保険によって、0円で修理できる」とうたっている業者は正しくありません。
火災保険の適用条件としては、自然災害で発生した風災によって、建物に被害が発生し、それが原因で雨漏りした場合となるからです。
経年劣化による雨漏りは火災保険の対象外です。
悪徳業者になりますと、かならず火災保険が出るからと言って、保険金の支払いが確定する前に、工事契約を結ばせることもあるようですのでご注意ください。
火災保険を使った雨漏り修理について詳しくはこちらの記事で解説しています。
雨漏り修理に火災保険を使いたい!経年劣化によるものも可能なのかを解説
【まとめ】屋根材や屋根の形状を知って雨漏りに備えよ
屋根形状や屋根材等の割合を紹介してきました。
屋根形状や屋根材の種類によって、雨漏りなどの不具合が発生するリスクがあります。
屋根形状や屋根材の種類によるデザイン性を優先するのか、雨漏りしにくい屋根にするのか選択することができます。
長寿命な建物であれば、デザイン性よりも経年劣化しにくく、雨漏りしにくい仕様を選ぶこともありだと思います。
また、逆に雨漏りしやすいデザインであれば、施工時の工夫などでリスクを軽減することも検討してください。
屋根・雨漏りについてお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。
神清からのお願い
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