目次
雨樋の形状の種類と特徴
雨樋の形状は、大きく分けて次の4種類があります。
- 丸型（半丸）
- 角型（角樋）
- 意匠型
- 内樋型（うちどい）
それぞれの特徴について簡単に説明します。
①丸型（半丸）
最も一般的な形状で、古くから多くの住宅で採用されています。
水の流れがスムーズで、詰まりにくく、施工コストも比較的安価です。
②角型（角樋）
断面が四角形になっている雨樋です。
現代的な外観にマッチしやすく、排水能力が高いのが特徴です。
屋根面積が大きい住宅や、降雨量の多い地域にも適しています。
③意匠型
デザイン性を重視した形状で、建物の外観に合わせた装飾的な仕上がりになります。
特注で製作されることが多く、高級住宅や商業施設など、意匠性を求める建物に採用されます。
ただし種類が多く互換性がないため、将来的に廃盤となった場合は部品交換や修理が難しく、メンテナンス性にやや劣る点には注意が必要です。
④内樋型（うちどい）
屋根内部に雨樋を設置するタイプで、外観をすっきりと見せられるのが特徴です。
ただし、詰まりや雨漏りが発生しても外からは気づきにくいため、定期的な点検や清掃が欠かせません。
また、屋根の形状に合わせて加工するケースが多く、現場での調整や特注製作が必要になることもあります。
雨樋に使われる素材の種類と特徴
雨樋には、主に次の5種類の素材が使われています。
それぞれに価格・耐久性・デザイン性といった特徴があり、建物の用途や地域環境によって適した素材が異なります。
- 塩化ビニル樹脂（PVC）
- 被覆鋼板
- ガルバリウム鋼板
- 銅
- ステンレス・アルミニウム
以下では、それぞれの素材の特徴をわかりやすく解説します。
①塩化ビニル樹脂（PVC）
軽くて扱いやすく、コストパフォーマンスに優れた最も一般的な素材です。
表面が滑らかで汚れが付きにくく、金属のように錆びる心配もありません。
ただし、紫外線や熱の影響を受けやすく、長期間の使用で徐々に劣化が進みます。
そのため、屋根や外壁の塗装とあわせて定期的に塗り替えを行うことで、美観と耐久性を保てます。
②被覆鋼板
耐食性・耐候性に優れ、コストと性能のバランスが取れた素材です。
鋼板の表面に特殊樹脂を被覆しているため、錆びにくく、屋外環境でも長く美観を保てます。
大型の雨樋にも使われ、ステンレス製に比べて価格を抑えられる点も魅力です。
ただし、完全なメンテナンスフリーではなく、被覆樹脂が劣化・破損する前に定期的な点検と補修が必要です。
③ガルバリウム鋼板
錆びにくく、コストを抑えられる実用性の高い素材です。
鋼板の表面をメッキ層で保護しており、金属でありながら高い耐食性を備えています。
金属製雨樋の中では比較的安価で、住宅から施設まで幅広く利用されています。
一方で、長期間の使用では塗膜の劣化が進むため、屋根や外壁を再塗装する際にあわせて補修・塗り替えを行うと安心です。
④銅
社寺仏閣などの伝統建築で多く用いられる、高級素材の雨樋です。
銅は、酸化によって表面に緑青（ろくしょう）が生じることで、防食性能が高まり、非常に長持ちします。
一方で、鋼板に比べて素材価格が高く、施工コストも上がる傾向にあります。
また、長年の使用によって雨水が集中する部分に穴があくことがあり、定期的な点検や部分補修が欠かせません。
⑤ステンレス・アルミニウム
錆びに強く、耐久性に優れた高品質な素材です。
ステンレス製の雨樋は腐食に非常に強く、長期間にわたって安定した性能を維持できます。
その分コストは高めですが、メンテナンスが難しい工場や大型施設の高所などで多く採用されています。
雨樋の種類ごとの価格の目安
雨樋の種類ごとの価格の目安を紹介します。
| 丸型 | 角型 | |
|---|---|---|
| 塩化ビニール製 | 2,000～3,000円/ｍ | 2,500～3,500円/m |
| ガルバリウム鋼板製 | 3,500～4,000円/ｍ | 4,500～5,000円/m |
| 銅製 | 7,000～8,000円/ｍ | 9,000～10,000円/m |
※足場費用は含まれていません。
雨樋の素材ごとの種類別比較表
雨樋の素材ごとの特徴を紹介します。
| 塩化ビニール製 | ガルバリウム鋼板製 | 銅製 | |
|---|---|---|---|
| 価格 | ◎ | △ | ✖ |
| 耐久性 | △ | ◎ | 〇 |
| デザイン | 〇 | 〇 | ◎ |
雨樋は屋根や外壁ほど目立たない存在ですが、建物を雨水から守る重要な役割を担っています。
コスト面からは塩化ビニール製が最も多く使用されていますが、価格だけでなくメンテナンス性にも注目することが大切です。
とくに、廃盤や部品の互換性がない製品を選ぶと、後の修理で一部だけ交換できず、全体の取り替えが必要になるケースもあります。
そのため、見た目だけで選ぶよりも、将来のメンテナンス性や交換のしやすさを重視することをおすすめします。
雨樋の部品の種類
雨樋は複数の部品で構成されており、それぞれが雨水をスムーズに排水するための重要な役割を担っています。
主な部品と名称は次のとおりです。
- 軒樋（のきどい）
- 軒継手（のきつぎて）
- 軒曲がり
- 集水器（しゅうすいき）
- 止まり
- 呼び樋（よびどい）
- 縦樋（たてどい）
- 縦継手（たてつぎて）
- エルボ
- 寄せマス
- 角マス
これらの部品はそれぞれ異なる役割を持ち、組み合わせることで雨水を効率よく排水する仕組みをつくっています。
以下では、各部品の特徴と役割を詳しく解説していきます。
①軒樋（のきどい）
屋根の軒先に沿って取り付けられ、屋根面を流れ落ちる雨水を受け止める部分です。
雨水がスムーズに流れるよう、全体にごくわずかな傾斜（およそ1/1000〜5/1000）をつけて設置し、最終的に縦樋へとつなぎます。
②軒継手（のきつぎて）
軒継手は、軒樋同士をつなぎ合わせるためのジョイント部品です。
左右から軒樋を差し込んで固定する構造になっており、必要に応じて軒樋の長さを調整しながら接続します。
長い軒樋を連続して設置する際に欠かせない部品で、継ぎ目の水漏れを防ぐ役割もあります。
③軒曲がり
寄棟屋根など、異なる屋根面の軒樋が交わるコーナー部分で使用される継ぎ手です。
軒樋と軒樋を直角や斜めに接続し、屋根の形状に合わせて雨水をスムーズに流す役割を担います。
④集水器（しゅうすいき）
集水器は、軒樋で受けた雨水を集めて縦樋へ流すための中継部品です。
大雨の際にもオーバーフローしにくいよう、やや大きめのマス状の形をしています。
この集水器に縦樋を接続し、雨水を地上の排水口まで導く重要な役割を担います。
⑤止まり
軒樋の端に取り付け、雨水がこぼれ出ないようにするフタ状の部品です。
樋の形状に合わせて左右があり、端部をしっかり密閉することで漏水を防ぎます。
⑥呼び樋（よびどい）
軒樋と縦樋をつなぐための中間部分です。
集水器から縦樋へと雨水を導く役割を持ち、屋根の形状に合わせて斜めに取り付けられます。
限られたスペースで排水経路を確保するための、重要な連結部品です。
⑦縦樋（たてどい）
建物の壁面に取り付けられ、集水器から地面の排水口まで雨水を導く配管です。
屋根で集めた雨水を効率よく地上へ排水するための主要な通り道で、建物の外観に合わせて配置や素材が選ばれます。
⑧縦継手（たてつぎて）
縦樋同士を接続するためのジョイント部品です。
雨水の漏れを防ぐため、上側をパイプにかぶせ、下側を差し込む構造になっています。
複数の縦樋をつなぎ合わせて、安定した排水経路を確保します。
⑨エルボ
縦樋の角度を変える際に使用する、曲げ形状の継手です。
まっすぐな縦樋の途中に取り付けることで方向を調整し、排水口まで雨水をスムーズに流せるようにします。
建物の形状や排水位置に合わせて、さまざまな角度のタイプが使用されます。
⑩寄せマス
2方向から流れてくる縦樋の雨水を1つにまとめるための部品です。
複数の排水経路を合流させ、地面の排水口へ効率よく雨水を流す役割を果たします。
主に大きな屋根面や複雑な建物形状の排水計画で使用されます。
⑪角マス
パラペット屋根やバルコニーなど、屋根面にたまった雨水を排水するための大型のマスです。
雨水を一時的に集めてから縦樋や排水管へ流す構造になっており、屋上や陸屋根などでも使用されます。
なお、雨樋の継手や関連部品の構造については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
雨漏り防止！雨樋の継手の役割や種類は？交換手順や注意点も解説！
雨樋の人気メーカーは？
代表的な雨樋メーカーとそれぞれの特徴を紹介します。
| 製造メーカー | 特徴 |
|---|---|
| 積水化学 | デザイン性が高く、見た目が美しいと言われています。長期間の利用にも適しています。 |
| パナソニック | シャープでシンプルな雨樋が多く、様々な家のデザインにもマッチします。 |
| デンカアステック | デザインやカラーバリエーションが豊富です。ステンレス製の商品が豊富です。 |
| タニタハウジング | ガルバリウム鋼板の樋が豊富です。 |
| タキロンシーアイ | 樹脂製の雨樋がメインです。 |
ホームセンターなどでよく見かけるのは積水化学やパナソニック製の雨樋です。
おすすめしない雨樋の種類は？
結論からお伝えすると、樋継手（といつぎて）が内側にあるタイプの雨樋はあまりおすすめできません。
このタイプは見た目がすっきりしてデザイン性は高いものの、水漏れが起きやすい構造になっています。
継手が内側にあるため、雨水が継ぎ目に溜まりやすく、経年劣化で隙間が生じやすいのです。
また、実際の施工現場では数メートルの軒樋をつなぎ合わせる際、1〜2mmほどのわずかな隙間がどうしても発生します。
カタログ写真のようにぴったりと接続することは難しく、結果として雨漏りや雨音による近隣トラブルにつながるケースもあります。
そのため、デザイン性だけで選ぶのではなく、水漏れリスクやメンテナンス性も考慮した素材・構造を選ぶことが大切です。
雨樋の選び方や注意すべきタイプについては、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。
どんな種類の雨樋もメンテナンスが必要
どの素材・形状の雨樋であっても、定期的なメンテナンスは欠かせません。
長年使用するうちに、破損・変形・ヒビなどの経年劣化が避けられないためです。
とくに、特殊形状や限定モデルの雨樋を選ぶ場合は注意が必要です。
10〜20年後に部品が廃盤となり、修理の際に交換部材が入手できなくなるリスクがあります。
素材ごとの注意点としては、樹脂製の雨樋は紫外線や熱による劣化が進みやすく、屋根や外壁の塗装時にあわせて再塗装を行うことで耐久性を保てます。
ガルバリウム鋼板製の雨樋も錆を防ぐため、同様に定期的な塗装メンテナンスを行うことが大切です。
また、枯れ葉やゴミがたまると排水が滞り、雨漏りや破損の原因となります。
年に一度は点検や清掃を行い、雨水がスムーズに流れる状態を維持しましょう。
雨樋の詰まり対策には「落ち葉よけシート（樋カバー）」が効果的
雨樋の詰まりを防ぐには「落ち葉よけシート（樋カバー）」の設置が有効です。
雨樋の内部にシートを敷くことで、落ち葉やゴミの侵入を防ぎ、排水機能を長期間保てます。
落ち葉よけシートは樹脂製の凹凸構造になっており、雨水は凹部分を通って樋の中へ流れ、落ち葉は凸部分に引っかかって外に留まる仕組みです。
この構造により、詰まりやオーバーフローのリスクを大幅に軽減できます。
設置は比較的簡単で、DIYでも取り付け可能です。
実際に「落ち葉よけシート」を設置してみた体験談については、下記の記事で詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
落ち葉よけシートをDIYで試しに設置してみました！（雨樋用）
【まとめ】雨樋は形状や素材の特徴を理解して選ぼう
雨樋にはさまざまな形状や素材があり、それぞれにメリットと注意点があります。
コストを重視するなら丸型の塩化ビニール製、耐久性を求めるならステンレス製など、目的に合わせた選択が大切です。
選ぶ際はデザインや価格だけでなく、耐久性・メンテナンス性・交換のしやすさも考慮しましょう。
また、雨樋は定期的な清掃や塗装などのメンテナンスが欠かせません。
落ち葉による詰まり対策には、落ち葉よけシート（樋カバー）の設置が効果的です。
屋根や雨樋に関してお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
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雨樋詰まり防止には「落ち葉よけシート」
