目次
屋根の「縁切り」とは?
屋根の「縁切り」とは、スレート屋根の塗装時に、屋根材の隙間を塗料でふさがないように塗料を切る作業のことです。
塗装時、スレート屋根の上下の重なり部分に塗料が入り込んで、その部分の隙間は塗膜でふさがれてしまいます。
そのため、塗装後、塗料が完全に乾く前にカッター・皮スキ・スクレーパーなどを差込んで隙間内の塗膜を切る縁切り工程が必要となります。
縁切りについて詳しくはこちらの記事で解説しています。
スレート屋根とは?
スレート屋根とは、セメント・骨材等に繊維素材を混ぜて薄い板状に成形した屋根材のことです。
住宅で使用されるスレートは「カラーベスト」、「コロニアル」、「スレート瓦」などと呼ばれ、現在では、ケイミュー株式会社1社で製造している屋根材です。
単一商品としては、国内で最も普及している屋根材となります。
デザイン性、軽量性、遮音性が高く、さらに初期費用が安価なことから人気があります。
スレート屋根について詳しくはこちらの記事で解説しています。
屋根の縁切りはスレート屋根の塗装でなぜ必要?
屋根の縁切りはスレート屋根の塗装で必要な理由について紹介します。
屋根の縁切り不足は、スレート屋根の雨漏り原因の第1位です。
塗装時に縁切りが不足するとスレート同士の上下の隙間が塗料でふさがれているため、スレートの継ぎ目から裏面へ浸入した雨水が排水されずに溜まってしまいます。
その水がスレートを留めているくぎを伝って、防水シートや野地板に浸入し、経年で雨漏りの原因となります。
塗装時に縁切りが不足すると起こるトラブルについては、次章で詳しく説明しています。
スレート屋根の縁切りが不十分だとどうなる?主なリスク
スレート屋根の縁切りが不十分だと起こり得るリスクについて紹介します。
塗装時に縁切りが不足するとスレート同士の上下の隙間が貼り付いているため、以下のようなトラブルを引き起こす可能性があります。
- 雨水の排水が妨げられ、スレート裏面に水がたまる
- スレートを留めているくぎから伝い水で防水シート、野地板へ浸入する
- 屋根裏の湿気がこもり、カビや木材の劣化を引き起こす
- 経年で雨漏りが発生し、室内にも漏水する
スレート屋根をよくするために塗装メンテナンスを行ったのに、縁切りが不十分だと雨漏りするリスクが高まります。
塗装後、早期に雨漏りするなら塗装メンテナンスが原因として、補修を求めることもできますが、メカニズム的にはそうではないです。
くぎからの伝い水による浸入で徐々に劣化し、やがて雨漏りするようになるため、塗装業者への補償は難しいです。
スレート屋根をよくするために、かえって、雨漏りする屋根にしてしまうことは最悪ですので、注意してください。
縁切り不足による雨漏りについて動画でも詳しく解説しています。
スレート屋根の縁切り不足による雨漏りの事例
スレート屋根の縁切り不足による雨漏りの事例について紹介します。
屋根全体で広範囲に雨漏りした事例
築30年で、スレート屋根の塗装を2階行った建物でした。
小屋裏は腐朽菌も発生し、野地板もボロボロの状態でした。
スリットのあるタイプのスレート屋根で、高級なフッ素塗料で塗装メンテナンスされていました。
縁切りとは、真逆で、上下の隙間を完全に塗料でふさいでいるような仕上がりでした。
スリットからスレートの裏面へ毛細管現象で浸入し、水が溜まっている状態でした。
雨が降るたびに、スレートくぎから伝い水で野地板へ浸入することになり、野地板が長期間高含水率となり、腐朽してしまった状態でした。
スリットタイプではなく、スレートの継ぎ目から雨漏りした事例
スリットがないタイプでも縁切り不足で雨漏りします。
スレートの横方向の継ぎ目からスレートの裏面に毛細管現象で浸入して、縁切り不足で排水されず、くぎから伝い水で浸入するというものです。
スリットなしでも同様に野地板が高含水となるため、経年できのこが生えるほど腐朽菌が成長していた雨漏りでした。
スレート屋根の平部からの雨漏りは、縁切り不足が原因の場合がほとんどです。
スレート屋根の縁切り不足を回避する対策①見積書で「縁切り」有とする
スレート屋根の縁切り不足を回避する対策として、①見積書で「縁切り」有を確認することがあります。
ご自分で塗装の見積の中に、「縁切り」の項目の有無を確認してください。
「縁切り」が記入されてなければ、「縁切り」の見積を追加してもらいましょう。
おそらく、数万円の追加となりますが、数年後に野地板から交換するような大規模補修するリスクは避けることができます。
スレート屋根の縁切り不足の対策②「タスペーサー」⇒別の縁切り方法に変更
スレート屋根の縁切り不足を回避する対策として、②「タスペーサー」⇒別の縁切り方法に変更してもらいましょう。
塗装業者さんの中には、「タスペーサー」というスレート屋根の縁切り補助部材を提案・見積する方がいます。
縁切り不足による雨漏りリスクは解消されますが、スレート製造メーカーの禁止事項に該当します。
タスペーサーは厚みが2mm以上となるため、その段差部分でスレートが踏み割れる可能性があるからです。
雨漏りリスクの代わりにスレートの踏み割れリスクが発生するので、見積書に「タスペーサー」と入っていたら、別の縁切り方法に変更してもらいましょう。
スレート屋根の縁切り方法は3種類
スレート屋根の3つの縁切り方法について紹介します。
- 手作業による縁切り
- 樹脂製スペーサー(タスペーサー)による縁切り
- 金属製スペーサーによる縁切り
①手作業による縁切り
手作業による縁切りはスレート製造メーカーから推奨されています。
大手ハウスメーカーの塗装メンテナンスでも手作業の縁切りが行われているようです。
●メリット
手作業による縁切りは、スレート屋根の塗装前の状態を維持できるので、その後に塗装したことが原因の不具合が発生することはありません。
●デメリット
塗装職人は塗装後、別日で縁切り作業を行う必要があります。
縁切り作業の正確さは職人の気質でしか担保されず、不十分な箇所、やり残しの箇所が発生するリスクがあります。(縁切りのやり残しは確認が難しい。)
塗装する度に、手作業の縁切りが必要です。(その度に費用が発生する)
②樹脂製スペーサー(タスペーサー)による縁切り
塗装職人による縁切り作業のバラツキを心配しなくてもいいようにと考えられた工法です。
予め、スレート屋根の上下方向にあるスレートの重なり部の隙間に樹脂製スペーサーを入れて、隙間を大きくして、塗装したときに塗料がくっつかないようにする方法です。
塗装後に縁切りしなくても、上下の隙間が塗料で埋まることはなく、塗装後の雨漏りをふせぐことができます。
●メリット
樹脂製スペーサー(タスペーサー)の有無が塗装後でも確認できます。(樹脂製スペーサーは入れたままとなる)
樹脂製スペーサー(タスペーサー)が入っているところは確実に縁切り効果があります。
樹脂製は安価なため、1度目の塗装時のイニシャルコストは縁切りと同等です。
●デメリット
樹脂製スペーサー(タスペーサー)は完全につぶれた状態でも2mmの厚さがあります。
スレート製造メーカーは、樹脂製スペーサーを入れておくと踏み割れのリスクがあるため、推奨せず、注意喚起を行っています。
屋根を健全にするために屋根塗装のメンテナンスを行うのに、スレート屋根が踏み割れしやすくなる工法はかえって、屋根が悪くなるリスクがあります。
樹脂製で紫外線劣化するため、2度目の塗装時に撤去して、新規を入れ替えるのに手間がかかります。(費用が発生する)
樹脂製で燃えるため、火災時の延焼リスクがあります。
樹脂製スペーサー部分のスレートの踏み割れが原因で、スレートが落下した事例を動画で紹介しています。
踏み割れが原因でスレートが落下し、人や車にあたるリスクは軽視できないですね。
③金属製スペーサーによる縁切り
樹脂製スペーサー(タスペーサー)の踏み割れ問題を改善した縁切り方法です。
金属製スペーサーは金属特有のスプリング効果を取り入れており、人が載ったときには約1mm程度につぶれ、人が載らないときは復元してスレートの隙間を確保できる特徴があります。
スレート製造メーカーの耐風仕様で使用する耐風クリップの厚みが1.5mmであるため、それよりつぶれるので踏み割れの心配はありません。
●メリット
スペーサーが起因のスレートの踏み割れをふせぐことができます。
ステンレス製のため、耐久性が高く、2度目の塗装時にも使用できます。(費用がかからない)
紫外線劣化・火災の不安もありません。
●デメリット
1度目の塗装時には、手作業の縁切り・樹脂製スペーサーの縁切りに比べてイニシャルコストがかかります。(約2~5万円アップ)
2度目の塗装時に使用できるので、トータルではコストアップはないようです。
踏み割れ対策した金属製スペーサーが手作業の縁切りよりも安心できると思います。
スレート屋根の縁切り工法について詳しくはこちらの記事で解説しています。
スレート屋根に塗装が必要な3つの理由とは?屋根屋が詳しく解説します
スレート屋根の縁切りを適切に施工するために優良業者を選ぼう
スレート屋根の縁切りを適切に施工するための優良業者の選び方について紹介します。
- 丁寧な説明をしてくれる
- しっかりとした見積書を出してくれる
- 相場内の修理費用におさめてくれる
- 近所へ配慮してくれる
- アフターフォローが充実している
スレート屋根の塗装見積において、とっても重要な「縁切り」工程について丁寧に説明してくれる業者を選びましょう。
外壁のついでにスレート屋根の塗装と考えている塗装業者は多いです。
中には、外壁塗装を発注してくれたら、スレート屋根の塗装はサービスで行いますとうたっている業者さんもいるようです。
外壁と違って、スレート屋根の塗装は雨漏りリスクがあるので、「なんでもいいから安く塗装する」という業者へやめておきましょう。
縁切りは必ずコストがかかるため、見積書に記載していない業者も注意してください。
口頭で「サービスでやっておきます」と言われても、作業中を確認することもできないので、必ず、見積に記載していることが重要です。
優良業者の選び方について詳しくはこちらの記事で解説しています。
どんな屋根修理業者に頼めば良いの?優良業者の5つの特徴を解説!
悪質な業者の見分け方
悪質な業者の見分け方のポイントを紹介します。
- 突然訪問して、屋根に登りたがり屋根修理が必要だと不安をあおる
- 「近くで工事をしていて気になったので点検させてください」などと親切をよそおって強引に屋根点検を行う
- 火災保険を使って無料で修理ができると偽り、言葉巧みに売り込む
- 口約束で済ませ、保証内容を文書で残さない
- 高額な値引きキャンペーンやモニター価格をすすめてくる
詐欺まがいな悪徳業者は上記のような特徴があります。
それ以外にスレート屋根の塗装では、塗装後のスレート屋根の状態を気にしないという業者がいます。
スレート屋根は建物を守る大切な役割を持っています。
屋根の機能は知らない・関係ないという塗装業者さんは詐欺ではないにしても、建物にとってはマイナスとなりますので、安価だけで選ぶのは注意してください。
悪質な業者の見分け方について詳しくはこちらの記事で解説しています。
屋根修理の詐欺に気をつけて!代表的な5つの手口と対策を徹底解説!
【まとめ】屋根の縁切りを正しく行い、雨漏りリスクを防ごう!
スレート屋根をよくするために塗装メンテナンスを行ったのに、縁切りが不十分だと雨漏りするリスクが高まります。
スレート屋根をよくするために、かえって、雨漏りする屋根にしてしまうことは最悪ですので、注意してください。
スレート屋根の塗装時には正しく縁切りを行い、雨漏りを防ぎましょう。
信頼できる業者を選び、適切な縁切り作業を行いましょう。
屋根塗装を検討中の方は、ぜひ一度ご相談ください。
神清からのお願い
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